コメント・書評 |
祇園で花咲いた、青い瞳を持つ芸妓の半生。
オレンジマリー
Feb 14, 2007 9:43:54 AM
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評価 ( ★マーク )
★★★★★
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最も重要な点だと思ったのは、京の言葉遣いに風情がある。これはやはり、京に実際足を運んだことのある、その風景だったり言葉に縁のある、日本人にしか本当の意味での良さには気付けないのではないだろうか。 本書は主人公が語り手として、その半生を語っている形になっているが、その言葉遣いだったり今はもう廃れし古き良き日本語が溢れている。元はと言えば、これらは英文で描かれていて、これは日本語訳されたものなのだが、そこもまた驚くべき点だと言えるのではと、私は思う。翻訳者の力量に、敬服だ。 上編は、正直言って展開が遅く、多少気持ちばかりが馳せる思いをしたのだが、下編の展開には目を瞠るものがる。なんせ、主人公さゆりの最盛期が描かれているのだ。これまでお預けをされている気分だった私としては、ページを捲る指に力が入った。そして、さゆりの想い人である会長とはどうなっていくのか、心が落ち着かなかった。 初桃にいびられ続けたさゆりが、ついに表舞台に出て、そしてぐんぐんと登りつめていく。あれだけ美しく、上編では憎らしかった初桃は落ちて行く。いびられて何かを言える立場ではなかったさゆりの、リベンジである。立場は逆転し、ついには置屋の幼女になり、稼ぎ手として活躍していく。だけど、そうして瞬く間に成長を遂げるさゆりの心の中から、会長の存在だけは変わらない。だからこそ、二人の先が気になって仕方なくなる。本当に下編の最後の最後になるまで、その二人についてのエピソードは発生しないのだ。 そして戦争で祇園はそれまでの活気を失ってしまう。戦時中の話など、祖父母を通してしかリアルな事は何も知らないが、学校で習った知識と合わせて想像力を生かした。そういう背景を知るからこそ、本書は倍楽しめるものだと思う。疎開して、辛い思いをするさゆりであったり、その時代に芸妓として幼い頃から祇園で生きた女たちを思っては、胸が苦しかったりもした。 終戦してから、さゆりの人生は半ば決まりそうでもあった。だけど会長への執心から、さゆりは大胆な行動を取るが、人生とはうまくいかないもので友達だと思っていたおカボに裏切られる。手が届きそうで届かない、幸福。芸妓として花を咲かせるために失ったもの、だからこそ手に入るかけがえの無いもの。 海外生活が長くなり、日本語の深さを考え、良さが分かった頃に手元に来た本書。外国人が綿密な調査をした上で書いた作品とは思えないほどの傑作だと、本気でそう思う。 祇園で生きた、青い瞳を持つ芸妓の半生、本書はまるでノンフィクションのように巧妙に書かれている。これから読む方は、是非言葉使いであったり、古き言葉であったり時代背景を心して読んでいって欲しいと思う。 |
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