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落日の剣
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若き戦士の物語
真実のアーサー王の物語
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コメント・書評 |
実在のアーサー王
Leon
Jul 23, 2005 4:58:38 PM
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評価 ( ★マーク )
★★★★★
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最後のローマ軍団が撤退した5世紀のブリテン島に、好機とばかりにサクソン人達が海を渡り大挙して侵入してきた。 これに対抗するため、複数の小国に分裂していたブリテンを纏め上げたアンブロシウス王だったが、彼はまた、サクソン人の侵攻は引きも切らぬ波のようなものであることに気付いていた。 ただ、ローマ=ブリテンの文明の灯を絶やさぬがためにという一念の想いは、彼の甥である<大熊>ことアルトスにも受け継がれる。 かつてのローマ軍団が保有していたような騎馬部隊こそ今のブリテンにとって最も必要であると考えたアルトスは、僅かな部下を引き連れてガリアに渡った。 重装備の騎兵を乗せ、かつ自らも戦える軍馬を育成するためには、大陸産の大型種の種馬が必要だったのだ。 セプティマニアで催されている馬市で所望の種馬を手に入れたアルトスは、それらの馬と同様に彼の<騎士団>にとって欠くことの出来ない存在となるペドウィルをも見出した。 ガリアの種馬を元として増える軍馬に併せて、アルトスの<騎士団>もまた次第に増強され、遂にはサクソン人に決定的な打撃を与えるべくバドン山の麓で決戦の火蓋が落とされるのだが・・・ 本書は、アーサー王伝説の骨幹のみを残して、後の時代の修飾と思われる部分をそぎ落とした一部架空の歴史小説であり、マーリンや湖の貴婦人といった幻想的な登場人物などは排除されている。 伝説の中での英雄王アーサーは、バドン(ベイドン)山の戦いでサクソン人の侵略を退けブリテンに平和な時代もたらしたとされているが、本書の主人公アルトスもまた、一時的にではあるにせよ平和なブリテンを実現すべく遠征に次ぐ遠征に明け暮れる。 彼を突き動かすのは、キリスト教に影響を受けた騎士道精神などではなく、ローマ帝国領時代の繁栄を知る者として絶やしてはならじと考えている文明の灯を守る義務感なのだが、このような登場人物の造形以外にも著者の歴史に対する知識の深さが随所で見て取れるのが本書の面白みの一つだ。 例えば、<騎士団>はその習いとして、兜や鎧の留め金に徽章となる何らかの花を付けることになっているのだが、ベドン山の会戦に際してアーサーが選んだ花はフランスギク(マーガレット)だった。 著者はこの何気ない一場面にとても多くの意図を込めている。 フランスギクは聖母マリアに捧げられた花の一つとして象徴性を持つらしいのだが、後の史籍の中においてはベドン山の戦いに赴いたアーサーの甲冑に聖母マリアの意匠が施されていたとされている。 おそらくは修飾されているであろう現代に伝わる華美な装束を、歴史的な眼力で剥ぎ取ってリアルなアーサーの姿を現出させているばかりか、更にフランスギクが古い神々の一柱である<白い女神>の象徴であったことにも目をつけ、キリスト教化過渡期の複雑な時代に部族や宗教の差を越えてリーダーシップを発揮した”実在のアーサー像”に見事に迫っている。 未だに様々な翻案や映像化が試みられ続けているアーサー王伝説だが、それというのも、その中に物語のエッセンスが凝縮されており、時の変遷によっても変わることのない人間の魂の琴線に触れるものがあるからだろう。 そのような物語の命脈を損なうことなく、見事に歴史小説化した本書を読むと、著者のアーサー王伝説への愛着と、引いては自らの生国に対する強い愛情が感じられる。 |
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