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風に舞いあがるビニールシート

風に舞いあがるビニールシート(文藝春秋) 森 絵都著
税込価格: ¥1,470 (本体 : ¥1,400)
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出版 : 文藝春秋
サイズ : 20cm / 313p
ISBN : 4-16-324920-6
発行年月 : 2006.5
利用対象 : 一般

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内容説明

【直木賞(135(2006上半期))】国連で難民事業に携わる里佳は、上司で元夫のエドがアフガンで死んだという知らせを受ける。そして、エドがアフガンで助けた少女のことを伝え聞き−。大切な何かのために懸命に生きる人たちの、6つの物語。

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コメント・書評

揺るぎ無い信念。
オレンジマリー
Sep 10, 2007 1:49:10 AM
評価 ( マーク )
★★★★

森絵都の直木賞受賞作だということで、以前から読みたいと思っていた。長編かと思っていたけど、6つから成る短編集である。
 最初の『器を探して』は、たった一つの器を求めて出張する弥生を要に語られているが、彼女が属するケーキ屋のオーナー、ヒロミのこだわりといったら凄まじいものである。そのヒロミは、芸能人のようなイメージが湧いてくる人物で、弥生はマネージャー的立場のようでもある。弥生は出張中に結婚という安泰と、仕事との間で葛藤を味わうがそれでも信念を貫こうとする。自分が力を添え、ラ・リュミエールの名を広めようという強い信念である。ヒロミの嫌がらせに耐えつつ、日々雑事をこなしていく弥生だ。いいように使われているだけだと周囲には映っていても、弥生は揺るぎ無い信念でヒロミの世界を必死に守ろうとしているのが凄い。
 次に展開される『犬の散歩』には心が打たれた。日常でも、飼い主の身勝手で無責任に手放されたり、虐待を受けている動物たちのニュースというのは入ってくる。まだ中学生の頃、近所の野良猫たちが一斉に、保健所の係員たちに捕まえられて保健所へ運ばれたことがあった。その時に、保健所に運ばれた猫たちは一体、どうなってしまうんだろう?と漠然と考えていたことがあっただけに、このストーリーには目を瞠ったものだ。恵利子の父親は犬嫌いだったけれど、ちょっと人気のないビビを少しずつ段階を踏んで受け入れていく姿には感動である。
 『守護神』は、学生である自分によく浸透した。多くの学生が代筆をニシナミユキに依頼し単位を取るが、そのニシナミユキは伝説的存在で居所がつかみ辛い。生徒たちは色んな情報は持っていても、事実謎である。やっとの思いでニシナミユキとコンタクトが取れた裕介だが、一度は完敗する。二度目のコンタクトで、ニシナミユキに諭された。彼女は、正当な理由があって本当に困っている学生の助力を惜しまないが、その基準は実に厳しい。だけど彼女の言っていることは的を射ているし、もっともである。最終的には裕介の内面を見抜き、問題を解決へと導くわけだが彼女が説いた金次郎―勤勉、真面目、努力…日本人の美徳であったはずのこれらを見失い、バカにしつつある今こそ、バック・トゥ・ザ・キンジロー!―は説得力がある。
 最後の『風に舞いあがるビニールシート』は世界情勢を的確に捉え、組み入れた見事なストーリーだった。戦争の真っ只中ではない国々、住む家があり、きちんとした食事が摂れる生活の中に居る人たち-私も含め―には到底想像もつかない状況であろう内戦の国にいる人たちの生活。もちろん、日本だって昔は戦争がひどく、住む家も無く、食べる物にも困った歴史があるけれども私は平和な時代に生まれ育っているので祖父母の記憶の上でしか、戦争のことは知らない。このストーリーを通して改めて、自分の環境が恵まれていることを思い知った気がした。普段は多くの不満を抱えてはいても、地雷が埋まっていない土地で、日々怯えずに暮らせている環境は恵まれていると思った。
 いくつか森絵都の書物には触れてきたが、どれも普段見えていない事柄が浮き彫りにされ、勇気付けられる作品である。今よりもずっと柵が少なく、純粋だった時代の心持であったり、本書のようにある程度大人になった状態で読んで初めて見えてくる、学べる事柄もある。本書に登場する人々はみな、揺るぎ無い信念の元に日々を過ごしているので読者としても目が覚める部分がある。そうだ、動かなくては、という気になる。
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