コメント・書評 |
当時の短編作品群で司馬遼太郎の将来を窺わせる一冊である
ドン・キホーテ
Nov 1, 2009 9:41:32 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★
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司馬遼太郎が昭和30年代に書いた短編を集めたものである。このタイトルにある短編「ペルシャの幻術師」が司馬の最初の小説という説もある。「ペルシャの幻術師」は小品であるし、ごく初期の作品なので、全集には収録されているものの、単独では初めて文庫本に搭乗したと腰巻に書いてあった。いずれも幻術がらみの作品である。現実離れしている点で、珍しいものであり、歴史小説の構えを見せているものである。この中で注目すべき作品を上げてみる。
まず「ペルシャの幻術師」であるが、ときは西暦1253年、場所はペルシャ高原のとある町である。蒙古兵に蹂躙された街である。占領軍の大将はチンギスハンの孫である。幻術師アッサムとの駆け引きと街の運命が面白い。
「兜率天の巡礼」は、学者とその妻に関わる運命と宗教的な歴史を紐解いている。ストーリーが複雑でとても娯楽作品とは言い難い。また、宗教的な歴史が主題となっているので難解でもある。この辺りの作品は司馬が研究した成果の一端が開陳されているようだ。
エンターテイメントとしては、「飛び加藤」が最も結構な一品であった。 飛び加藤とはもちろん綽名である。加藤は忍者である。越後上杉家に仕官したい加藤は、京にきていた上杉家の家来に幻術を見せつける。その家来は早速上杉に報告し、面接のうえとうとう仕えることになった。上杉家の家臣となった飛び加藤と上杉謙信とのやりとりが面白い。
「牛黄加持」は、僧侶の話である。洛内の屋敷にいた僧侶は、幼馴染みの公家の娘がいた。この娘は藤原家の娘で入代して、鳥羽上皇の女御になったという。僧侶がその幼馴染みと再会したのは、この牛黄加持の場であった。この加持儀式の薄気味悪い様子の描写が何ともいえず、生々しい。
司馬遼太郎のこの種の作品は、以前『』を読んだことがあるが、それはまた洗練されていて、なかなか面白く読んだことがあった。本書はその皮切りとなる作品かも知れない。司馬遼太郎の若き日の作品で、この種の一種独特の雰囲気と描写が単なる歴史小説にはとどまらないジャンルを創り上げているといっても良い。 |
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