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萩家の三姉妹

萩家の三姉妹(白水社) 永井 愛著
税込価格: ¥1,995 (本体 : ¥1,900)
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出版 : 白水社
サイズ : 20cm / 162p
ISBN : 4-560-03529-6
発行年月 : 2000.11
利用対象 : 一般

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内容説明

【読売文学賞(第52回)】地方都市の旧家に育った鷹子・仲子・若子の萩家の三姉妹は、異なる事情のもとに、男たちとのあいだで問題を抱えていた。四季の移ろいのなかで織りなす、それぞれの不倫と恋愛を描く戯曲。

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コメント・書評

チェーホフの『三人姉妹』に想を得て、今、ジェンダーを真正面から、しかも笑いにまぶせて問う新作戯曲
大笹吉雄
Nov 27, 2000 6:15:00 PM
評価 ( マーク )


 見る側は圧倒的に女性が多いにもかかわらず、作り手は圧倒的に男性の手によっているのが、現代芸術の一般的なあり方である。文学、音楽、美術、無踊、映画、そして演劇もまたしかりだ。

 中で女性の劇作家、演出家として気を吐いているのが、二兎社というプロデュース体を主催している永井愛で、近年の活躍はまことに目を見晴らせるものがある。
 まず九五年に『パパのデモクラシー』で芸術祭の大賞を受賞したのを皮切りに、九六年の『僕の東京日記』が紀伊国屋演劇賞を、九七年の『ら抜きの殺意』が第一回鶴屋南北賞を、この戯曲と同年発表『見よ、飛行機の高く飛べるを』で芸術選奨文部大臣新人賞を、九九年の『兄帰る』で岸田国士戯曲賞をといったように、ほぼ毎年大きな賞を受けている。つまりは句だ。
 その永井愛の最新作が本書で、このほど上演されたばかりだが、舞台が今年の収穫だったのみならず、読む戯曲としても十分に楽しめる。
 もっとも、「読む戯曲」という表現はいささか変だ。そもそも文学としての戯曲は、読むものにほかならないからである。が、あえてこういう言い方をしたのは、戯曲は読みにくいという一般的な通念があり、これが読書人をしてさえも、戯曲書に手をのばすのをためらわせているかに思えるからにほかならない。が、チェーホフの『三人姉妹』を下敷きにした本作は、戯曲は読みにくいという「偏見」の持ち主も、大いに楽しめるに相違ない。

 先に母を亡くした上に、父の一周忌を迎えた地方都市の旧家である萩家。独身の長女で、大学でフェミニズムを講じつつ家を守っている鷹子、歯医者と結婚し、二児の母である次女の仲子、三女のフリーターで、生活を鷹子に頼っている若子。これが萩家の三姉妹。

 鷹子は大学の同僚で、ジェンダー論者の本所と不倫したものの、本所の妻の出産で、恋にシラケて別れる。が、本所は鷹子に強い未練を感じている。仲子は幼馴染みの脱サラ農民である日高と再会して、恋に落ちる。日高の妻の文絵はガンの疑いで子宮切除の手術を受けて以来精神が不安定で、女らしさを強調する厚化粧をして、インターネットで童話を書きつづけている。若子は何をしていいのかわからないまま、出入りの家具職人二人と次々と肉体関係を持つ。五十年も萩家に仕えている品子は、姉妹の父とただならぬ関係にあったらしい。
 こういう人物の日常が喜劇仕立てで展開するが、軽い表層の下から徐々に顔を見せるのは、女らしさや男らしさとは何であるかという重く、アクチュアリティーのある問題で、その白眉がフェミニズム論者の鷹子とジェンダー論者の本所が、かつての恋の実態を共同研究するくだりだ。爆笑ものであると同時に、その進行中に、トレンディーな研究者であるはずの二人の、深いところで既成の概念にとらわれている姿が浮上する。のみならず、仲子や若子も生き方において、それぞれ進退に窮する。不透明な将来。これがチェーホフの感じていた世紀末の不安と重なり、まさに二十世紀の末にいる作者の、今を見る視線にもなる。快調な仕上がりだ。 (bk1ブックナビゲーター:大笹吉雄/演劇評論家 大阪芸術大学教授 2000.11.28)
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