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シズコさん
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コメント・書評 |
愛されないことの悲しみ、愛せないことの苦しみ。そのえぐられるような思いが赤裸々に。
うっちー
Nov 5, 2008 11:37:52 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★
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壮絶な母娘の葛藤の記録である。自分と母親の関係を子どもの頃から振り返り、いかに母「シズコさん」が自分にひどかったか、自分もまた、いかに反抗的だったかを、後悔と憎しみと痛みとを伴いつつ書いている。 残酷なものだ。他人なら離れれば解決することが、親子だから逃げようもなく、日々痛みにさいなまれ、それだけ、煮詰り、塊となって残る。 著者は、実に冷静に容赦なく家族のことを書いている。なるほど、彼女の書く作品には、それが児童書であっても、人の心の暗さや意地の悪さもぴりっと入っているのは、こうしたことゆえか、と変に得心もした。 子どもを虐待し、愛情を示さない。ひどい母親である。しかし一方、家事能力にたけ、父親亡き後も4人の子どもを育て大学まで行かせた、みごとな女性でもあるのだ。著者は、「母親」を愛せない自分に苦しむ。老いてから、自分の家に引き取るが、とうていがまんできなくて、老人ホームに入れる。それを「母を金で捨てた」と書く。 老人ホームに入れた後、呆けていく母親は、優しい老女になっていく。著者も母親も素直になっていくのだ。そして、母に触れ、添い寝できるようになる。自分の中にこりかたまっていた嫌悪感がとけていき、「母を愛せない」という自責の念から、ようやく解放される。
「シズコさん」のイヤなところをさんざん読んで、「なんてひどい女!」と非難する気持ちでいっぱいになるが、読んでいるうちに、彼女が活き活きと動き出し、そうなるともはや嫌いにはなれない。…ということは、その感じ方の変化は、著者の佐野洋子の気持ちの変化でもあるのか。
健気だった母が、戦後粗暴になっていったことを、こんな風にも書いている。 「民主主義は忍耐も従順もうばった。家族という一つの丸かった団子が、小さな団子に分裂した様になってしまった。」「…母と同じように、時代と共に世の中が変化するのと同じように変わったのだ。皆んなが地を丸出しにし始めた。地を丸出しにするのが個性なのだろうか。私は 今の民主主義がどうも日本人のお口に合わない様な気がする。」
家族の難しさ、怖さ…。人の一生は、全くやっかいなことでいっぱいだ。愛されたいのに愛されない、その渇きを受けきれなくて苦しむ子どもは、今、ますます増えてきているのではないか。
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