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福袋

福袋(河出書房新社) 角田 光代著
税込価格: ¥1,365 (本体 : ¥1,300)
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出版 : 河出書房新社
サイズ : 20cm / 232p
ISBN : 978-4-309-01853-9
発行年月 : 2008.2
利用対象 : 一般

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内容説明

私たちはだれも、中身のわからない福袋を持たされて、この世に生まれてくるのかもしれない…。謎で不可解な届け物や依頼、同僚、夫など身近な人の不可解さに出くわす8つの連作小説集。

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コメント・書評

私はエンタメにだって重いものもあれば軽いものもあると思っています。重いものが純文学、なんて狭い了見は持ってません。読ませて考えさせる、そういう本を求める人にお薦め
みーちゃん
Jul 3, 2008 7:46:02 PM
評価 ( マーク )
★★★★★

いま、その小説を読んでリアルを感じさせてくれる作家というのが、偶々早稲田大学の文学部に集中してしまった感があります。直木賞でいえば角田光代、三浦しをんがそうですし、予備軍の豊島ミホも近いところにいます。ユーモア小説を書かないという点では、角田だけが違いますが、でも真面目な話となればどれが誰やら。

とはいえ、作風の近似に文句を言っているわけではありません。絵空事であれば嫌味の一つでも言いたくなりますが、この三人の場合は作品の完成度が高いので、まったくいうことなし。私などは、読み終わるとすぐに大学二年生の長女に読ませます。理由は、彼女に似た女性が登場するからです。他人と上手く付き合えない、てきぱきとモノゴトを進めるのが苦手、いい性格なんだけど外から見るとボーっとしてるだけ・・・

だから読み終わって本を返してくる時、決まって「面白いけど、なんとなく自分のこと言われてるみたいで」とコメントがついてきます。そして次の本を渡せば、ついつい身につまされて最後まで読んでしまう。リアリティのある小説の強みでしょう。そしてこの本に収められている作品もまさにそういう、斬れば今がこぼれ出してきそうなものばかり。早速各話の内容と初出紹介にいきましょう。

◆箱おばさん(『文藝』05年春号):駅ビルの地下にある洋菓子店で働く私は、何事にも曖昧な性格。そんな私を見抜いたかのように現れた見ず知らずのおばさんから箱を預かって、と言われて・・・

◆イギー・ポップを聴いていますか(『文藝』05年夏号):子どもの頃からものを拾うのが好きだった僕は、結婚した今でもその癖が直らない。妻の日奈子の目を盗んで拾ってきた紙袋の中身は・・・

◆白っていうより銀(『文藝』05年秋号):六年間の結婚生活に別れを告げたばかりの私と龍ちゃん、駅のホームで別々の電車を待っている時、少しの間だけ子どもを預かって欲しいという母親が・・・

◆フシギちゃん(『文藝』06年春号):なんとなく彼氏のケータイのメールを見てしまう私、そんな私に一緒に食事でもしない、と声をかけて来たのは、派遣社員のなかで年長の長谷川さん、37歳の彼女は周囲からフシギちゃんと呼ばれ・・・

◆母の遺言(『文藝』06年夏号):集まった長男の一郎、次女の奈未子、末っ子の真実子のまえで、母の面倒を最期までみていた姉の富美子は「母の遺言状がある」と言い出して・・・

◆カリソメ(『文藝』06年秋号):翠が出席することにしたのは、現在、離婚手続き中の夫・友彦の大学の同窓会。五年間付き合ってきた友彦の本当の姿は・・・

◆犬(『文藝』07年春号):珠子と同棲するために借りた一軒屋で二人を迎えたのは、一匹の見知らぬ犬。人懐こい犬を気に入った彼女と僕の間に何となく漂うのは・・・

◆福袋(『文藝』08年春号):私が長い間憧れていたのは、自分の兄・泰弓。でも、兄の身勝手な生き方に家族が振り回され、心労のあまり母まで亡くなって、そんなとき兄の恋人という女性が現れて・・・

正直、甲乙つけがたいものばかり、どちらかといえば全甲とでもいいたい出来です。でも、我が家の長女を思わせるのは「箱おばさん」の主人公。ま、男性経験は主人公に及びもしませんが、人にものを頼まれて押し切られてしまうあたりは、まさに長女の性格そのもの。ま、うちの娘はどこかで爆発して、結局最後は泣いちゃうんですけど・・・

それと「白っていうより銀」でしょうか。嫌いで別れるわけではない、そんな二人のあいだに舞い込んだ赤ちゃん。ここにも、断りきれずに子どもを預かってしまう女性の困惑がありますが、「箱おばさん」とは違って苛々させるよりは、「もしかして」と思わせる、そこがとてもいいです。映像にしても思わず見入ってしまう、そういう作品です。

そういう意味では「犬」は異色です。同棲相手の行動がエスカレートしていく様はまさにサイコホラー。私が男だったら、こういう女性とは別れますね、絶対。そういう意味では、弱いかな。「福袋」もちょっと設定が。ただし、兄に寄せる妹の密かな想い、というのは好きです。むしろ、それをじっくり読みたかった。

最近は結構つかえそうなもの落ちているんです「イギー・ポップを聴いていますか」。いるいる、私の会社にも、っていう「フシギちゃん」。言いたくても言えない、そういうもどかしさが爆発する「母の遺言」の三作は、現実そのもの。でも、「カリソメ」はいやかな、なんとなく「犬」を思わせたりして・・・

とりあえず、東千夏が装画/表紙・扉切り絵を担当し、大久保伸子が装幀を担当した落ち着いた印象の本をまず、手にしてみてください。面白おかしい軽さを求める人にはむきませんが、今の自分を大切にしたい、本当の人間に出会いたい、そういう人にはピッタリの作品集です。 
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