 |
あなたが私を好きだった頃
|
コメント・書評 |
古びたフィルムを観ているよう。
オレンジマリー
Dec 19, 2005 11:35:20 AM
|
評価 ( ★マーク )
|
私はあまり、エッセイに手を伸ばさない。しかし、先日書店へ行った時にふと、本書が目に留まり、そして少し眺めた後、レジにそれを持って行っていた。帯に書かれている「日本にもこんな感性を持っている人がいたんだ! と感動した」というセンテンスがとても気になったのだ。大きな「国」で囲った範疇だ。ページを開くのが楽しみだった。 人は誰だって、人生の中で後悔を幾度と無く経験している。あの頃に戻れたら、とかあの時ああしていれば、とか何かに躓く度に、途方に暮れた時に思ってしまう。 本書は、著者自らの経験を通して書き下ろしたエッセイである。 とある恋人たちの、出会いと道のりと、そして別れ。出逢った時には希望を抱き、途中で雲行きが怪しくなり、そして目の前から道が薄れて行って最終的に別々の道を歩んで行く決意をする。読み終えてまず思ったことは、古びたフィルム、黄ばんだアルバムを観ているようだいうことだった。 過ちというのは、大抵気づかないものだし、運良く気づけたとしても遅すぎる。だから過去に遡ってそれを修復したい、と思うことはごく自然なことかもしれない。 本書の中で、彼女は色々な人の言動に振り回され、そして恋人への不信感を募らせてしまう。感情の移り変わりがやけに自然に表現されているので感心していた。前が見えなくなってしまった時、私だっていろんな人の言葉に耳を傾け、そしてそれを鵜呑みにしてしまうことがある。人の意見は、あくまでその人個人のものだ。自力で導き出した正当な答えではない。参考にすれば問題ないのだが、人はそういう時に冷静さを欠くものだ。 語り口が敬語なので、柔らかく過去を語っているような印象を受ける。現在と過去の境界線が、きっちり引かれているのだ。 登場する洋館の雰囲気、登場人物の心理、風景などがやんわりと描かれている。なんていうか、フィルム越しにそれらを眺めているような、輪郭が掠れているような感じだ。 彼女がなぜ、そういう行動をとってしまったのか、なぜそういう状況を導き出してしまったのか、なぜそういうふうにしか考えられなかったのか、ちゃんとした根拠がある。 女性として共感できることが多い。 セピア色の記憶の断片のような本だ。 きっと私が今、失恋したてだったら思わず涙していただろう。 絶望で終わらないところが良いと思う。じっとりと終わってしまう本だったら、余計に意気消沈してしまうから。失恋の痛みから、一歩を踏み出すのに励みになる一冊と、言えるかもしれない。 |
|
|
| 現在の投票
はい:4人(100%)
いいえ:0人(0%) |
|
|
|
|


|