コメント・書評 |
近代の悪人を集めた海音寺の傑作集
ドン・キホーテ
Nov 15, 2009 9:05:59 PM
|
評価 ( ★マーク )
★★★★
|
海音寺潮五郎が著した歴史上の悪人を棚卸した作品である。本書は江戸時代から近代へかけての悪人たちが描かれている。小説ではないが、史料を基にして悪人たちの行いを検証しようという訳である。本書で取り上げられた悪人は次の人物である。 ・大槻伝蔵 ・天一坊 ・田沼意次 ・鳥居耀蔵 ・高橋お伝 ・井上 馨 有名な人物とあまり知られていない人物が混在しているといえよう。大槻伝蔵とは誰のことであろうか? 私も聞いたことがないが、ほとんどの読者はご存知あるまい。数十年前のいっとき、「加賀騒動」と大槻伝蔵は知らない人がいないほど有名だったようだ。
加賀騒動の中心人物が大槻伝蔵である。出世のために藩主暗殺を企てて、まんまと成功したという。さらに、後継者は藩主の息子であるが、その兄弟の中から自分との関係が深い息子を後継ぎにしようと、毒殺を計画する。しかし、これらはすべて作り話だったというのが、海音寺潮五郎が調べた結果であった。
天一坊は将軍の落胤という、とんでもないことを言い出した人物で、大岡越前守が江戸町奉行であった頃、勃発した事件であるということになっている。この天一坊事件に関係する物語は無数にあり、大岡越前が絡んでいたこともないし、ましてや奉行として解決したこともなかった。
田沼意次は老中という重職を担いながら、賄賂や業者との癒着がはなはだしく、幕政を壟断した悪人だというのは有名な話である。このように、世の悪人の棚卸をしたものがこのシリーズである。
鳥居耀蔵も江戸町奉行にまで出世した人物であるが、今でも歴史物テレビドラマなどでは、決まって悪役である。古い時代の人物かと思いきや、もう江戸幕府が終焉を迎えそうな時期の人物である。
いずれも歴史に関わる小説や書物にはよく登場する人物たちで、その概略を知っても損はない。ただし、ストーリーがあるわけでもなく、必ずしも時系列的に描かれているわけでもない。解説にも書かれているとおり、海音寺が調べた人物たちのエピソードがそのまま描かれているので、読みやすいとはいえないが、日本史上では名を残した人物たちの生き様が理解できる本書である。 |
|
|
| 現在の投票
はい:3人(100%)
いいえ:0人(0%) |
|
|
|