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望みは何と訊かれたら
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小池 真理子著
税込価格:
¥1,995
(本体 : ¥1,900)
出版 : 新潮社
サイズ : 20cm / 487p
ISBN : 978-4-10-409808-8
発行年月 : 2007.10
利用対象 : 一般
出荷可能時間:
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コメント・書評 |
愛という言葉をふりかざすなら、このくらいでないとおよびじゃない
つきこ
Dec 19, 2007 11:33:34 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★
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胸のボタンを余分に開けて、政治集会で集めたカンパを遊び金に使う。”政治の季節”のそんな女子学生像を教えてくれたのは小池真理子だった。お日様に当たりもせず、お腹いっぱい食べもせず。酒ばっかりかっ食らって破滅に向かう某女子学生よりは余程共感できた。 ここにはアブノーマルな性愛を描き尽くしながらも最後は可愛いお嫁さん、などという夢が透けて見える輩には到底辿りつくことのできない異形の愛と人生が描かれます。物を書くということ、少なくとも愛という言葉をふりかざすなら、このくらいでないとおよびじゃないのよと無伴奏の著者としての貫禄を示してくれます。同時代に生きないとその空気は決して知ることもできない、1970年代”政治の季節”のプチ入門書としても楽しめました。
いわゆる良妻賢母とは言えないものの、夫と娘とともにそれなりに平穏な日々を送る54歳の沙織はパリで忘れ得ぬ人・吾郎と再会する。そこから三十数年の歳月を遡り、革命活動に身を投じ挫折し、吾郎に癒された日々を振り返ってゆく……というお話です。 時代の持つ熱に、渦に巻き込まれそうな感覚。今どれほどの人がそういった感情に共感できるのか心許ない。けれどそんな感覚に覚えがある人なら、もしもあの時そうしなかったらと、来し方を振り返るかもしれない。破滅的に生きようとしたわけではないのに、結果としてそうならざるを得ない。そんな心理の妙を織り込み物語は進みます。 芯のない人間が渦に巻き込まれたらどうなるか。悪意にまみれた人間の末路は。身の内に宿る激情のままに行動した人間が得たものとは。劇的なドラマを展開しながらも、少しも酔うことのない冷静で残酷な筆致が、時に直視に耐えないような幾つもの人生を暴きだしてゆく。
バタイユだとか、新革命スローガンだとか。わかったようなわからないような理屈をこねくり回しかねないコムスメに、父親が「もっと小説を読め」と諭すシーンがあります。 先日「本を愛しなさい」の書評で銀の皿さんが「本を通して人を感じなさい」という名言を披露されていたが、このシーンで同じようなことを思った。理非善悪、喜怒哀楽。小難しい言葉の背後に潜むリアルな人生を、どれほど想像できているのだろうと危ぶむ父親の気持ちに共感できた。リアルな人生を、生を見据えた後に紡ぎ出される言葉の奔流がずしりと胸に響いてくる。三十年という時間の流れは伊達ではない。
吾郎のように一見無個性でいて何かが決定的に欠落した人物に、万人が共感できるとは思わない。だからこそ小説で恐る恐る覗き込むくらいがちょうどいい。最後は平和な余生を迎えたいと思うような小市民には、超えてはならないラインがある。何よりもそのことを肝に銘じた。
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