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オリンピックの身代金
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奥田 英朗著
税込価格:
¥1,890
(本体 : ¥1,800)
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出版 : 角川書店
発売 : 角川グループパブリッシング
サイズ : 20cm / 524p
ISBN : 978-4-04-873899-6
発行年月 : 2008.11
利用対象 : 一般
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コメント・書評 |
なつかしい
kumataro
May 28, 2009 10:50:38 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★★
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オリンピックの身代金 奥田英朗(ひでお) 角川書店
この作者さんの「空中ブランコ」を読んで作者に興味をもち、このオリンピックの本を読み始めました。空中ブランコと比較して、文体は別人のようです。空中ブランコはおとなの童話でした。オリンピックは本格的というか、普通のタッチで事件が描かれています。 東京オリンピックですから、昭和39年、もう44年ぐらい前のことになります。東北出身の東大生、彼は貧困暮らしを経験しているわけですが、その島崎国男君が東京へ出稼ぎに出ていた兄の死をきっかけとして、爆弾魔と化しテロ行為をしていくわけです。 同時期に「カシオペアの丘で」重松清著を重ねて読んでいました。ふたつの本の舞台である東京、札幌、秋田を自分の頭の中にある日本地図に落として、同時期にふたつの物語を動かして空想を楽しんでいたのですが、冒頭付近では両者ともに炭坑の記述が多用されています。わたしの亡き父親も坑夫をしたり、都会へ出稼ぎに出たりしていたので、当時の炭坑街風景や出稼ぎ先都会の記憶が残っています。また、わたし自身も高校生の頃にアルバイトで土方(どかた)仕事をしていたので、人夫(にんぷ)の世界にも記憶があります。 なぜ、今、「昭和」の再現なのか。団塊の世代が現役を去りつつあるからなのか、若い新人作家の作品には時代背景がない作品が多いからなのか。それは最後まで疑問のまま読み終えました。 文章全体から東北弁が響いてきます。匂(にお)ってくると言い換えてもいい。犯人である島崎国男君と自分自身が重なる人も多いのではないか。オリンピックのための建設と同時進行で失われていく古い家屋とか心がある。北京オリンピック前の北京の街風景に似ています。肉体労働者はどん底の暮らしを送っています。出身県とか所属する団体にこだわるのは日本人だけだろうか。兄の死がなければ、島崎君がテロリストになることはなかった。この本の313ページ、「カシオペアの丘で」はひとり娘が亡くなって娘の父親が自殺志願者になった。この本では、島崎君の共犯者が女房とこどもふたりを戦争の空襲で亡くし、残された夫である共犯者は長期間の悲しい時期を送っている。 東京駅での犯人と警察のドタバタ騒ぎは、「ドミノ」恩田陸著を彷彿(ほうふつ)させてくれた。混乱を招かせる場所は、混雑している東京駅がいい。犯罪を犯そうとすれば簡単に犯せることができる国が日本です。作者は犯人の味方なのだろうか。456ページ、ハッピーエンドになってほしい。あと67ページです。警察職員は何を動機にして、職務に厳しく専念しているのだろうか。月給のため、安定した職を維持するため、それらしか思い浮かばない。警察の役職者には、自尊心、自己顕示欲が積み重なる。警察組織下層部の職員には「家族」が基盤にある。しかし上層部職員のキーワードに「家族」はない。警察組織の全体にいえることとして「国民のため」というキーワードはない。 484ページ、執筆中である作者のほっとした気分が文章から伝わってくる。もうすぐ書き終えることができる。 読み終えて、虚無感が残る。全体を貫いていたテーマは、「人柱(ひとばしら)」だったことがわかる。目には見えないところに犠牲者がいる。そういった人たちの上に社会の繁栄がある。「パイロットフィッシュ」大崎善生著が浮かんだ。主役の魚が快適に暮らせるような環境をつくるのが、最初に水槽に入れられるパイロットフィッシュと呼ばれる魚で、用済みとなれば、ごみとして捨てられるか、主役の魚の餌にされてしまうのです。
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