コメント・書評 |
高校生の大名旅行? これで海外行こうっていう高校生がいたら顔を見てみたい。やっぱり沢木耕太郎『深夜特急』に心動かされる高校生なら信じることができる。いやはや文章の力というのはかくも差があるものかとつくづく思います。
みーちゃん
Jul 25, 2009 8:42:47 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★
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英語が苦手で浪人中の次女のために、と思って手にした本です。岩波ジュニア新書は、偶に外れがあるものの総じてツボをおさえた説明と、ムダのない構成、分かりやすい文章で、基本に立ち返って物事を理解しようとするには最適なシリーズで、中高せいから中高年まで幅広く読まれるべきものでしょう。カバー後ろの案内ですが、
話してみよう 旅行の英語
歴史好きの秀雄くん、リスニングに自信の ある次郎くん、英語を自由に使いたい深雪 さん――高校生の仲良し3人組が、「教室 で習った英語を使ってみたい」とイギリス の旅へ。知恵を出し合いながら生きた英語 を体験します。3人と一緒に街を歩き、イ ギリスと英語の魅力に触れてみよう。
となっています。私にしては珍しく褒め言葉から入ります。面白かったです。難しい単語を使わずに海外旅行が出来たら楽しいだろうなあ、なんて思います。義務教育だけでも三年は英語と付き合ってきた私たちの頭のどこかには、基本単語だけは絶対にあるはずなんです。だから自分の思いを相手に伝えようという気があれば、必ず話は通じる、そう思いますし、そう思わせてくれる本です。
でも、すぐに疑問を抱きます。無論、あとがきで大津幸一自身が「これは体験をもとにしている」と断るくらいですから、本当の話に近いということは承知の上でです。まず、伯父さんがイギリスにいて招待してくれた、ということがお話の前提になっています。こういう人が世の中にどれだけいるか、です。大津は恵まれていたんだなあ、って思います。
しかも、です。招かれた本人以外に同行者が二人、計三人の旅行です。そんなお金をポンと出せる親たちがいる高校、というのが素晴らしい。でも、そんな学校に通う生徒がどれだけいるのかな、なんて思います。それと、普通、招待されたら、基地となるのは招待先の家で、そこを中心に動くし、まず先方が空港に迎えに来て、滞在中は先方の誰かが案内をしてくれる、そう思います。
でも、この本の高校生たちは三人連れということもあるのでしょう、空港に待っていてくれる人がいません。おまけに、招待先に滞在することも殆どありません。見知らぬ街でも、いとも簡単に電車に乗って移動します。私にしてみると、宿泊先を決めたらその周辺の散策だけでヘトヘトになるのですが、流石、今時の若者は違う高校生、電車、バス、タクシーまで使います。日本で旅先でタクシーを使う高校生、って普通いないです、お金が心配ですから。
おっと待てよ、彼らは船の切符を買う時、或はタクシーをつかまえ目的地を告げる時、なんと言ったのでしょう。なぜ、そういう会話の例がないのでしょう。それに全体の旅程は何日になるのでしょう。ま、最初からお金持ち設定なので、気にするほうが愚かかもしれませんが、でも、リアリティに欠けます。
でもこれは大津の実体験。行くのは高校生男二人に女一人。普通、親が許さないでしょう。それに、彼らは簡単に向こうで見知らぬ人に声を掛けるんですが、相手がみんないい人。日本だって、こんなにいい人間ばかりに出会うというのは奇跡に近い。敬して遠ざける、のが普通。ほんとに英国人てこんな風にいい人ばかり? なんて思います。
繰り返しますが、あげられている用例はとてもいいです。三人がなぜそういう風に人に尋ねたか、というのもしっかり描かれているし、他の言い方、もっと適切な聞き方も出ているので大変分かりやすい。でも、まずもっと用例があってもよかったし、お金使い放題の旅っていう設定では、今時の多くの高校生は引いちゃうと思います。
それと、もっと危険なことを想定して欲しい。例えばトラブル事例を入れて欲しい。手荷物を忘れた、物を盗まれた。そんな時の警察官との対話があっていいし、向こうのヤクザな高校生が出てきたっておかしくない。飛行機酔いの話はありますが、熱を出した、お腹が痛い、そんな時どうするか。日本に電話する時、どうするのか。帰国する時の手続きは、出国と全く同じなのか、なんて。
分かるんですよ、これは小説じゃないんだから、設定がどうのこうの言われても困る、っていうの。それから、これは旅行案内じゃないんだから、旅先で起きそうなことを全てフォローする必要はない、っていうのも。それに例にしたって、多ければいいけれど、頁数の問題とか本の定価とかあるし、ってのも。でも、ここでの話に共感しなかったら、結局は読まれて終わり、殆どの人は旅に出て行かないんじゃないでしょうか。
それなら、私は『深夜特急』をこそ中高生に読ませたい。特に、2008年に出た沢木耕太郎『旅する力 深夜特急ノート』。これをとっかかりに『深夜特急』本編を読む。英語がどうこうなんてドーデモいい。貧しくて苦しくても「外国に行かなければ」という思いに駆り立ててくれるのは、明らかに沢木本。普通の高校生が共感するのは、危険かもしれないけれど海外に行ってみよう、と思わせりのは、絶対に沢木本。
結局、大尽旅行では若者の心を捕まえることはできない。内容はとってもいいけれど、感動させない話では人は動かない、私はそう思います。随所に適切に配された写真は、大津幸一自らの撮影。普通のスナップ、というのが観光写真染みないで好感持てます。良もあるし。須山奈津希のカバーイラストは平均的。最後は目次です。
はじめに――海外旅行で英語を試してみよう 1 空の旅 1 成田から出発 2 機内で 3 ヒースロー空港に到着 2 テムズ川のほとり ウィンザー 1 ボートおじさんとの出会い 2 ウィンザー城とイートン・カレッジ 3 学問の都 オックスフォード 1 塔の上からの眺め 2 『ハリー・ポッター』の舞台をたずねる 4 シェークスピアの故郷 ストラトフォード・アポン・エイボン 1 B&Bに泊まる 2 シェークスピアの町を歩く 5 名曲の調べにさそわれて スカーバラ 1 北の港町 2 「スカボロー・フェア」のルーツをたずねて 6 古き都 ヨーク 1 ヨーク・ミンスターで旅の安全を祈る 2 国立鉄道博物館で“Shinkansen”と出会う 7 イギリス産業革命の心臓部 マンチェスター 1 先生との再会 2 紡績博物館を見学する 8 ビートルズゆかりの地 リバプール 1 マジカル・ミステリー・ツアー 2 アルバート・ドック 9 歴史と世界遺産 ブリストル、ストーンヘンジ 1 ブリストルをたずねる 2 ソールズベリの町 3 観光バスでストーンヘンジへ 10 テムズ川の船旅 ロンドン、グリニッジ 1 グリニッジへ 2 テムズ川を行く 11 ロンドンの街を歩く 1 川辺のレストランで 2 地下鉄に乗る 3 ショッピング 12 旅路の終わり カンタベリー、ドーバー 1 大聖堂の町・カンタベリー 2 海の向こうはヨーロッパ大陸 あとがき |
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