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火車  新潮文庫

火車(新潮社) 宮部 みゆき著
税込価格: ¥900 (本体 : ¥857)
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出版 : 新潮社
サイズ : 16cm / 590p
ISBN : 4-10-136918-6
発行年月 : 1998.2
利用対象 : 一般

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コメント・書評

頂上の石ころはやがて借金地獄という名の雪ダルマになり貴方のもとになだれ込む
空蝉
Nov 5, 2008 10:54:32 AM
評価 ( マーク )
★★★★★

借金地獄というのは文字通り、雪ダルマ式に借金と不幸が転がり膨れる転落人生となる。カードローン、不幸続きの人生、孤独な年月。全ての「火の車」から飛び降りて「あるべき」自分になりたかった一人の女がいる。彼女は他人に成り代わるために女を殺害し新たな人生を歩みだそうと彷徨する。しかし結局なりきれなかった。逃げ場は何処にもないのだと、彼女の叫びが耳に残る。
ただ幸せになりたくて現状から逃げ、こんな人生は嘘だと、本当の自分は「こうあるべき」と理想を追い求めてひた走る。火の車から降りたつもりが、結局いっそう勢いのついた火の車に乗っている。
彼女は殺そうとした人間の過去に赴き、人に土地に触れることでその人生を
なぞっていく。彼女は彼女らの人生を背負い、また己の罪を背負い、巡礼しているようにも見える。
彼女は「幸せになりたかっただけ」であり、それは他人になってしまいたかったのではなく『あるべき自分の姿』に戻りたかったということだ。こんなはずではない、これは自分ではない。
人は弱いから確かなモノに頼る、例えばお金、確かな人生、信じられる人と場所・・・それらを積み上げた山を見上げて自分の人生に仮初の満足をする。けれど山は崩れる、あっさりと。頂点の石コロが転がり麓で見上げる己の下につくころには雪崩となって押し寄せる。彼女の地獄はまさにそれだ。
けれどそこから逃げ出し他の山に移ったところで同じことではないか?

蛇は「こんどこそ足が生えてより良くなる」と信じて脱皮するのだという。今度こそ本当の自分の人生を送れるのだと、そう信じて蛇=彼女は脱皮を繰り返す。何度も。何度も。いくら脱皮を繰り返してもその中身は己自身だということをいつになったら知るのか、それすらもきがつかずに。

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