コメント・書評 |
芸だってまだまだ捨てたもんじゃない
つきこ
Jan 12, 2008 10:31:05 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★
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想像力の欠如がもたらすオソロシサ、というものをちくちくちくちく皮肉たっぷり、警鐘たっぷりで読ませてくれます。 本書を著者の言葉を借りて紹介すれば、警察官がとある事件で知り合った民間人に終わった事件の話をし、話を聞いた民間人が事件の真相を解き明かすという「安楽椅子探偵」ものです。全七編からなる連作短編集、「月の扉」の座間味くんが再登場。その変遷に月日の流れを思います。連続性はないので「月の扉」を読んでなくても大丈夫です。
情動に流されることなく、”常識”に足元をすくわれることなく。論理的な思考を積み上げた末に導き出される推理に、目からウロコが落ちるか背筋が寒くなるか。 独特な題材の選び方と、それと密接に結びついた論理性の高さを石持ワールドと呼ぶならば、まさにその世界を堪能することができます。ブラックな風味付けがさらなる魅力を醸しだし、世の中を斜めに見がちな人間の琴線に響きます。
けれど決して理に勝った冷たい人でないことは、愛溢れる最終話「再会」を読めばわかるでしょう。実力はあれど現状に閉塞感と諦めを抱いて自信喪失気味で、身近に尊敬できる人生の先輩の後姿をみることができない、そんな女子の心にこそ届けと思う著者のメッセージに共鳴しました。そして、著者と同じくそう願う人は他にも本当にたくさんいるのだということを、言わずもながら付け加えておきます。 「月の扉」から本作まで、著者の変わった部分と変わらない部分、そしてその化けっぷりが如実に感じられ、とても幸せな気持ちで読了しました。
エンターテイメントなんてしょせん色と芸。芸だってまだまだ捨てたもんじゃない。売れてくれ。そして本に力を取り戻してくれ。心の底からそう願う著者の一冊です。
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