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博士の愛した数式

博士の愛した数式(新潮社) 小川 洋子著
税込価格: ¥1,575 (本体 : ¥1,500)
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出版 : 新潮社
サイズ : 20cm / 253p
ISBN : 4-10-401303-X
発行年月 : 2003.8
利用対象 : 一般

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内容説明

【日本数学会出版賞(第1回)】【全国書店員が選んだいちばん!売りたい本本屋大賞(第1回)】【読売文学賞(第55回)】この世界は驚きと歓びに満ちていると、博士はたったひとつの数式で示してくれた−。記憶力を失った天才数学者、と私、阪神タイガースファンの息子の3人の奇妙な関係を軸にした物語。『新潮』掲載作。

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コメント・書評

80分に秘められた永遠。
オレンジマリー
Nov 10, 2003 11:45:00 AM
評価 ( マーク )
★★★★★

 土曜の午前中、たまたま「王様のブランチ」を観ていた。ブックランキングやムービーランキングが発表されるので、心待ちにしてテレビの前に座っていた。‘哲っちゃんのブックナビ’というコーナーで本書が紹介され、私は書店に走った。数学が大の苦手で数式なんて見るのも嫌なはずなのに私はレジに本書を持って行った。

 読み始めから素直に入り込め、好印象を受けた。老いた数学者の家に派遣された家政婦の視点から語られていて、10歳の息子ルートと阪神タイガースが物語の中でも重要なポジションに置かれている。野球に疎く、数式を嫌う私がこんなにも夢中になれた、その事実は少なからず私をうろたえさせた。逆に言えば、知識のない人でも心から楽しめる作品だということ。本書を開いてわずか3分、本書に魅了された。
 電話番号、足のサイズ、誕生日、出生時の体重、身近に存在する単なる数字が博士によって美しい数字に変えられる。道端の小石を磨いたら宝石になった、くらいの驚きが私の心には在った。素数、平方根、無理数、それらの用語は私の日常に触れず、物置のダンボール箱にひっそりとしているに過ぎなかったのだが、褪せず、朽ちず、葬られた訳ではなくただ眠っていることを知った。もう数学をやろうとは思わないが、こうして物語となって輝いている様子を見ると、不思議な愛着が芽生える。
 また、80分経つと記憶が消失してしまう、という設定も感動を引き出す。家政婦が買い物に出かけて80分以上経過して戻ると、初対面であるのと変わらなくなるというのもなんだか哀しい気がする。辛かったり傷ついたことを80分経てば忘れてしまうというのは良いだろう。けれど一緒に楽しく過ごし、笑ったことも教わったことも忘れてしまうというのはとても哀しい。記憶力を失ったその日から博士の思い出は止まり、毎日が新しく、記憶に残ることはない。
 見過ごしがちな幸福を、博士は数式で証明する。温かみを教えてくれる。永遠という響きの美しさ、神様の手帳という光みたいな言葉、博士の決して人を否定しない姿勢、どれも素晴らしい。人への感謝の情、祝福する心を尊ぶという精神、見習いたい。
 円周率の他に永遠に続く数式があるとは知らなかった。さも当然のように辺りに散っている数字の見方が明らかに変わった。宇宙の果てで、神様の手帳の上で自分が知らないうちに数式はしっかりと繋がっていると考えると、とても神秘的に思える。数字を目にするたびに、本書を思い出す気がする。永遠と数字を魅せる素敵な一冊だ。
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