コメント・書評 |
閉ざされた牢獄と外界の華麗な反転
久我忍
Oct 14, 2006 5:10:57 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★
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『アリア系銀河鉄道』に続く宇佐見護博士のシリーズ。 博物学者である宇佐見博士は趣味であるお茶を楽しんでいる時、彼が生きる世界とは全く別の世界に意識のみ飛ばされてしまうことがある。 この本はそんな博士の五つの飛ばされ体験先での謎とその謎が解かれるまでを綴った一冊。 収録作品は『エッシャー世界』『シュレディンガーDOOR』『見えない人、宇佐見風』『ゴーレムの檻』『太陽殿のイシス(ゴーレムの檻 現代版)』の五編。 表題作である『ゴーレムの檻』においては、1630年代のイギリスに飛ばされそこで名前も経歴も全てを消され、神に見捨てられた牢獄に囚われたままの『ゴーレム』と呼ばれる男の存在を知ることから始まる。 石で埋めつくされ、溶けた鉄を流し込んで固めた錠。幾つもの鉄の帯で封印された牢獄。だがゴーレムは到底脱出不可能とされる場所に囚われているにも関わらず、封印を解く日が近づいていると脱獄を示唆する発言をし始め、ついにそれを成功させてしまう。 ゴーレムは言う、自分はこの檻の外側に立ち、外の世界を己の中に収縮させることで外と内とは反転すると。そしてゴーレムが予告通りに脱獄したその時、彼の言葉通り彼は世界の外側に立った──。 ゴーレムが予言のように発する詩的ともいえる言葉。そしておそらく伝説となったであろうゴーレム。これはゴーレムの言葉と、彼を恐れる人々の恐怖によって始めて完成を見た謎の物語。おそらくそのどちらかが欠けたとしても、きっとこの『謎』は『謎』として完成しなかったのではないかと思う。 この作品を言葉で説明するのは難しいかもしれない。それはおそらく作者が言葉とそこから生み出される見えない力の可能性をこの作品で書こうとしたからなのかもしれない。 |
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