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カシオペアの丘で
上
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コメント・書評 |
つっかり、もっかかり
kumataro
Jun 12, 2009 11:26:47 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★
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今朝から同作者の「きよしこ」を読み始めて、あと50ページほどで読み終えます。以前読んだこちらの本の感想を投稿してみることにしました。きよしこにも書かれているのですが、作者は吃音で、作品にも「つっかり、もっかかり」が現れているということが、この作家さんの特徴だと感じています。
カシオペアの丘で 上・下 重松清 講談社
タイトルからはロマンチックな物語を想像する。導入部では、小学校4年生の4人がカシオペアの丘で天体観測をするところから始まるので、甘酸っぱい展開になるのだろうと予測する。されど、この物語の内容は暗く重いものでした。 舞台は、北海道の閉山した炭坑の北都市(ほくとし)と東京。貫くのは、財閥の総帥倉田千太郎の許しを乞う気持ちです。 4人の少年少女たちは、ミッチョ(美智子)、トシ(ミッチョの夫、市役所勤務、遊園地カシオペアの丘園長)、シュン(倉田千太郎の孫、俊介、昔、ミッチョの同棲相手)、ユウ(雄司、テレビ報道番組製作会社勤務)で、彼らをつなぐのが、自殺願望者の川原さん(銀行員、犯罪被害者で娘を亡くし、妻とは離婚する。)です。それから雑誌社勤務のミウさんです。 時は、小学校4年生から、各人が39歳になる時点まで飛びます。 炭坑とか鉱山が次々と閉山に追い込まれたのは、昭和40年代初めから半ばの頃でした。福岡県で見送る立場にあったわたしは、たくさんの児童・生徒が短期間のうちに転校していく姿を見ました。あれからもう何十年も経ちます。記憶も薄れているのですが、なぜ西暦2002年から2004年にこの物語が新聞に連載されたのだろう。作者は岡山県出身なのになぜ炭坑のことがわかるのだろう。そんな疑問を持ち続けながら物語を読み継いでいきました。 炭坑のことは大半の日本人が知らないことです。炭坑生活者に対する鎮魂歌(ちんごんか)、魂を鎮めるための作品だろうか。作者は、暗くて重たい部分を素材として手をつけています。北都観音は歴史の象徴です。人は人を怨みながら生きていく。雄司の肺癌は死を意味する。彼は必ず死ぬ。原点に帰りたくても帰れない。1万人を救うために7人の命を犠牲にした経営者社長の倉田千太郎は39歳の俊介に会いたいのではなく、10歳の俊介に会いたい。 同棲していた男女がその後、別々の配偶者を得たとして、その双方の家族が仲良く集まることなどありえない。美智子と俊介の関係には無理があります。あの日あの時あの場所であの決断をしなければ、もっとしあわせになれていたのにということはある。 読んでいて、ぬるい感覚がある。新聞連載小説という制約のなかで書かれたことが原因だろう。毎日、定められた文字数の範囲で義務的にペンが進んでいく。いくら幼馴染とはいえ、他人同士は物語のように密接にはつながっていかない。夢、幻の物語です。 下巻260ページ、川原さんの言葉、悲しいときには旅をしたほうがいいは、同感です。人と人とは、近づけば近づくほど争うようになる。作者の思い入れが強く書き込まれた作品です。テーマは「許容」です。
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