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ダムと日本  岩波新書 新赤版

ダムと日本(岩波書店) 天野 礼子著
税込価格: ¥777 (本体 : ¥740)
出版 : 岩波書店
サイズ : 18cm / 231p
ISBN : 4-00-430716-3
発行年月 : 2001.2
利用対象 : 一般

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コメント・書評

21世紀、日本のNGOが羽ばたくために
半久
Dec 11, 2003 2:01:00 AM
評価 ( マーク )
★★★★

本書の内容紹介は、問題点も含め他の評者さんから的確なものが出ているので、少し違った角度から。

2003年12月の報道によると、群馬県で建設中の戸倉ダムから、埼玉県が撤退を表明した(東京・千葉も撤退姿勢)。事業は中止となる公算が高まってきた。もし、建設中のダムが断念されるとしたら、国・水資源機構が手がけるものとしては、日本初のケースだという。時代は確実に変わりつつある。
NGOの立場から、魁の一人として、こうした時代の流れを作ろうとした天野礼子氏の功績は大きいと思う。本書は、天野氏とそのお仲間たちの奮戦記として読んでも興味深いと思う。それと、公共事業が軒並み見直される現代にあって、河川行政が遅まきながらどの方向に転換し始めたかについての、歴史の証言としても。
それにしても、天野氏の不屈の闘志には頭が下がる。アメリカへのダム視察途上の飛行機事故で命を落としかける(医者には《「あなたのように強い人を見たことがない」》と言われたそうだ)。体に障害がおありなのに、建設省(当時)前でハンガーストライキを行い、意識を失う。
かといって硬直した運動姿勢ではない。「市民運動」は政権与党を敵視しがち(もしくは、そう目されがち)だが、天野氏は評価すべき人物は評価し、権力者に取り込まれない態度で「お付き合い」していく。
戦術も柔軟である。古典的なシンポジウムやハンストだけでなく、長良川での《カヌー・デモやパンダ作戦といった明るく楽しげな(運動の中心にいる人間はつらいことばかりなのだが)行動》や、「公共事業コントロール法案」提出の試みまで、日本のNGOもかなりの力をつけつつあることを伺わせる。それは次のような「思想」に裏付けられる。

《国会議員会館裏の星陵会館で行なった第一回シンポジウムには、九州の果てから山下弘文さんが駆けつけてきて、長老として主催者挨拶をした。(中略)
 「私たちにとって一番大切なことは連帯だ。日本のNGOの弱点は、“小異を捨てて大同団結”ができないことである。公共事業の追求は、私たちが足元のそれぞれの地でがんばってきて、ようやくこうして「公共事業コントロール法案」を作るに至っているが、まだこれからこれを成立させねばならない。その時、何が必要か。それは私は“小異を捨てないで大同団結する”ことであると考える」
 私も、日本のNGOについては常々、山下さんと同じ意見を持っていた。自分自身も含めて環境問題を論ずる人々は、細部にこだわるあまり、他人と折りあわないことを良しとするところがあるからだ。
 “小異を捨てず”。なんて素敵な言葉だろう。これは「多様性」を認め合うという精神だ。「生物多様性」を行政や企業に求める私たちが、一番大切にすべき言葉だろう。
 二〇〇〇年七月、山下弘文は彼岸に行ってしまったが、彼が教えてくれた“小異を捨てないで大同団結する”ことが今でも、「公共事業チェックを求めるNGOの会」の基本精神である。》

私もこの「基本精神」を持ち続けていれば、日本のNGOの未来は明るいと思う。

環境問題のみならず日本の行く末は、政治家や官僚、あるいはマスコミや学者らだけに任せていていいものではない。規制緩和だからということで、民間企業に丸投げすれば済むものでもない。NGO・NPOや市井の個々人とのコラボレーションが重要である。それに気づいた企業人や政治家、官僚も増えてきているようだ。本書は、そんな息吹を感じさせる好著である。
なお、関連書として『ダムはムダ』もお勧めだが、絶版なのは残念。
本書で著者の「夢の中」に登場する、室原知幸氏の歴史的なダム反対闘争は『松下竜一その仕事 15 砦に拠る』に詳しい。壮絶なる記録文学の傑作である。
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