コメント・書評 |
現在だからこそのリアリティ
KU-
Jan 28, 2006 9:06:12 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★
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ある男が、病床で息子をさらわれた時の手記を遺して生涯を終えた。そして十二年後、かつての事件に端を発する新たな誘拐が行われる。それはコンピュータによって制御された前代未聞の犯罪だった。 この作品は1988年の作品の文庫化。 私がコンピュータを使い始めたのが10年前。その時、コンピュータはまるで夢のような道具だった。それよりも以前、叔父達の家にあったコンピュータは白い色をした不思議な箱だった。この箱の中には、いったい何が詰まっているのかとドキドキして見つめたものだ。 この作品は、コンピュータがそんな白い色をした不思議な箱だった頃に書かれている。 まだコンピュータが一般的でなかった時代に、コンピュータを駆使し、緻密に計算し尽くされた物語を考えた岡嶋二人。なんてすごいのだろうと感心してしまう。この作品が書かれた当時に読んだとしたら、あまりにも現実と離れすぎて現実感が無く、こんなにも物語りに惹き込まれることは無かっただろう。情報化社会となった今だからこそのリアリティがこの物語には存在する。 物語の完成度の高さは、コンピュータによる犯罪の緻密さだけではない。幼い頃誘拐され、その誘拐事件の背景にあるものを、父の手記から知った時、彼は何を思い、完全犯罪を考え出したのか。かつての誘拐事件と現在の誘拐事件の両方に関わることとなった人間達の思いは。彼らの感情が書かれているわけではないが、行間の一つ一つに彼らの思いがにじみ出ている。 岡嶋二人が全盛期だった当時、若すぎたのか、当時の趣味と合わなかったのか、名前は知っていても手に取ることはなかった。 こんなすばらしい作家の作品を今まで読まなかったことが不幸なのか、今になって読んだからこその感動を味わえることが幸せなのか、悩むところだ。 |
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