コメント・書評 |
興味深い内容であるが、読み手の興味はやはり小説か?
ドン・キホーテ
Sep 6, 2009 9:14:30 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★
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海音寺潮五郎が古代に名をはせた歴史上の人物を選んで、史料等から得られた知見を取りまとめたものである。史伝と呼ばれているジャンルのようだ。決して小説ではない。小説を書くために調べた史料をもとに、その人物像を描いたのであろう。
小説ではないので、読みものとしての面白さ、娯楽性はほとんどない。しかも、選んだ人物を伝記風に描くというのでもなく、あくまで作者が集めた史料を基本にして描いている。したがって、本人のエピソードから外れることもあるし、描きたいように描いたということである。
本書で選ばれた「悪人」は、以下の6名のラインナップである。 ・蘇我入鹿 ・弓削道鏡 ・藤原薬子 ・伴大納言 ・平 将門 ・藤原純友
このうち、藤原薬子、伴大納言の2人は誰でも知っているとは言えないし、平将門、蘇我入鹿、弓削道鏡はかなり有名であるかも知れない。そういえば、海音寺潮五郎の描いた小説平将門は私も読んだことがある。将門は多くの作家が描いているが、この海音寺版が最も面白く読めたことを記憶している。
この6名はいずれも乱をおこし、世間を騒がせた悪人ということであろう。道鏡などはもう少しで天皇に即位しかねなかった僧である。入鹿も蘇我氏の権勢によって皇位を脅かした。薬子は平安初期、桓武朝の後、嵯峨天皇の時代に平城上皇が起こした乱において、平城天皇を唆した張本人ということになっている。このときに平定の役割を担ったのが坂上田村麻呂であった。
大納言・伴善男は貴族であるが、当時の左大臣・源信を追い落とそうと、大内裏の正門である応天門に火をつけて騒ぎを起こし、源信に罪を着せようとした。この企ては失敗に帰し、伴大納言は伊豆に流された。
この6名に関する罪とそれに関する作者の史料による分析をまとめたのが本書である。史料を丁寧に紹介することもあり、やや退屈してしまった。私の興味はそこまで求めていなかった。小説家としてのノートを公開した書であると言えるかも知れない。巻末の解説で評論家がこの前のシリーズである「武将列伝」に言及している。編集者から冒頭部分は小説仕立てにして欲しいという要求を海音寺が退けたことを紹介している。海音寺には海音寺の考えがあったようだ。しかし、それは昭和34年のことである。それから50年後の平成21年の今は、是非小説仕立てにして欲しかったと思うのである。
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