コメント・書評 |
現在を「知る」ためという一点で書かれた本。「知った」後は…どーするか、が問題?
T.コージ
Jun 21, 2008 3:03:05 PM
|
評価 ( ★マーク )
★★★★★
|
最近の書店の隠れヒットがマルクス本。本書はニューアカブームの仕掛人(『構造と力』のプロデューサー)でもあった今村仁司の『マルクス入門』とともに評判の入門書だ。いかなる解釈も解釈者の能力やTPOに規定される(党派的な限界でしかない)が、本書は分かりやすく現在の状況をも反映したものになっている。現実の具体例を多く反映させた資本論の後半(の記述の仕方に)にウエイトを置いているからだ。 ワーキングプアはずっとワーキングプアでしかないことが示されているが、絶対窮乏化論がこんなにカンタンに示せるコトを評価すべきだろう。専門用語の羅列は識者の自己満足でしかないし、タームの理解を独占しているかのように見せかけることによる脆弱な立場の維持でしかない。ホントに理解していればどんな難しいコトでも誰にでも理解できるように簡明に表現することができる。プロという立場を保身するための専門用語は必須ではないハズだ。 現象を語り事実を修飾する文化の特徴そのままにさまざまなコトバが生み出されるが、マテリアルでテクノロジカルな事実は、たいがいシンプルで誰にとってもリアルだ。 たとえば失われた10年以降のコギャル、少年犯罪、ひきこもり、ニート…これらのどこがどのように問題なのか? 問題の側面は語る者によってさまざまだが、最終的に解決すべきコトは一つに収斂するハズで、それは経済的な問題だ。ずっとサヨクが訴えてきた単純明快なテーマであり、最初で最後の問題が、コレだ。 いよいよオカシクなってきた社会や経済を目の当たりにして、ニート対策のような政策で対応しようとする対症療法はいくら積み上げても最終的な解決にはならない。 本書は何気なく、しかし本気で、その最終解決への認識の糸口を提供しようとしている。それが階級闘争への自覚だ。「今という時代を知るために読む。この一点だけで読みます」と『資本論』紹介を目的とした本書のスタンスが表明されている…しかも、その『資本論』は「階級闘争の書です」…なのだ。 資本主義のシステムや価値の形態を語ること(のみ)で現実とのマテリアルな接触を回避し逃避してきた各種分析理論は、ケインズのように政権与党によって現実に駆使され成長し鍛錬されてきた理論とは違って、ただタームを列挙する言葉遊びそのままに呆られるタイミングを待つだけになっている。 リアルに泥まみれになれない、科学を自称する○○理論などとも違って、本書は正統サヨクのセントラルドグマである剰余価値説あるいは労働価値説を簡明に解説し生産(労働)の価値と交換(市場)の価値のギャップが隠蔽されるところに問題があることを示唆している。 リアルで説得力があるのが…資本主義が国家を超える独占を形成し、そういったグローバリズムの世界的な拡大が、やがて大きな変化を意外に早く招くかも…という指摘。それらを支える基本認識こそ「資本主義とは、人間関係である」というグレート?な断定が圧巻だ。 真っ当なサヨクの認識ツールの登場となるか? 本書にはさまざまな読まれ方、利用方法が期待されるだろう。 |
|
|
| 現在の投票
はい:8人(89%)
いいえ:1人(11%) |
|
|
|