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ヘミングウェイごっこ  ハヤカワ文庫 SF

ヘミングウェイごっこ(早川書房) ジョー・ホールドマン著
大森 望訳
税込価格: ¥735 (本体 : ¥700)
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出版 : 早川書房
サイズ : 16cm / 317p
ISBN : 978-4-15-011699-6
発行年月 : 2009.2
利用対象 : 一般

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内容説明

【ヒューゴー賞ノヴェラ部門(1991年)】【ネビュラ賞ノヴェラ部門(1991年)】

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コメント・書評

贋作をテーマにしたSFなんですが、それがヘミングウェイの小説の偽物、っていうのがちょっとね、日本人には分かりかねます。ま、陶器の偽物を外人が理解できない、っていうのの裏返しみたいなものなんでしょう。でも、魅力的な女性はでてくるし、辻褄はなんとなく合うし・・・
みーちゃん
Jul 16, 2009 7:41:48 PM
評価 ( マーク )
★★★★★

SF読みでない私にとって、ジョー・ホールドマンといえばガチガチのハード・SFの雄、っていうことになります。ま、『終りなき戦い』も『終わりなき平和』も読んでいないし、他の書名も簡単に思い浮かばない状況です。そんな私が久し振りに手にしたのがネビュラ賞、ティプトリー賞を受賞した『擬態―カムフラージュ―』、これが滅法面白かった。

ま、SFをエイリアンが出てくるお話、と定義すれば確かにSFなんですが、私はどちらかというと恋愛小説として読みました。充分に楽しんだ上で、ジャンル分けなんで読者にとって目安に過ぎないし、むしろそれに拘るとこんなに面白いお話を読み逃すことになる、なんて思ったものです。

で、『ヘミングウェイごっこ』。『擬態―カムフラージュ―』というタイトルとホールドマンは簡単に結びつきましたが、今回は??? でした。カバー後の案内を読んでみても、最後のほうを読まない限り、あくまで冒険小説風の趣です。ホールドマンがハードSFと袂を分かって境界侵犯型の小説つくりに邁進? それはこちらも歓迎なんですけど、なにせヘミングウェイ、殆ど読んでないし・・・

っていうか全然読んだことがありません。映画だって見たことがない。辛うじて鹿島茂『パリの異邦人』のなかで出会っていますが、あとは名前のみ知る存在。いやはや、てっきり新潮文庫の短篇集を読んだと思っていたのに、メモがでてこないっていうことは読んでないんですね。ま、あまり好きじゃないタイプではあるんです、教科書作家っていうのが・・・

でも、贋作がテーマらしい。ま、本当はカバーにもあるように時間テーマものナンですが、取りあえずは贋作。っていうことはミステリでしょ、やっぱ。『擬態』であれほどのストーリーテリングの技を披露してくれたホールドマンですから、期待できるはず、そう思います。ましてヒューゴー&ネビュラ両賞受賞の中篇を長篇したもの、というから血筋がいい。

ちょっとSF臭が気になる Cover Design & Photo Complex=岩郷重力+WONDER WORKZ。、カバー写真提供=Phil Ashley/Getty Imagesです。ついでに既に何度か触れたカバー後の案内は

ジョン・ベアドはヘミングウェイが
専門の大学教員。とあるバーで
論文を執筆中、ある男からヘミン
グウェイの原稿の贋作づくりを持
ちかけられる。これまでも成功し
た贋作事件の例はある。一攫千金
も夢ではない! いつしか贋作づ
くりに熱中しタイプライターを打
つベアドの前に、なんとヘミング
ウェイその人が現われたことから、
事態は思いもかけぬ方向へと……
ヒューゴー&ネビュラ両賞受賞の
中篇を長篇化した異色時間SF!

で、構成としては本文30章に、あとがき、訳者あとがき(大森望)ということになっています。お話の舞台は1996年です。ヘミングウェイの初期作品が「盗まれたのは七十四年前。一九二二年の十二月だ。」っていうことから、それが分かります。

主人公はジョン・ベアド、52歳。ヘミングウェイが専門の英文学者で、ボストンの大学教員です。妻とは17の年の差がある、っていうあたりはいかにもアメリカです。で、リナなというのがジョンの妻で35歳。モデル体型の美女です。で、この二人を贋作に巻き込むのがシルヴェスター・キャッスルメイン、コンサルタント業者ということになっていますが、実は詐欺師で、逮捕暦があります。

ま、ここからは価値観の問題があるんですが、彼が持ちかけるのはヘミングウェイの原稿の贋作づくりなんです。アメリカのことですから、肉筆原稿ならぬオリジナル・タイプライターで打たれた原稿であればいい。ま、そんなものをわざわざ作ってどれほどの値がつくのか、なんて思いはします。たとえそれが失われたといわれる幻の作品であったとしても。

例えば、日本で三島由紀夫の若書きの作品が見つかったりしますが、あれだって原稿自体の価値、ってかなりわかりにくい。文学作品っていうのは、やはり物理的な原稿という存在ではなくて、文字によって紡ぎだされるお話自体に価値があるわけですから。とはいえ、有名人の遺品にとてつもない値がつくかの国のことですから、かなり価値があるんでしょう、オークション的なそれが。

で、逡巡の末にジョンは贋作制作に取り掛かります。まずは1921年型のコロナ・ポータブルタイプライター探し。ヘミングウェイの使ったものズバリではなくてもその時代のものが見つかれば最初の一歩は踏み出せます。あとはオリジナルに近い活字のついたキーを見つけ出して組み合わせれば、充分。あとは当時の紙を探して、インクを見つけてとなります。

ま、ここらへんからいかにも贋作ミステリ風になってきて、絵画の贋作と似たような経過を辿っていきます。ただし、ここで大変なことが起きます。ヘミングウェイその人があらわれて、次に彼女に心動かされない男はいない、といってもいい完璧な美貌と体型、プロ意識をもった知的な娼婦パンジーも登場して・・・

確かに時間SFであることは間違いないのですが、やはり面白いのは贋作にまつわるミステリ的な部分と、ジョンをめぐる女性の話ではないでしょうか。私は、これを『擬態』同様、恋愛小説として楽しみました。特に、娼婦である美女パンジーが登場してからは、サスペンスも、恋愛も一気に盛り上がります。

今までにも何度か、いい意味で映画にしたら面白いだろうなあ、なんて思う作品に出会いましたが、これなんかもピッタリでしょう。しかも、時間の問題が絡まなければ、絶対に終らない話なので、そういう意味では確かにSFではあるのです。でも、それ以外の部分も圧倒的に面白い。文庫オリジナル、っていうのは読者にとってはありがたいのですが、ハードカバーで出てもおかしくない作品、そう思います。
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