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なぜ世界は不況に陥ったのか
集中講義・金融危機と経済学
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コメント・書評 |
100年に1度の危機とその解決の困難がよく解る!
T.コージ
Mar 5, 2009 5:35:17 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★★
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●シンプルに示される鋭く深い知見! 個別科学では得られないような視点からスルドク考察する池田氏。さまざまな問題をディテールまで具体的に追究する池尾氏。両者のやり取りをとおして現在間違いなく全世界が当事者である100年に一度といわれる問題が分析、考察され、解き明かされていく。 直近のテーマはもちろん現在の世界的な経済危機なのだが、二人による探究の鋭利さゆえか、それとも危機が全般にわたっているせいか、結果として経済をめぐる問題のほとんどに関して言及され知見が示されている。レアな問題としても経済(学)あるいは社会科学の基本としてもフォローされる領域はひろく深いといえる。 現在の経済危機の原因とそれを増長させた要因が明らかにされている。意外にシンプルな説明なのだが、それは事態がシンプルだからだ。統計や数値やナントカ式を列挙して悦に入っているプロ?というのは、そのことによって自らのアイデンティティとしてることが少なくないが、もちろんそれは真理の究明や事象の解析には何ら役に立っていない。本書はその真逆にある。 国内経済の認識では『世界経済危機 日本の罪と罰』(野口悠紀雄)とほぼオーバーラップしそれを補完する内容で、解決策として産業構造の改革と内需の拡大が提示されている。VC起業が力説されているのは著者(池田)らしいが、冷静にアメリカの経験を検証してみればそれが正しいのは明らかだ。 ●日本の危機は世界よりヒドイ! 日本のバブルが銀行による融資と不動産によるプライムの膨張(のルーチン)というシンプルなものだったのに対して、今回のアメリカの危機が全く違うものであることが説明されている。つまり日本(のバブルの経験)は危機打開の参考にならないし、日本は今回のタイプの危機に対してまったく免疫をもっていないことが明らかにされている。 それは、サブプライム(破綻)のファクターは債務を証券化したことだからだ。資産(評価)を膨らませたのではなく、債務(負の資産)を(担保の)資産価値は上がり続けるというありえない幻想のもとに証券化してしまった。負債が元本になっている金融商品なのだ。そのうえ保険会社は準備金(保険料)を収入(利益)として計上し時価を膨らませたという詐欺的な側面がとてつもなく大きいことが示されている。 しかし冷静に考えるとこの保険会社のオメデタイ思考は日本でもそのままあてはまってしまう。顧客が積み立てている保険料をまるで収入(売り上げ)のように扱い、しかも圧倒的に多くの不払いをやってのけていたからだ。今後も保険よりもかんぽ、預金よりも投資という選択肢が安心して確保される政策が必要だろう。『お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践』(勝間 和代)は正しいし、日米のGDPの差より東京証券市場とニューヨーク証券市場の差の方が異様に大きいのが異常なのだ。(もちろん東京証券市場の取引量の異常な低さこそ日本経済の異常さを正しく反映してるというのが本書や『世界経済危機 日本の罪と罰』から得られる視点でもあるが…) ●「コーディネーションの失敗」とは? 今回の危機を解くキーポイントととして「コーディネーションの失敗」というものが指摘されている。合理的な行動が不合理な結果を生むことだ。たとえば、銀行の取り付け騒ぎでいうと預金の安全に不安を感じた顧客が預金を降ろすのは個人にとって合理的な行動だ。しかし、ある一定以上の人数の顧客がそうするとその結果として銀行は破綻してしまう。残存預金高では残った預金者の預金合計に足りなくなるからだ。残りの人は預金を降ろせなくなってしまう。また銀行も規定の自己資本率を割り込み法規上業務が出来なくなる。 コーディネーションが失敗してしまう理由は論理(学)的にはクラスの混同なのだが、現実に破綻や恐慌が起こりトラブルのであって、論理がどうのこうのだといっても意味はあっても価値がない。究極的にはコーディネーションの失敗をはじめとするトラブルは個人のエゴにつきあたる。結局は心(理)の問題としてクローズアップされるほかはないのだろう。道徳や倫理はなにやら立派そうだがTPOで異なるものなので一定以上の意味はないし価値もない。問題は心理なのだ。 個人のオーダー、公的なオーダー、あるいは家族や恋人とのオーダー。これらはそれぞれ異なる心理的な局面を示す。たとえば戦争で敵を殺すのは英雄かもしれないが個人的にやったらただの人殺しだ。この価値観や判断基準の違いの由来がわからないと永遠に「コーディネーションの失敗」は解決しない。とうとう経済(学)はそういうところまで突っ込んだワケだが、解決となるとトホホなのが日本の実情らしい。 いずれにせよ現在そしてこれからの相当長い期間にわたって日本の経済がダウンするのは水準の是正にすぎないという指摘がことの重大さを示している。高齢者社会などの観点からの考察はないが、中長期的にいいことがないのは確かということがよく解る…。
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