コメント・書評 |
我々が恐れるべき唯一のものは、恐れることそのものだ
つきこ
Feb 22, 2008 11:28:22 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★★
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空気の読めなさ具合を競わせたら当代無比のふたりによるメディア論。 実はこの日本は悪の秘密結社、例えば13人委員会に牛耳られているのだ!……なんてオチがあった方がどれだけ救いがあるか。恐怖の大王を生み出しているのは何なのか。日本のメディアと社会に巣食う、救い難さが満載です。
森巣のような一介の博打打がなぜそんなことを憂慮せねばならないのか。そして森のようなテレビ出身の中途半端なライター兼ディレクターが、なぜこんな批評家もどきの発言をせねばならないのか。本書の意義と面白さはまさにそこにつきます。ギョーカイから距離を置いた人(弾かれたとも言う)ゆえの直言が爽快であり、痛快であり、悲しくもなります。 プロローグとエピローグを挟み、 ・報道番組の悲惨な現場 ・質問しないメディア ・見せないメディア ・懲罰機関化するメディア ・善意の行方 の全五章で吊し上げられるのは、テレビや新聞雑誌などのマスメディア。 森のボツに終わったドキュメンタリー企画で、彼が至高の人に問いかけたかったこと。私はそれを人として極めてまっとうな感覚だと思う。けれどそれは言っちゃおしまいよという”大人の分別”が、そんな問いさえ、疑問さえ公にすることを許さない。メディア内部いたるところで、この大人の分別と事情が顔を出し、今や惨憺たる有り様になっていることがよくわかります。 そして今、そんな大人の分別こそが曲がり角に来ている。そう感じさせる議論の数々でした。
森は、この負に振れた現状でも正にも転化し得るはずと説く。行間から滲み出る彼のいい意味での善良さが、救い難い状況であっても希望を抱かせる読後感だった。森巣の毒と笑いがより一層引き立つ。ところでこうした大人の分別から自由になることは、いちいち何でも個別具体的に精査せよ、考えよということでもある。考え続けるのは楽ではない。 そうなった時、考える人と考えない人との間に線を引く陥穽に陥らないこと。
森は「二者択一ではない。人はそもそも矛盾と曖昧さを抱えた生きものだ。だからこそこの世界は豊かなのだ」と言う。 考える人も考えない人も共に生きるからこその豊かさのはずだ。 そして、そんな森の言葉を美しいと評する森巣の言葉もまた美しい。 時間の試練に耐える精神の強度というものを学ぶ格好の書。 680円の新書としては破格に思えるほど充実した内容です。お買い得です。 |
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