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永遠の故郷−薄明
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コメント・書評 |
吐露するといった感のあった前作とはかわって、極めてオーソドックスな、吉田らしいエッセイになっています。そのぶん、感動は減りましたが、逆に家にあるCDを聴き直したい、そういう気にはさせてくれます。あなたはどちらがお好き?
みーちゃん
Jul 29, 2009 8:14:57 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★
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最愛の人を亡くしたことで、このまま筆を断ってしまうのではないかと心配していたので、『永遠の故郷─夜』の著者名に吉田秀和とあるのを見たときは、正直、驚きました。そして、今までのようなカシットした書き方から離れ、ことばをもっと少なくし、しかも今まであまり語ろうとしなかったことなどにも自由に触れる姿を見て、ああ、これが晩年にふさわしい書き方かもしれないと安心しました。
とはいえ、吉田秀和は1913年生まれ、もう百歳も間近です。それを考えると、この文章は奇跡といってもいいのではないか、そう思ったりします。今後、何冊の本が吉田によって書かれるかは分かりませんが、私にとってそれらは全て神様の贈りものとしかいいようのない、ただただ恩寵のように受け取るべきものという気がします。
詩が苦手、というよりは大嫌いな私ですが、吉田の文章の前でくらいは謙虚でいたい、そう思いながら手にしました。内容も大げさなものではありませんが、本の様子も、詩集、或は無名の写真家の作品集のような、さり気無い、それでいてどこからか音楽が聞こえてくるような上品なものです。ブックデザインに関する記事として
装丁 木村裕治 宇佐見暢子(木村デザイン事務所) カバー画 ポール・セザンヌ Cover Artwork by PAUL CEZANNE(1839-1906) Ebauche des Grandes Baigneuses(V.725).1902-06 Ol auf Leinwand. 73.5 x 92.5 cm Privatbesitz
カバー表・詩 「REGENLIED(雨の歌)」 著者自筆
カバー裏・詩 ギョーム・アポリネール「IL PLEUT」 楽譜 著者自筆
とあります。楽譜も詩も吉田の自筆、ゆっくりと味わいましょう。
カバー折り返しの言葉は
過去と現在と、やがて訪れる 魂の永遠の故郷への誘い……。
です。カバー後の言葉は
この本はなぜ 《永遠の故郷》などという 題をもっているか。
題は遠い深いところ から来る。 歌が生まれ戻ってゆく ところ、それが どこであるかはわからない。 ――――吉田秀和
です。時間の流れが、急にゆったりとなった気がするのは私だけでしょうか。以下、目次ですが、初出と、その章で取り上げられる主な人物だけを書いておきます。
・夜明けまで――姉と兄たちに――(「すばる」2008年5月号):ヴィクトル・ユーゴーとビゼー
・《聖母の子守唄》――E・M・に――(「すばる」2008年6月号):ブラームス
・雨に歌う(「すばる」2008年8月号):ブラームスとアポリネール
・パリの夜と晝の歌――長谷川浩に――(「すばる」2008年9月号):プーランクとアポリネール
・《十七世紀の詩による陽気なシャンソン》――丸谷才一に――(「すばる」2008年10月号):プーランクとモーツァルト
・ルイーズ・ド・ヴィルモランの三つの詩(「すばる」2008年11月号):プーランクとルイーズ・ド・ヴィルモラン
・《カリグラム》抄(「すばる」2008年12月号):プーランクとアポリネール
・《涼気と火》――加藤周一に――(「すばる」2009年1月号):プーランクとポール・エリュアール
・Lの歌(「すばる」2007年7月号):ヴォルフとマーラー
・あとがき 吉田秀和
前作に比べると、自分について語る部分が減って、音楽と詩についての話が多くなっているのが変化でしょうか。『立原道造・堀辰雄翻訳集 ―林檎みのる頃・窓―』(岩波書店2009)を読んで、アポリネールの面白さを知った私には、彼の名前が何度もでてくることに運命みたいなものを感じました。そして丸谷才一と加藤周一の名前を見て、ああ、二人の本を久しく読んでいないなあ、そろそろ読み直そうか、なんて思いました。
幸いなことに、先日、ブラームス全集を買ったばかりですし、プーランクの室内楽集。ヴォルフの歌曲のCDもあります。ゆったりした気持ちで、実家で見つけた丸谷才一の本、吉田の音楽展望、を読みながら、音楽をゆったり聴いてみよう、出来たら加藤周一の著作集も手にしよう、そう思いました。
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