コメント・書評 |
色褪せない傑作−プラチナ・ファンタジイ−
Leon
Jan 24, 2004 1:37:00 PM
|
評価 ( ★マーク )
★★★★★
|
才気あふれる若き魔法使いオーブリイは、師匠シリルの勧めに従って変身術の大家である老魔法使いグレイランドンに師事することを決めた。 グレイランドンの館に着いたオーブリイを迎えたのは、変身術師の妻リリス。 変身術師とは不釣合いな若さで独特の美しさを持つ彼女は、何事にも全く関心を示さない風変わりな女性で、加えて館で働く二人の人物−家事を取り仕切る老婆アラクネと、狩りなどの力仕事を受け持つ大男オリオン−もまた、普通ではない何かを感じさせるものがあった。 弟子入りは果たしたものの、宮廷などに呼ばれることの多い変身術師は外出がちであり、また意図的にオーブリイに対して知識を付与することを惜しんでいるようでもあった。 師の不在によって、自然リリスと二人きりの時間の多いオーブリイは、次第にリリスに心を寄せるようになるのだが、リリスのほうでは関心が無く、その無関心は夫に対しても、人間社会全般に対しても全く同様。 リリスは愛情も友情も全く理解できない女性だった。 才能の助けもあり、ほとんど独学によって変身術の真髄を身につけはじめたオーブリイは、やがてグレイランドンによって過去にリリスに成された惨い仕打ちを知ることになるのだが…
ハヤカワ文庫FTの創刊25周年を記念して集められる文庫内叢書「プラチナファンタジイ」の記念すべき第1回配本。 処女長編だというが、かのピーター・S・ビーグルによって激賞されたというのも頷ける、憂いを含んだ美しい物語だ。 愛するリリスの元を離れ、危険を伴う魔術の実践によって彼女を理解しようとするオーブリイと、そのことによって彼を失ってしまうのではないかと不安に陥ったリリスが初めて感情を得るという、一見皮肉なすれ違いは、目には見えない「賢者の贈り物」を生み出す。 マルチ・エンディングとも言えるエピローグの存在は、ファンタジーの作り手にも読者にも必要な「自由な想像力」を象徴しているように感じた。 世に名の知られた特定のファンタジー作品を思い浮かべて「私はファンタジーは苦手」と決め付けてしまっている読書人が居るならば、ぜひ手にとって貰いたいと思う。 |
|
|
| 現在の投票
はい:4人(100%)
いいえ:0人(0%) |
|
|
|