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王狼たちの戦旗  上  氷と炎の歌

王狼たちの戦旗(早川書房) ジョージ・R.R.マーティン著
岡部 宏之訳
税込価格: ¥2,940 (本体 : ¥2,800)
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出版 : 早川書房
サイズ : 20cm / 485p
ISBN : 4-15-208597-5
発行年月 : 2004.11
利用対象 : 一般

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内容説明

国内に四人の王が入り乱れ、今や七王国全土は混沌に覆いつくされた。更に海の向こうでは、古代王朝ターガリエン家の末裔が玉座の奪還に向け力を蓄えつつあった…。ローカス賞ファンタジイ長篇部門連続受賞のシリーズ第2部。

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コメント・書評

斬新なスタイルのエピック・ファンタジー巨編
Leon
Jan 3, 2005 11:31:00 PM
評価 ( マーク )
★★★★★

長大な登場人物紹介とも見えた前作「七王国の玉座」から、一気に物語が動き始めた。
故ロバート王の(名目上の)遺児であるジョフリーを立てて鉄の玉座に据えた摂政女王サーセイは、父親タイウィン・ラニスターの肝煎りとあって仕方なく実弟ティリオンを「王の手」として受け入れ、首都キングスランディングの防備を固め“反逆者”達の動静を見守る。

ロバートの弟の一人であるレンリー・パラシオンは、反ジョフリーを唱える南方諸侯の殆どを束ねて、キングスランディングに駒を進めるが、これに納得行かないのがレンリーの兄であるスタンニス・パラシオンだ。

ドラゴンストーンで兵を募ったスタンニスは、新興宗教“火の心臓”ルラーの女司祭メリサンドルを軍議に加えるようになり、彼女の予言に従ってレンリーの軍団が駐屯しているストームズエンドに船団を集結させ弟との対決に臨む。

一方、今でこそ「七王国」の一つに数えられてはいるものの、長い独立の歴史を持ち、古来からの神を崇めるウィンターフェルの若き領主ロブ・スタークは、北の諸侯を率いて「北の王」を名乗り、父親の復讐と人質となっている妹達の奪還をかけてラニスター家と対決の姿勢を取りつつも、同盟相手を模索する。

四つ巴の格好となった「鉄の玉座」を巡る王位争奪戦ではあるが、この四人の“自称”王が、一人として主人公となっていないところがユニークだ。

本シリーズは、架空歴史における「戦記」のような印象のある物語だが、視点人物となっているのは「戦記」の中においては脇役と呼んでも差し支えの無い人々ばかり。

前巻から引き続き採用されている視点人物もそうだが、新たに加わったサー・タヴォスなどはスタンニス・パラシオンに仕える一介の下級騎士に過ぎない。

その彼が本作中でも大きな部分を占めるスタンニンス勢の動静を語る唯一の人物というのは妙な気もするが、これは全ての勢力について言えることだ。

架空歴史であるから、「氷と炎の歌」について年表を作ることが出来ると思うが、その年表に名の現れる王者のような主役格の視点で俯瞰すれば単なる国取り物語に終わってしまうだろう。

作者は敢えて視点を“臣下=タヴォス”や“母親=ケイトリン”などの脇役に置くことで読者に訴え掛けるリアリティを醸し出し、「国取り物語」に終始しない作品を生み出そうとしているようで、それは確かに成功していると言える。

故ロバート・パラシオンに滅ぼされたターガリエン王家の遺児デーナリスにも「鉄の玉座」を要求する権利があり、「年表」に名前が載りそうな人物ではあるが、視点人物として採用されているのは未だ遠い異国の地に居るため脇役扱いということなのだろう。

架空ではあるものの、実際の歴史を模した部分も多く、北方の蛮族の侵入を阻む“壁”はイギリスのハドリアヌスの壁に、ティリオンによる対パラシオン勢の秘策である「鉄鎖」はビザンツ帝国による金角湾封鎖にヒントを得ているようだが、単に模倣するだけでなく趣向を凝らした活用をすることによって大いに愉しませてくれた。

特に「鉄鎖」が絶妙なタイミングで巻き上げられてからの一連の合戦場面は本作中の大きな見所となっている。

また、「多数人物視点」という斬新な技巧を用いる一方、馬上槍試合に集った騎士達の装具を細かく描写してみたり、艦隊に含まれる船名の一つ一つを列挙するなど、古来ながらの戦記特有の要素を踏襲することによって、自然な感じで作品全体に風格が備わっている様子も好ましい。
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