コメント・書評 |
これって私のことですか
みなとかずあき
Jan 24, 2010 6:23:47 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★★
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何ともやっかいな本だと思います。 昨年刊行されて比較的すぐ読んだのですが、どうにも書評が書きづらく、今日までためらってしまいました。ですが、このまま放っておくのも居心地が悪く、何とか落としどころを見つけたいと思うのですが。 何がそんなに書きづらいかと言えば、この本のタイトルを読めばたちまち私にとっては『私は腹の底で何を考えているか』になってしまいますし、あるいは『同僚は腹の底で何を考えているか』とか『部長は腹の底で何を考えているか』や『医局長は腹の底で何を考えているか』とか『教授は腹の底で何を考えているか』と、本当のタイトルの「精神科医」のところに何人も具体的な名前が浮かんでしまうため、読めば読むほどその誰かのことになってしまうからです。まあ何と言っても私自身に突き付けられているようでしんどいというところなんでしょう。 それだけ内容は、さすが(?)ずっと精神科臨床を行ってきた著者ですから、これまでいろいろな本で語られてきた精神科医よりはるかにリアリティに富んでいます。すでに私自身が感じていたことや常日頃考えていることに近いことも書かれていて、 「けれども精神科医が動じることなく、一貫した態度を取り続けることは重要だと思う。そのことで、精神的な視野狭窄状態になっている患者へ視野の外に潜在している可能性を示唆することの出来る医師こそが、良い医者なのだと思う」(p.39) とか、 「所詮は他人事でしかない。だが、せめて他人の心を推し量ることはとんでもなく難しいのだという「謙虚さ」を持っていなければまずいだろう」(p.58) といった言葉には改めて考えさせられるところがありました。 一方で、「そうでもないだろう」ということもあるにはあるのですが。 本書の最初のうちは比較的客観的に精神科医療一般の現状や問題点、課題を挙げているような書き方だったと思いますが、後半へ進むにつれて著者自身の問題や反省、課題が語られているような印象もあり、そこがまたリアルで余計考えさせられるところでもあります。 この本の他の書評やコメントを見ると、この本が誰に向けて書かれたものなのかと疑問を呈しているものがあります。私も読んでみて確かにその点は感じました。この本を一般の人が読んでも何を言っているのかと思うだけのような気がします。多少精神科医療に関心があったり直接関わりのある人(患者、医療関係者)ならば、精神科医が確かに「腹の底で何を考えているか」を知って今後に役立つこともあるかもしれません。 けれども、私がこんなに考えさせられ、いろいろと思いめぐらしたのだということを考えると、これは実は精神科医へ向けられた本なのかもしれませんし、もっと言えばこれは春日武彦が自身に向けて書いたものではないかとも思えます。そんな話に付き合わされる読者はたまったものではないかもしれませんが。
この本の帯などには「100人の精神科医」が登場するとなっており、実際本文中にゴシック体でいろいろなエピソードを持った医者の姿がかっこ書きされ、さらにご丁寧に巻末にも100人のリストが挙がっていますが、ただ羅列されているだけでこの100人(というか医者のエピソードと言うべきか)が良い医者なのか悪い医者なのかは明確にされていません。新書としてアピールするにはこのように一見わかりやすそうな記述の仕方が必要だったのかもしれませんが、わざわざ「100人の精神科医」などと挙げる必要もなく、いつもの春日武彦の文章だけで十分伝わるのではないかと思います。 ちなみに私自身はこの100人のエピソードの半分以上が当てはまりそうな気がします。著者は「およそ3分の3はわたしの分身としか思えない」と書いています。だからどうだ、というわけではありませんが。 |
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