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静かな爆弾

静かな爆弾(中央公論新社) 吉田 修一著
税込価格: ¥1,365 (本体 : ¥1,300)
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出版 : 中央公論新社
サイズ : 20cm / 199p
ISBN : 978-4-12-003917-1
発行年月 : 2008.2
利用対象 : 一般

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内容説明

テレビ局に勤める早川俊平は、ある日公園で耳の不自由な女性と出会う。取材で人の声を集める俊平と、音のない世界で暮らす彼女。やがてふたりは恋に落ちるが…。『中央公論』連載を書籍化。

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コメント・書評

世界で唯一つだけの神様探し
空蝉
Nov 11, 2008 10:51:45 AM
評価 ( マーク )
★★★★

今、手を伸ばせばたいていのものも情報も手に入る便利かつ平和ボケした日本という島国で、私たちは色々なものをそぎ落として日常に埋もれている。
自分のことですら忘れがちなのだ。海を隔てた世界の出来事、ともすれば隣人の事情すら日和見で、当たり障りない平凡な日常をそつなくこなすことに充足してしまっている。
所詮他人事なのだと知っている、思い込む、そうして安心できる国と社会と人間(ジンカン)に住んでいられる世の中だから。

本書に登場する(現実の記憶にも新しい)宗教による戦争や大仏爆破というニュースにも多くの日本人は動じないし、なぜ大仏は破壊されなければならなかったのか、その真実に迫るドキュメンタリーの取材に奔走している主人公の姿もやはり他人事にすぎないだろう。確かに現場に立ち入るほどの介入は一般人である私たちには不可能だし無関係かもしれない。
しかし大きな爆弾ではなく、小さな爆弾、当たり前に思いこんでいた日常がふとしたきっかけ=爆弾で跡形もなく吹き飛んでしまうことがあるのだと彼は知る。いや、彼が番組を通して伝えたかったように、私もまた知って欲しい。
単に世界のテロや戦争、飢餓に目を向けろというのではない。大きな世界にも小さな日常にも己の中にも、大きな爆弾、小さな爆弾、あちらこちらに潜んでいるということを、だ。

例えばアドレス帳の住人のうち、携帯無しで連絡を取れる人がどれだけいるだろう?彼は半同棲する耳の聞こえない彼女を愛したが、メール一つ通じないだけで全ての連絡手段を失ってしまう。
知っているつもりになり何がおきても「まあ、平気だろう」という根拠のない安心と自信に埋もれて、気がつけば私たちは本当に信じられる情報を何一つ持っていないことに打ちひしがれるのだ。

繰り返される「神様」という単語、それは本当に信じることの出来る自分の中の確かな存在。星の数ほどいる群衆の中で、彼はたった一人の彼女という神様を見つけられるだろうか?あふれるメディアと情報の中で本当に信じられる人、本当に見ることのできる世界を見出せるだろうか?

私たちの生活する安易なこの世界は、同じだけ安易にあっけなく失われる世界でもあるのだと、そろそろ気がついてもいいのではないか。何も全ての真実でなくてもいい、唯一つ、心底信じることの出来るたった一つの真実、神様さへ見つけることが出来たなら、それだけでいい。
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