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光ってみえるもの、あれは

光ってみえるもの、あれは(中央公論新社) 川上 弘美著
税込価格: ¥1,575 (本体 : ¥1,500)
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出版 : 中央公論新社
サイズ : 20cm / 327p
ISBN : 4-12-003442-9
発行年月 : 2003.9
利用対象 : 一般

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内容説明

友がいて、恋人がいて、「普通」からちょっぴりはみ出した家族がいて…。生きることへの小さな違和感を抱えた江戸翠、16歳の夏。みずみずしい家族小説。『読売新聞』夕刊掲載に大幅に加筆、訂正し単行本化。

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コメント・書評

奇想天外な展開が癖になる一冊。
オレンジマリー
Apr 21, 2008 3:42:24 AM
評価 ( マーク )
★★★★★

  予想さえできない展開が、癖になる一冊である。主人公、翠は変わった母子家庭で育った高校生。翠は至って普通の少年だが、彼を取り巻く環境や友人たちや大人たちが、異質な世界をもたらす。自分の高校時代と照らし合わせて、忘れかけていた記憶が沸々とよみがえる思いで本書を読み進めた。
 高校時代。自分を確立させるために手探りしていたり、大人という響きが妙に気になったりする時代だと思う。そういう時期に一緒に居る大人たちは、影響力が凄まじいものである。父親であるけれど、戸籍上は関係の無い大鳥の何気ない翠の家庭への出入りであったり、母親である愛子との微妙な関係であったり。何事にもさして動じないような祖母、匡子の姿であったり、担任教師である北川の言葉の一つ一つであったり。本書の魅力は、主人公である翠の動きだけでなく、翠の周囲の動きまでもがきちんと把握できる、というところにも有ると思う。
 クラスメイトである花田の突然のカミングアウトには正直驚きもしたし、吹き出したりもした。細部に渡る表現が、想像をより鮮明にさせるのだ。自分が彼らと同じ高校に通っていたら、やはり私も不躾に彼を眺めたに違いない、と思った。とんでもない発想である。いや、どこかにそうした高校生が存在するかもしれないけれど、私の世界では無かったことなので面白いと思った。
 後半の、どこか遠い島に翠と花田が行く場面では、自分の祖父母が住んでいた環境と重なって読めた。その土地独自の祭りがあったり、歴史が存在していたり。お盆とお正月には帰省があるので賑わうけれど、普段は変わりなくしん、としている島。時間という概念が一切取り除かれたような感覚に陥る、やけにぼ~っとしてしまう環境。離れた孤島に在る神社を参拝しよう、という冒険心。どれもが懐かしくもあり、今では奮い立たせることができない感覚であったり、感情である。
 翠と花田が山頂の神社でうっとりと眺めた月明かりと星明り、私にも覚えがある。父の実家が田舎も甚だしく、真夏なのに山から湧き出る水はきんと冷たく、夜の帳が降りて涼みに外へ出ると、妙に明るいのだ。月と星の明かりだけで夜道が歩けるような、都会では決して味わえない自然の照明。
 川上弘美の描写は秀逸である。細かな動きであったり、見える物や聞こえる物の表現が繊細である。翠と花田の、周囲の変動。驟雨の様子や島に響く連絡船の音、病院の様子や登場人物一人一人の個性と性格、どれもが浮き立っていて見事である。最後の最後で、また一騒動あるけれども、物語の終幕を荒立たせることでもない。微かな変化の中、静かに終わる。意表をつく、そして登場人物の言動がおかしくて声を立てて笑ってしまう箇所もあり、飽きない一冊でした。
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