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デッドエンドの思い出

デッドエンドの思い出(文芸春秋) よしもと ばなな著
税込価格: ¥1,200 (本体 : ¥1,143)
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出版 : 文芸春秋
サイズ : 20cm / 229p
ISBN : 4-16-322010-0
発行年月 : 2003.7
利用対象 : 一般

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内容説明

人の心の中にはどれだけの宝が眠っているのだろうか−。時が流れても忘れえぬ、かけがえのない一瞬を鮮やかに描いた傑作短編集。書き下ろし4編に「ともちゃんの幸せ」を加えた5つのラブストーリーを収録。

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コメント・書評

一面の金世界。
オレンジマリー
Nov 5, 2003 10:59:00 AM
評価 ( マーク )
★★★★★

 深々と雪が降った時「一面の銀世界」と表現するだろう。雪は、それがたとえ闇の濃い深夜でも、街灯より明るく道を照らす。それはもう、目を細めてしまうほどに。その光景は関東に住む私にとって別世界のようだ。
 書店で本書を見かけたとき、真っ先に思い浮かんだのは「金世界」という言葉だった。私の脳が勝手に作り上げた言葉だが、この表紙に相応しいと妙に納得してしまいました。本書が発売された時に購入していたのだが、わざと読まずに本棚で眠らせていた。秋が深まるのを、私はじっと待っていたのだ。

 一言で言うとやってくれたな感に浸れます。深い憂いも、底のない哀しみも、蝋燭の火程度の温かみによって救われる。そんな事を真剣に考えています。
 自分が死んだことにも気付かない老夫婦、命の灯火が消えてしまっても静かに日々を送っている。それって幸福なことかなって思います。痛みも苦しみもなく、心臓が停止してしまったことにも気付かない。
 偶然は奇妙だ。ある時ある一定の条件下である行動をとったためにああなってしまった、そういう経験は誰でも体験しているのではないでしょうか。それを辿っていくと、不思議な糸みたいなものが見えてきたりする。絡まっているようで、絡まっていない。
 子供の頃の記憶というのは、結構重要だ。あまりに辛いことはトラウマになってずっと残るし、嬉しいことは熱を持ってずっと残る。「あったかくなんかない」にあるように、私も時折民家の明かりに温かみを覚える時がある。人々の日常を照らす小さな幸せ。
 口では説明しようのない事って、あるだろう。一人でいても、一人だと思えない時、私はたまにある。そういう時、亡くなった祖父母を思い出す。私の思い込みで、勝手に想像しているだけだとしても、淋しいと感じないならそれで良いと思う。一人ぼっちじゃない、そう思えることって励みになる。
 中でも一番印象的だったのはタイトルにもなっている「デッドエンドの思い出」だ。読み終わった時、小さな球体だった温かみが膨らんで、そわそわした。心から信じるって、なかなかできないことだと思う。純粋に人を信じられる人ってすごいなと感心する。だからミミが音信不通になった恋人をいつまでも信じて待っているということ、私は真剣に見守っていた。西山くんの話は興味深かった。物事を違う角度で見る柔軟性、マイナスをプラスに変える力となる。乱れ荒れた状況を温和におさめられる、そんな友達が欲しいと思いました(笑)。幸福の象徴として自分の心の中に現れる光景、どんな光景なのかなと思い本を閉じた。案外日常の光景だったりして。
 これだけじんわりと心に沁みた本は久しぶりだ。心の奥底に変わらず在る哀しみや淋しさにスポットライトが当たり、温められた。うまく言えないが不思議な気持ちです…。
 
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