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ゲド戦記  1  影との戦い  岩波少年文庫

ゲド戦記(岩波書店) アーシュラ・K.ル=グウィン作
清水 真砂子訳
税込価格: ¥756 (本体 : ¥720)
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出版 : 岩波書店
サイズ : 18cm / 318p
ISBN : 978-4-00-114588-5
発行年月 : 2009.1
利用対象 : 中学生

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内容説明

【ボストングローブ・ホーンブック賞(1969年度)】少年ゲドは、自分に並はずれた力がそなわっているのを知り、真の魔法を学ぶためロークの学院に入る。進歩が早く、得意になったゲドは、禁じられた魔法で自らの「影」を呼び出し…。アースシー世界の光と闇を描く壮大な物語。

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コメント・書評

このお話をファンタジーっていうくくりで評価してしまったから、いけなかったんだと思います。トールキンの『指輪』はファンタジーでいいけれど、『ゲド』は違う。なんていうか分類を拒否するような話ではないか、そんな気がしてなりません。読み返して良かった一冊。
みーちゃん
Jul 9, 2009 8:47:23 PM
評価 ( マーク )
★★★★★

私の中でゲド戦記の評価は高くありません。読んだのがいつのことだったか、トールキンの指輪物語はもう30年以上前に読んでいましたが、ゲド戦記はもっとあと。娘が幼稚園に行っている頃に読み、その後、続巻が出版されるたびに読んできたものの、正直、一度として感心したことはありませんでした。それはル=グウィンのSFにも言えて、どうもピンときません。

ル=グウィンは、ともかく難しい。おまけに登場人物に魅力がありません。さらにいえば夢がない。総じて暗い、としか言いようがない。正直、これを「指輪」にならぶファンタジーの傑作、という人の気持ちが分かりませんでした。私にとって、文学というのは苦しむためのものではなく、あくまで楽しむためのもの、なにが『ゲド戦記』よ!とまあ、思ったわけです。

それは最近書かれた『ギフト』三部作でも基本的には変わりません。ただし、『ゲド戦記』と違って私は『ギフト』三部作を楽しんだんです。感情移入しやすい人物が登場するわけではありません。話にしても楽しい終り方をするわけでもない。陰湿なイジメ、嫉妬、レイプだってある。でも、話の展開が気になってドンドン読める。自分が年をとったせいもあるのかもしれません。

そんなとき少年文庫版で、『ゲド戦記』が出るということを知りました。私は書評を書くために内容を確認することはあっても、それ以外はよほどのことがない限り本を読み返すということがありません。時間がない。一度読んだことを忘れての再読は別にして、純粋に再読、再々読をした本といえば20冊あるかどうか。

脱線ついでに書いておけば、多分一番回数が多いのが小栗虫太郎『黒死館殺人事件』、次が横溝正史『本陣殺人事件』『蝶々殺人事件』『獄門島』『八墓村』、半村良『石の血脈』、藤沢周平『用心棒月影抄』、江戸川乱歩の短篇、筒井康隆の諸作とまあ、ミステリ主体で純文学なんてすべて一過性。無論、読み直したいなあとは思います。でも、今を追いかけるほうが忙しい。

でも、です。面白くなければ途中で止めればいい。幸い、次女は『ゲド戦記』の4巻以降は読んでいても、肝心の本編3冊を読んでいません。浪人中の身でもあるし、まだ本格的な受験勉強が始っていない。私が読まなくても、彼女が読むかもしれない。一応、『ギフト』三部作は楽しんだようだし、アニメにもなったんだからきっと読むだろう、って。

幸いなことに私は『ゲド戦記』の内容を全く覚えていません。本も持ちやすそうな版型だし、キレイな本で読み直すっていうのもありかな? そんな気持ちで読み始めたのです。そして以前と同様、難しく、登場人物に感情移入できず、ワクワクするような気持ちになることはなかったものの、だから面白くない、のではなく「それでも面白い」と思いました。

詳細は今後、6冊の評を通じて書いていくことになりますが、これは「指輪」とは全く違った意味でファンタジー(この分類が正しいか疑問ですが)の傑作であることを確信しました。でも、これを子どもが読んで楽しむというのはないだろうなあ、中学生でも無理かもしれなくて本当は社会人にならないと、理解はできないんだろうなあ、と思いました。

カバー後の言葉は

アースシーのゴント島に生
まれた少年ゲドは、自分に
並はずれた力がそなわって
いるのを知り、真の魔法を
学ぶためロークの学院に入
る。進歩は早かった。得意
になったゲドは、禁じられ
た魔法で、自らの〈影〉を呼
び出してしまう。

●中学以上

です。内容はこれだけにして、気になるのは、訳者あとがきで、清水が続巻である『2 こわれた腕輪』『さいはての島へ』の筋を書いてしまっていること。これは以前読んだ時は気にならなかったけれど、こうしてあらためて読めばネタバレだろう、私だってこういうことを書評で書いたら出版社から削除指示がであるのに(実際に、全然ネタバレでもないのにタイトルにクレームがあって書評自体を削除しているものもあります)、岩波のこの寛容ぶりはなんだ?なんて思います。

それ以上気になるのが、少年文庫版によせての

ゲドに真の名前を授けた大賢人の通称オジオンの表記です。ogionは作中でもふれられているように、モミの木になる松かさの実をいい、カタカナ表記ではオギオンとすべきところでした。それを訳者の私は日本語版の初版を出すときに誤って表記、まちがいに気づいたときにはすでにオジオンは、その魅力的な人物像のゆえもあって、日本の大勢の読者の方々に迎え入れられており、私は訂正の機会を逸しました。ようやくお詫びがかなったのは二〇〇四年五月に出版された『ゲド戦記外伝』の「訳者あとがき」においてです。この少年文庫発刊はオギオンに改める絶好の機会だったかもしれません。けれど迷ったあげく、オジオンを踏襲することにいたしました。すでに人格をもって歩き出しているオジオンを亡き者にすることができなかったからです。この本で初めてオジオンに出会われる方には誤りを強いることになりますが「オジオン」を受け容れてやっていただけたらと願っております。

です。巻の編成は作者の要望によって今回改めている、それについては何のためらいもないのに、人の名前も誤りを訂正しないというのは、このゲド戦記そのものの精神を否定することではないのでしょうか。名前を知ることはそのものを知ることであり、名前を明かすことは己を相手に差し出すといってもいい重要なことです。

それを過去への執着から、放置する。それを許してしまう岩波の姿勢にも疑問を感じますが、「初めてオジオンに出会われる方には誤りを強いる」と言って恥じない訳者には、疑問を超えた怒りを覚えます。この本を読んでそだった子供たちが、海外の人とこの本について語り ogion にふれた時、なにが起こるか考えたことがあるでしょうか。

多くの子どもは、今回の本で初めて『ゲド戦記』に触れます。それを考えて欲しい。間違っているけれど親しんでいるから直さない、過去の間違ったものを次世代に押し付ける無神経さと傲慢。正直に告白しましたから許しては、あくまで過去のこと。それは構いません。でもごり押しはいけません。語感としてもオジンのようなオジオンには疑問を感じます。

それにしても、ゲドの傲慢なことといったら、どうでしょう。若さゆえ、と許すにはあまりに彼の言動は愚かで思慮に欠けます。そういう点では、まだ新作『ギフト』三部作の登場人物たちのほうが大人というか、地に足がついている気がしてなりません。こういうゲドの設定が、このゲド戦記のあり方を変えていくのですが、それは作者も読者にもこの時点では想像もできなかったわけで、文学が生き物であるということがよくわかります。
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