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ポルトガルの四月
ハヤカワ・ミステリワールド
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コメント・書評 |
異色、っていう意味でいえばピカイチだとは思うんです。グルメとはちがうゲテモノ食い。でもどこか、というかだから、ユーモラス。でも、こんな子供とはつきあいたくないなあ、なんて思ったりして・・・
みーちゃん
Jul 27, 2009 8:57:02 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★
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素敵なカバー画です。銅版画? それとも木口木版? 線自体はカチっとしているのにどこか柔らか味があって、それに全体に黄味がかった色合いがなんとも優しい。しかもです、食事から漂う匂いを表現している湯気マーク? の雲のような柔らかなハッチング表現、文句なしです。そんな装画は磯良一。しかもカバー表の題字と著者名のロゴデザイン。もったいないのは背ですね。何の変哲もない活字体、なんじゃカバーのロゴに対するこだわりは・・・そんな装幀は、岩郷重力+WONDER WORKZ。
浅暮三文は、人間の感覚を扱った話を作るのが得意なようで、今回は味覚と嗅覚、あるいは食感がキーです。カバー折り返しの案内は
気がかりな夢から、頭痛とともに目覚 めると、男は記憶を失っていた。そば には炎上するバスと見慣れない少年。 さらにそこは言葉の通じない外国だっ た。俺はここでなにをしようとしてい たのだろう? 少年とともにヨーロッ パをさまよいながら、男は徐々に自分 の過去と犯罪を思い出してゆく。どう いうわけか、くさい食べ物を食うと記 憶が蘇るのだ。味覚と記憶の深淵に切 りこむ、奇妙な味のクライムノヴェル。
となっています。章タイトルがメニューみたいになっているので、ここで書いておきましょう。
第 一 章 ブダン(豚の血糊の腸詰) 第 二 章 ボーイ(黒いプードル) 第 三 章 ウセンマウルザラート(牛の顎の軟骨の薄切りサラダ) 第 四 章 ヴィユ・ブローニュ(仏ブーローニュ産チーズ) 第 五 章 ピエ・ド・コション・グリエ(豚足のフライ) 第 六 章 オルトラン(鳴鳥) 第 七 章 スティンキング・ビショップ(英グロースター州産チーズ) 第 八 章 カス・マルズ(伊サルディーニャ島産ペコリーノ・チーズ) 第 九 章 エポワス(仏ブルゴーニュ地方産チーズ) 第 十 章 クリアディリャス(スペイン産牛の睾丸料理) 第十一章 フェイジョアーダ(ポルトガル産豚部位の煮込み) 第十二章 パット・ノ・ツクビー(ブラジル産アヒルの肉のスープ)
恥ずかしながら、一つも食べたことがありません。ま、我が家は豊かではない、というのもありますが、何よりゲテモノがだめ。浪人中の次女なんて、気味悪いと思ったら絶対に手を出しません。長女も、夫もですが私もだめ。以前、夫が業者さんから猪の肉を塊で頂きましたが、もうどうしていいか分からず、結局、友人に差し上げてしまいました。だから珍味の類もお手上げ。
ま、この本を読んで食欲を刺激される、っていう人は珍しいんじゃないか、そう思います。だって、出てくる食べ物全て基本的には刺激が強いものばかり。単に辛いとか酸っぱいとか塩っぽいというのではありません。鼻につんと来たり、胃がでんぐり返りそうになったり、うっと口元まで胃の中のものがせり上がってきたり、そういうものばかりなんです。
ですから、思わず食事したくなるような文が載っている本を期待する向きには薦めません。そういう人には池波正太郎『散歩のとき何か食べたくなって』や『剣客商売』や邱永漢『食は広州に在り』、壇一雄『壇流クッキング』といった、それこそ読んでいるだけで自ら台所に立ちたくなったり、その店に立ち寄りたくなる本を薦めます。それと『B級グルメ』本ね。
閑話休題。繰り返しますが、これは食べものの刺激と記憶を結びつけたお話です。しかも、記憶を取り戻すために必要な食事による刺激は、エスカレートしていきます。はっきり言って、スラプスティックです。ま、作者の狙いもそこにあるんだと思います。笑いを、それも苦い笑いを取ろうとしている。犯罪小説なんですが、伊坂幸太郎の小説がそうであるように、皮肉混じりのそれ。
呵呵大笑とまではいきません。日本のB級映画(海外ではC級扱いだと思いますが)によくあるレベルの笑い、あれを思ってください。食事風景は、結構、グロになると思います。
主人公は塚本昌治、ドイツのフュッセンという街近くで炎上するバスの近くに倒れて記憶を失っていた男、という設定なので名前は正直不明です。気づいた時の所持品は、パスポート、署名のないトラベラーズチェックの束、ユーロの紙幣が若干入った財布、マニュアル車用の国際免許証で、名前は持っていたパスポートに記載されていたもの。川口の鋳物工場で働いていたことだけを覚えています。
ウィミンは、倒れていた塚本昌治を見つけたロマの少年で、何故か塚本の記憶を刺激する日本の硬貨・五円玉を通した細紐を首に下げています。年齢ははっきりしませんが、少年とあるので12,3歳でしょう。日本語を話せます。ヨーロッパの事情に通じ、海を渡ったイギリス以外であれば一応、どこにでも行っているような雰囲気があります。英語はもとより、雰囲気的には数ヶ国語を操れそうです。
記憶を失った男と、記憶を取り戻させていい目を見てやろうと思っている可愛げのない少年、そして男の過去を知っているらしい男たちが、ただただ刺激のあるというだけの珍味を求めてヨーロッパ中を移動します。男の記憶は戻るのでしょうか、そして記憶を取り戻したとして、男は何かを得ることが出来るのでしょうか。
伊坂幸太郎を期待すると、まるで違います。思わずニヤっとすることもありませんし、ああ、あれが伏線だったのか、と膝を打つこともありません。でも、面白い。どこかバタ臭くて、田舎臭くて、おまけに女性が全く絡んできません。げ、よく考えるとホ○小説でもないのに女性抜きで話が展開するなんて、珍しいです。ま、その分、盛り上がりに欠けるっちゃあ欠けるんですが・・・ |
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