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水曜日のジゴロ
伊集院大介の探究

水曜日のジゴロ(講談社) 栗本 薫著
税込価格: ¥1,470 (本体 : ¥1,400)
出版 : 講談社
サイズ : 19cm / 230p
ISBN : 4-06-210883-6
発行年月 : 2002.12
利用対象 : 一般

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内容説明

大介だけが出入りを許されていた女性専用のバーに「人工的な」ほど整った顔立ちの青年・千秋が立ち寄ったことから、猟奇的な事件が発生。変貌を遂げる六本木で、名探偵の推理が冴える。伊集院大介シリーズ。

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コメント・書評

栗本薫がここで語りたかったことはよくわかるけれど、探偵小説としてはあまり面白くない話だ
みなとかずあき
Dec 30, 2009 11:59:25 PM
評価 ( マーク )
★★★

伊集院大介シリーズにはさらにシリーズ内シリーズとでも呼べるものがいくつかある。一番代表的なものが「天狼星」シリーズだろうし、栗本薫が登場する(むしろ栗本薫こそ主人公のような)話も「猫目石」などのようにある。
本作の語り手となっている藤島樹が登場するものは、『魔女のソナタ』に次いで二作目になるかと思う。前作に続いて、レズビアンだのホストだのといったたぐいのことにからめて樹が物語を進行させていくのだが、栗本薫はよくよくこういった世界が好きなのかしらん。これをさらに突き詰めていくとヤオイになっていくのだろうけれど、一応伊集院大介シリーズなのでまだまだ大人しいと言うべきかもしれない。それに一応探偵小説なので、それらのことは物語の中の彩りと言ってもいいのかもしれない。
そしてそういったことが話の本質とは関係ないと思わせられる部分が2か所ほどあった。
114ページで、樹がどうして男は女を殺したがるのか、自分が女を抱いてみたくなるのと同じことなのかと疑問を呈したのに対して伊集院大介が言う。
「それは、本当は、『同じもの』だと思います。いや、『同じものから出ているもの』です。…でも、樹さんはたとえそのあとでどうなるのであれ、ともかくも≪愛≫というかたちにかえてそれを出されるんだし、そして女の人を殺す男たちは、それを≪死≫という――憎悪にみちた死、というかたちにかえて女の人たちに相手かまわず投げつけてくる」
あるいは196ページ。シリアル・キラーの話をしていた中で伊集院大介が言う。
「頭のなかで一生、1回の殺意をも抱かない人間というのが、存在するとしたらよほど幸運か、よほど神様のようか、よほど気の弱い人間です」
栗本薫が惹きつけられているのは生死、愛憎に関わることであり、その極端な形として人とは違った性嗜好を持つ者たちを描こうとしているのではないだろうか。
愛とか性とかというと普通はすぐに直接的な性行為や生々しい人間関係を思い浮かべがちであるけれども、栗本が語ろうとしているものはそんな目先のものではなく、もっと人間の本質にある生(あるいはその果ての死)であるような気がする。
そんなことを考えていたら、ふとフロイトが言っていた「リビドー」のことを思い出した。フロイトの言う「リビドー」は日本語でしばしば「性衝動」などと訳されることがあり、男女間の性的な興奮に通じるような感じを持たされることがあるが、フロイトが言わんとしていたのはそのような衝動に通じる生きることへのエネルギーであったように思う。そして、それはまた栗本薫がこの本で本当のところ語りたかったことに通じるのではないかと思う。
というようなことばかり考えさせられて、そして途中で出てくるきわどい描写に赤面しつつ、読み終えてみると探偵小説としてはあまり面白くない話だったし、犯人をこんな人にしてしまってはいけないでしょうと思ってしまうような出来だった。
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