コメント・書評 |
まともな年長者でありたい。
つきこ
May 25, 2008 12:02:50 AM
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評価 ( ★マーク )
★★★★★
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「あきらめないで、最後まで希望は捨てちゃだめ」地にめり込みそうな絶望に打ちひしがれた時、こんな言葉ほど虚しく響くものはない。けれど違う、希望は捨てたり拾ったりするものじゃない。その人の身の内から湧き出てくるものだ。そう実感させてくれるのが本書です。口述歴史家とも呼ばれるスタッズ・ターケルが、9・11後を憂い、90を超える老体をおしてインタビューし本にまとめた、恐らく彼の最後の書。
多くの人の肉声を通じて浮かび上がってくる事にこそ、耳を傾ける価値があるとする彼のスタイルがとても好きです。本書では様々な形で逆境を乗り越えた人達が登場します。ホームレスに医療を出前する医師、自分が通う大学職員の地位向上のために座り込みをする学生、イラク市民を救う活動を続ける平和運動家、太平洋戦争中の強制収容所体験を経て公立高校の校長になった日系二世…。必ずしも問題は解決していません。けれど、これじゃだめだ、ほっておけない。やむにやまれず、見るに忍びなく。行動を起こしたきっかけはとてもシンプルなもの。ただこれだけは許せない。そんな衝動に突き動かされて行動を起こした人達へのインタビューで構成されています。自分で解決の糸口を見つけるべく何らかの行動を起こして、初めて見えてくるものがある。差し伸べられる手もある。行動を起こしたその時点で、問題の半分は解決したような気さえしてくる体験談がとても力強い。
ここは欧米か。国情が違えば方法論は時に無意味だろう。けれど彼の国が行った道は、いつか私達も辿る道。今まではそうだった。ノウハウだけを知りたい人には無用かもしれない。でも、これだけは我慢できない。そんな気持ちはきっと万国共通だし、そこからどう這い上がったかの心の軌跡を知ることは、国情の違いを割り引いても有益なはず。希望の光は地に打ちひしがれた時に燦然と輝くものでなく、一歩を踏み出すごとに少しずつ体内を循環し始め、そしてあら不思議。いつのまにかなんだか元気が漲ってるじゃない。そんな具体例がたくさん詰まってます。
もうだめだ、何かが間違っている。その声に応えてたくさんの本が何かを語り出す。ターケルの最後の願いとも思えるこの書は速やかに日本でも翻訳され、文庫という安価な形で出版された。そして過去どの時代よりも簡単に、そう知ることができる私達は、もしかしたらとても凄い時代にいるのかもしれない。原題は希望は最後に死ぬ。ターケルにとってはこの本を書くことこそが希望だったのだろう。真摯にその言葉に耳を傾けたいと思う。英語力に自信のある方は原著をどうぞ。本書は全訳ではなく原著からの抜粋です。
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