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川は静かに流れ
ハヤカワ・ミステリ文庫
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コメント・書評 |
これぞハードボイルド。良くも悪くも、オーソドックス。ただし、これでアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞とれるなら楽だなあ、って思います。それと主人公の愚かさ、まさに『ライムギ畑でつかまえて』を生んだ国らしい。
みーちゃん
Jul 24, 2009 7:23:10 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★
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良くも悪くもアメリカのハードボイルド小説だな、っていうのが読んだ印象です。これでアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作とれるなら、福田和代『黒と赤の潮流』なんてドーナル、って言いたくなります。つまり、いままでの長いハードボイルドを一歩も超えてはいない。ただしタイトルは『黒と赤の潮流』よりはずっといい。
そして、類型に嵌っていることを無視すれば、それなりに面白い話ではあります。でも、主人公であるアダム・チェイスに魅力がないのは困りものです。いい年をして自分が置かれている状況がまったく見えていません。チンピラレベルでしょう。こんな男を主人公に据える必要性があったのか? なんて思います。
ま、『ライ麦畑でつかまえて』を崇め奉るお国柄ですから、こういう人間が好きなんでしょうが、よく考えるとこれって、今のアメリカの国家としての動きとまったく同じなんですね。周囲の空気が読めず、しかも行動の基にあるのは自分だけの利益。遺産相続か、他人の富を奪うというのがアメリカ人の行動原理。いやはや、エライやつが世界の警察面しているもんです。
カバーデザインは、そのまんま映画のポスターにしたくなるようなもの。カバーデザインは水戸部功、カバー写真は James Randklev/Riser/Getty Images です。カバー折り返しの内容紹介を写せば
「僕という人間を形作った出来事 は、すべてその川の近くで起こっ た。川が見える場所で母を失い、 川のほとりで恋に落ちた。父に家 から追い出された日の、川のにお いすら覚えている」殺人の濡れ衣 を着せられ故郷を追われたアダム。 苦境に陥った親友のために数年ぶ りに川辺の町に戻ったが、待ち受 けていたのは自分を勘当した父、 不機嫌な昔の恋人、そして新たな る殺人事件だった。アメリカ探偵 作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作
です。構成は謝辞、全37章、北上次郎の解説となっています。
主人公はアダム・チェイス、28歳ということですが、その思慮の浅さは高校生レベルです。その遠因は、19年前、母の自殺に立ち会ってしまったことかもしれません。だからでしょう、大農場を受け継ぐ立場にありながら、ただ遊び呆ける愚か者で、殺人事件の容疑者になったことがあります。辛うじて無実とされたものの、周囲はそれを信じていません。
そういう社会の反応というものを、5年たった今もまったく理解できていないのです。しかも自分で財産の相続権を放棄したくせに、それが惜しくて仕方がない、としか思えない行動をとり続けますし、実際に未練タラタラです。ま、相続権放棄の決断をしたときの年齢を考えれば、納得はできますが、要は、その程度の人間です。ロビン・アレグザンダーはソールズベリー警察の刑事で、アダムの元恋人、今も独身を通しています。29歳のはず。
ジェイコブは、アダムの父親で、現在もローワン郡きっての有力者です。レッドウ・ォーター農場の主で、彼が土地を手放せばこの場所に原発が建設されるということで、土地の値上がりを期待する人間や、これで仕事が増えて町が潤うと思う輩から敵視されていますが、ジェイコブには土地を手放す気はまったくありません。
息子が犯したとされる殺人事件では、息子より妻の発言を信じます。年齢は特定できませんが、五十代のはずです。ただし、作者の筆の力が足りないせいで、60~70歳と考えたほうがスッキリします。ジャニスは、ジェイコブの後妻でアダムが容疑者として捕まった時、彼が犯人であると主張しました。これまた年齢不明ですが、話の流れでは40代でしょう。
ミリアムはアダムの義理の妹で双子の一人、23歳になる静かな娘です。自分の友人が殺されたせいもあってアダムに心を開かなくなっています。ジェイムズ(ジェイミー)は、アダムの義理の弟で双子の片割れです。美貌で今は農場の後継者としてマッチョな青年に育っています。賭け事が趣味の23歳。
ドルフ・シェパードは、レッド・ウォーター農場の62歳の作業監督で、農場の南端にある小さな家に暮らしています。その孫娘でアダムを慕っているのがグレイス・シェパードです。現在、20歳でしょう。二歳のとき川に溺れそうになっていたのを助けたのが、アダムの父ジェイコブで、五年前アダムが家を去るまでは彼女のすべてであり、美しく育った今も彼への思いは変わっていません。
ダニー・フェイスは、アダムの親友というか悪友ですが、今も彼の無実を信じていますが、アメリカ人らしくギャンブル狂で大酒のみ、乱暴ものです。ゼブロン・フェイスはダニーの父親で、息子は無頼の明るい側面を持っていますが、こちらは逆。短期で、苦しいホテルの経営者を止めて土地でもうけようと原発推進派となり、チェイス一家を憎んでいます。
これくらいにしておきますが、遺産相続で一家がもめることのない庶民には、正直、チェイス家のごたごたぶりがピンときません。継母と血の繋がらない息子、という構図は分かりますが、それにしても息子が逮捕されたというのに、父親の反応はなんといったらいいか、不自然です。いや、説得力のある描写をしていません。無論、それがミステリの要素になっていることは確かですが、もう少し書き方がありそうです。
ラストのヒネリなどは中々のものですが、アダムの造形に失敗しているので、読者が惹きこまれない、だからツイストが効かないのです。勿体無いなあ、って思います。でも、映画にしたらどうでしょう、結構、アダムに肩入れをすると思います。そうなれば、事件の謎がわかったとき、お、って感心するでしょうし、ラストの人間関係の落とし方にも納得するでしょう。
私としては、独自性を感じないので大して評価をしませんが、平均より上であることは確かでしょう。ただし、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作にふさわしい、とは思いません。やはりミステリの章としては英国推理作家協会賞のほうが、しっかりしているなあ、というのが偽らざるところです。 |
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