コメント・書評 |
子どもの領域を飛び出して、大人に迫り来るもの
つきこ
Oct 22, 2007 9:40:00 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★
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言わずと知れた傑作児童文学の改訳版です。二十年前のヒット曲などを聴くと、そのあまりにもゆっくりとしたメロディーに調子が狂ってしまうのですが、本書はその逆です。スピード感溢れる畳み掛けるような文章が、慣れ親しんだ物語とはいえ新鮮でした。何かにつけ気忙しい現代人にあわせた超訳かと思ったら、こっちがケストナーの地の文章だそうです。文科省推薦図書がラノベ風になって再登場とでもいいましょうか。児童文学はちょっと、という大人にも読みやすくなってます。
が、トリヤーの挿絵はありません(泣)
ケストナーといえばトリヤー。その作品にさらなる魅力を与えていた挿絵がないのは正直悲しい。そして高橋健二訳のケストナーに慣れ親しんできたせいで、こどもの本が持つ教え諭すような優しい響き。そんなものも若干薄れてしまったようで、大人とはいえ少々寂しくもあります。 とはいえその欠落を補って余りあるのが、末尾に寄せられた訳者による解説。名文です。
ケストナーは確かに子どものための本をたくさん書いた人だけれど、その視線の先には常に大人がいた。この飛ぶ教室が出版されたのはドイツにナチ政権が誕生した年。「何やってんだよ大人」多くの子どもがそう思っただろうなか、「大人ここにあり」の気概を見せた。そう、そうなんだよ。だから好きなんだよケストナー。大人になったが故にその真価に気付く。その魅力を余すことなく伝えてくれる解説から得るものは、本文に負けず劣らず多い。
酒場の勇者ばかり増えてもしょうがない。
「賢さのない勇気は乱暴に過ぎない、勇気のない賢さは冗談にすぎない」。どう考えても時局に喧嘩を売ったとしか思えない、ケストナーのこのカッコ良さ。久々に痺れると共に、もういい大人なんだけれど、いつまでたってもそうはなれない己の未熟さを反省せずにはいられない。 これはクリスマスの物語。勇気と賢さとその他諸々と。そんな色々なものを詰め込みながら、子どものそんな勇気と献身に対して、大人は正しく報いているだろうかと思わずにはいられない物語。子どもの時に読み損ねたより多くの人に届けばと、押し付けがましくも思う。
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