コメント・書評 |
ファンタジーでもなく、伝説でもなく。
空蝉
Nov 18, 2008 9:10:49 AM
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評価 ( ★マーク )
★★★★★
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不思議なくらい、人魚の物語には悲しい物語がつき物である。 最も有名なところで「人魚姫」だが、古今東西、下半身が魔物(魚)だからという相容れない世界の生物だからであろうか、それとも架空の生物であるが故のかなわぬ恋であるからか、人間は必ず恋に落ち、必ず悲劇のうちにその物語の幕は閉じる。 そして本作もやはり、人間と人魚の悲劇の短編集である。
ただ今まで観てきたような涙に暮れるだけのラストではけしてない。そもそも人魚という架空の存在が当たり前に存在しているし、生態が未だ解明され尽くしていない稀少動物のような位置で、現実に確かに居る存在である。 存在すら信じてもらえない妖精や幽霊とは違いそれだけでも悲劇性は少ない、はずである。そう、「はず」」。 なのにどうしてこうも胸が締め付けられるような悲しみがこみ上げるのだろうか。
人間たちは人魚の美しさ、優しさ、純粋さに惹かれては嫉妬し、そんな己の醜さ浅ましさに自己嫌悪する。架空のモノだったら無視すれば、否定すればそれだけで無かったことに出来る。けれどこの世界では人魚らが「存在する」以上、黙って海の彼方へ去って行ってしまった事実も、己の愚かさも全てなかったことには出来ない、本当の哀しい悲劇が起こるし、残る。
一風代わった人魚伝説としてではなく、ファンタジーとして片付けるのでもなく、本物の恋の物語として。本書の人魚たちと人間たちのひと時は海にきらめく光のようにキラキラと心に響くはずだ。
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