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水曜の朝、午前三時  新潮文庫

水曜の朝、午前三時(新潮社) 蓮見 圭一著
税込価格: ¥500 (本体 : ¥476)
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出版 : 新潮社
サイズ : 16cm / 313p
ISBN : 4-10-125141-X
発行年月 : 2005.12
利用対象 : 一般

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コメント・書評

書いてある内容は、かなり濃いものですが、文章自体は、淡々としているというか、凛としているというか。
T.O.
Oct 15, 2006 2:55:28 AM
評価 ( マーク )
★★★★★

 Bk1の書評で興味を引かれて手にしました。45歳で脳腫瘍で亡くなった女性が、自分の死ぬ前に一人娘にテープを遺し、そのテープを起こしたもの、というお話です。ヒロインの女性は、自分がかつてとても好きだった人がいたこと、でも、ある事情でその人とは結婚できなかったこと、そんなことを死ぬ前に娘にテープに吹き込んで遺したというものです。
 その女性は、1970年に万博のコンパニオンを勤め、そこで件の彼と出逢ったという設定です。1970年という時代、まだ今よりはずっとコンサーバティヴな時代で、世間の目とか、そんなものもあった時代のお話で、これは「オールド・ファッションド・ラブソング」「古風で床しい恋愛小説」だという触れ込みでした。
 読み終えて、なかなか心に残る作品でした。設定が1970年ということですから、話はたしかに古風といえば古風です。1970年に23歳ということは、私よりは少し上の世代の話です。でも、この時代の20歳代の女の人の気持ちは、分かるな、と思って読みました。とにかく早くしかるべき人と結婚するように、という周りからの無言の圧力とか、それに抗って、何かをしたいという気持ちとか、それでいて、実はさほどのことも出来ないという現実とか。ヒロインはとても有能で頭の切れる女性ということですから、周囲の状況がよく見えて、自分にそれなりの自信もあって、それだけに、そのギャップも人一倍強く感じたのだろうと思います。
 そんな中で出あった、理想の人、その人との熱い恋、そして別れ。コンサーバティヴな時代のことですから、今風に言えば、「ポリティカリー・コレクト」ではない話が出てきます。でも、この話の中では、それはひとつの「道具」あるいは「舞台設定」なのだろうと思います。そこに重点を置いて書かれたのではなくて、自分の取った選択は、最後は自分の意思、決断によるものだったのだということが、この話の本旨なのではないかと思うのです。
 その舞台設定のひとつとして、万博がうまく使われていたようにも思いました。万博に何を見に来たかと問われて、「万博を見に来た」と答える人が多かったというエピソードも交えて、あんなふうに単純に国中が熱狂的になる、言ってみればいい意味でも悪い意味でも「純な気持ち」が支配していたときに、そういう「単純なものの考え方」を否定し、反抗しながら、ある種、そういう世間に取り込まれてもいく状態、が描かれていたのではないかと思います。
 書いてある内容は、かなり濃いものですが、文章自体は、淡々としているというか、凛としているというか。それは、ヒロインの女性が、それまでの自分の選択を、恋人との別れの事も、その後の事も、自分の選択を全て、自分の身に引き受けて、逃げないで、ごまかさないで最期を迎えたからでしょうか。
 心に残る作品でした。
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