コメント・書評 |
命について考える。
kumataro
Nov 17, 2009 9:00:02 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★★
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おくりびと 百瀬しのぶ 小学館文庫
すばらしい出だしです。大笑いしました。舞台は山形県、主人公は大悟さん、納棺師業の会社社長が佐々木生栄さん、先輩職員が上村百合子さんです。オーケストラの「解散」という言葉にはホームレス中学生の田村君が思い浮かびました。この物語を読んでいるときに、ビッグバンドジャズのコンサートを聴きに行きました。大悟さんは、本来チェロリストです。物語の場面を想像しつつ、オーケストラが解散するということが身近に感じられました。 その頃、複数の本を同時進行で読書中のわたしの心は、「エバーグリーン」豊島ミホ著で東北地方にあり、この「おくりびと」で山形県にあり、「悼む人」天童荒太著で函館にありました。東北から北海道にかけての視界が開けていました。 大悟さんの奥さん美香さんは、なんていい人なのでしょう。白鳥(はくちょう)の仲の良さとか、親子で交わした石による手紙のやりとりが伏線になっていきます。読み始めのあたりで、結末はどうもっていくのだろうかと興味津々(しんしん)でした。 物語に登場する銭湯での葬式は若い頃に見かけたことがあります。銭湯通いだったわたしが、洗面器を小脇に抱えて、のれんをくぐると、脱衣所の奥に棺(ひつぎ)が据えてあり、葬式会場になっていました。 さて、この本のテーマは「命」です。大悟さんが6歳のときに失踪した父親を殴りたい気持ちは痛いほどわかります。父が病死したときに12歳だったわたしは、自宅に安置された父親の遺体に向かって、仁王(におう)立ちになりげんこつを握り締めながら、これからどうやって生活していくのだと強い怒りをぶつけていました。 奥さんである美香さんの大悟さんの職業に対する偏見とも言える反対意見の表明は解(げ)せません。結婚生活は、相手が好きとか嫌いとかいう前に、働いて食べていけなければ話になりません。あきらめることも必要です。この物語に流れている太い芯は間違っておらず、正当です。
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