 |
永遠の出口
|
コメント・書評 |
自分が歩んできた遠い日々の道。
オレンジマリー
Jan 24, 2007 7:04:43 AM
|
評価 ( ★マーク )
★★★★★
|
何よりもまず、読み始めてからまもなく、書かれていることに対して身に覚えがあることに驚く。かつて、私も主人公と同じことを思っていた、考えていた、行動した…。今となっては色褪せてしまった幼少時代が、再びスポットを浴びて鮮やかに思い出される。そうだった、そうだったと読んでいる最中に、何度も頷けた。 そして、森絵都の表現力の深さ、巧みさに圧倒される。先をにおわす事を言っていても、先が読めないのだ。小学生の頃、卒業と言われてもピンとこなかったし、泣いてた人も少なかった。きっと、卒業という意味がどこか曖昧で、消化しきれていなかったのだろうと思う。この先当時のクラスメイトたちと会える機会がないかもしれない、と言われてもまるで現実味がなかった。そして、その瞬間は悲しみを覚えるかもしれないが、卒業して新しい生活に慣れるにつれて、その悲しみも消えていく。中学生、というと初めて制服に袖を通した。周囲の友達にも、恋をして笑っていたり泣いたりする割合が急激に増えた。ちょっとだけ大人になった気分になるけど、実は全然だったりする。そして、本書でも触れているが、暴走族に入ったり不良、と呼ばれる人たちの集団に、やたらと恐怖心を覚えた。飲酒している、と聞いただけでなんだか自分の知らない大人の世界を知っているように思ったし、喫煙しているクラスメイトがなんだか遠い世界の人のように思っていた。だけど、私自身はこの主人公と違って、彼らの世界が私が一生属することのない世界だと他人事のように思っていた。だけどこの主人公はぐれてしまう。実際、ぐれてしまった友達もいたけれど、彼らには彼らなりのぐれた理由というものが存在していたのを覚えている。そして、高校。ここまでくると、さまざまなことを、本当の意味で理解し始める。異性との付き合いだとか、卒業するという意味が明確になっていく。反抗期も迎えるし、空振りする恋だって経験する。 そういう、大多数の人が通ったであろう道が、面白く工夫されて描かれ、そして自分自身の過去を振り返りたくなったり、埃かぶってしまった遠い日の思い出だとかが突然脳裏に浮かんだりと、一冊を読んでいる間にいくつもの感情が湧き上がった。理解しやすく構成されているし、その年齢に沿ってちゃんと心境の変化も描かれているので本当に没頭してしまう。きっと、一度ページを開いたら、まるで自分の過去を照らされてる気分に陥ると思う。森絵都の能力というものを、本書から感じ取れるのではないでしょうか。読むということに飽きてしまった人でも、すんなり入り込める素晴らしい一冊だと思う。 |
|
|
| 現在の投票
はい:3人(100%)
いいえ:0人(0%) |
|
|
|
|


|