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ツアー1989

ツアー1989(集英社) 中島 京子著
税込価格: ¥1,680 (本体 : ¥1,600)
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出版 : 集英社
サイズ : 20cm / 218p
ISBN : 4-08-774812-X
発行年月 : 2006.5
利用対象 : 一般

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内容説明

記憶はときどき噓をつく。15年前、香港3日間の旅の途上で消えた青年は何処へ? ブログ、日記、手紙に展開される出来事をたどり、記憶をめぐる微妙な心理をミステリタッチで描く。

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コメント・書評

忘れてはいけないものを教えてくれる、そして男の子がわかる、かも
T.コージ
Dec 4, 2006 12:36:29 PM
評価 ( マーク )
★★★★★

●あなたは迷子かも?

 「迷子を見かけたら、帰り方を教えてあげること」

 いるんだかいないんだかわからない影の薄いボンヤリボーヤが、ラストにはなつ救済の言葉。シーシュポスだけが知っているような、あるいは全知全能の神に見つめられていることに気がついたような気持ちにさせ(てくれ)る言葉。

 みんなが忘れたものは何だったか?
 ビンボーでも浮かれることが出来たバブルの時代。
 みんなは、そこに何かを忘れてきたんじゃないか?
 いやいや、今のシアワセなあなた。
 残念ながらちょっと失敗しちゃって、後始末に忙しいアナタも。

 思い出してみてよ、忘れたものを。
 でなけりゃ、忘れそうなものを。

 当時は忘れられがちで、今は誤解されつつる主人公。
 みんなのテキトーな思いと記憶に抗しながら、それでも主人公は言う。
 迷子を見かけたら、助けてあげるんだと。

 ホントはあなただって、迷子だったんじゃないのかな?

●帰り方を教えてくれる男の子?

 登場人物は男も女もリアルで、ちょっと魅力的かもしれない。人間とそのキャラに対する著者の審美眼?が確かなことがわかる。たいていの小説は登場人物にクセがあり、良くも悪くも偏ったキャラだったりデフォルメされた人格でどうにかこうにか作品の世界を構成するのに貢献している。でも、この小説には自然な人物しか登場しない。フツーの人物と、バブル時代のエートスと、どこにでもある小さなシアワセや、ちょっとした不安や、疑いや期待を、フツーに描いて、組み立てて、これだけの魅力ある小説を書いてしまう。

 この作品のどんな紹介文とも、あるいは書評の類とも、自分の感想は違った。全然違う。そして、何と言っても、この作品は素晴らしいよ。
 人によっては劇中劇に見立てたり、春樹ワールドばりの現実と幻想が交錯する世界を見出したりするだろうが、本書をちゃんと読むと、ちゃんとリアルなのがわかるハズ。

 ボンヤリボーヤはどこにでもいるし、彼を探そうとするケイスケも実際にいそうなキャラだ。でも、この魅力は何だろう。隼主人公の、今は主婦である「凪子さん」。その夫の「てるぽん」。作品のガイドでもある「ケイスケ」。ちょっとカッコよくてどこかゲイみたいなところもありそうな「広報男」。登場人物はけっこう多い。そしてみんなどこか魅力的。

 勝手なことを言うと、特に、女性や女の子にオススメかもしれないと思った。女性は是非読んでほしい。理由はカンタンで、ここに描かれている男や男の子たちは、リアルだ。で、カッコいい。単なるカッコイイならメディアを眺めてればいるだろうが。ここに登場する男たちはリアル、なので、自分的には、どれもこれもどこかで会ったような気がするぐらいだった。男(の子)をリアルに知ることが出来る、そんな作品でもあるかもしれない。

 それから、これだけ文章がしっかりしているのに、ビジュアルを喚起する効果も抜群で、それも魅力的だと思う。登場人物や所作の視覚的イメージが的確で、シーンも景観描写そのものが目的みたいに季節の温度や風の音が聴こえそうに感じられる。

 ある種オソロシイ作家なんじゃないかと思った。そうじゃないのは知ってるけどさ。w
この書評はいいと思った・・・
 
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