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さくら

さくら(小学館) 西 加奈子著
税込価格: ¥1,470 (本体 : ¥1,400)
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出版 : 小学館
サイズ : 19cm / 380p
ISBN : 4-09-386147-1
発行年月 : 2005.3
利用対象 : 一般

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内容説明

飼い犬サクラと大学生の僕、父さん、母さん、妹のミキ。あるちっぽけな家族に起こったひとつの奇蹟が、ある美しいひとつの曲を、強く、やさしく立ち上げる。

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コメント・書評

愛に溢れたこの世界で
空蝉
Nov 7, 2008 1:17:11 PM
評価 ( マーク )
★★★★★

文章は解りやすくて読みやすい。会話しているように単純でひとなつっこいほどなじんでしまうちっともな語彙、何気ない普通の家庭が大半を占める。だけどこの中には沢山の心、喜びも悲しみも、切なさも苦しみも全てぎゅうぎゅうに詰まっている。そう、ぎゅうぎゅうに。
何事にも全力で真っ直ぐ体当たりして生きてきた彼ら兄妹と、温かく見守る父母と、いつだってその一家の幸せ象徴するように大安売りして振りまいていた一匹の犬・サクラの、(少し恥ずかしいけれど)愛にあふれてどうしょうもない物語なのだ。

物語はずっと行方不明になっていた父からの一通の手紙に突き動かされるようにして、弟が実家に帰るところから始まる。
万能のかっこいい頼れる兄貴・一。すごい美人なのに喧嘩上等しかも天然な愛すべき妹・ミキ。その間に挟まれてちょうどいい具合に収まっている、この物語の語り手である次男・薫。
その兄が死に、妹は壊れ、母は過食、父は行方不明になり自分は家を出て・・・皆が皆「家」から逃げているこの現状から彼はようやく帰郷し、幼い日々の回想からそうなるまでを私たちは読むことになる。

例えば兄弟に最高の宝物である妹が出来た日のこと、彼女のために無謀な冒険をして迷子になったこと、親にSEXについて真顔で聞いてしまう無垢な頃、引越、恋、喧嘩・・・サクラとという幸せの象徴が加わって彼らは完全無欠な幸せの中に生きていた。

家という柔らかな砦に守られていればいつだって笑っていられるのに、どうして私たちは外の世界に意識を飛ばすのだろう?とふと思う。
けれどそれはもしかしたら、喜びや笑い、愛なんていう恥ずかしいくらいの幸せがその小さな世界にはとめどなくわいてきて、収まりきれずに溢れ出してしまうからかもしれない。
溢れたそれは時には心の堰を切って流れ出し、誰かを傷つける。その小さな幸せの世界が全て外に流れでしまう。
跡形もなく、その大切な家族という名の世界はほんの少しのきっかけでその溢れた愛情で流されてしまうかもしれないから。
繰り返される「全力で」という言葉。 彼らのように全身全霊全力で家族を愛している、なんてなかなか言えないけれど、それでも無償で、それこそ理由なんてひとつもなく当たり前に愛してやまない家族という存在はきっと私にもある。

恋、家族愛、兄妹愛、そして・・・それ以上の愛。沢山の感情が私たちには溢れていて、誰もが直球を投げホームランを打てる気になっている。
でも気づいて欲しい、人はみんな不器用でホームランなんて打てはしない。
変化球だらけの不器用な球だから、誰かに向かってじゃなくて良い、愛するってことが世界中にいつでもどこでも存在するモノなんだってこと、その事実に向かって投げ続ければそれで良い。
ようやく彼らと私のキャッチボールが始まる気がする。
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