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  • みんなの評価 5つ星のうち 3.5 356件
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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:2011.1
  • 出版社: 新潮社
  • サイズ:20cm/147p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:978-4-10-303232-8

紙の本

苦役列車

著者 西村 賢太 (著)

友もなく、女もなく、一杯のコップ酒を心の慰めに、その日暮らしの港湾労働で生計を立てている十九歳の貫太。或る日彼の生活に変化が訪れたが…。こんな生活とも云えぬような生活は、...

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苦役列車

税込 1,320 12pt

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商品説明

友もなく、女もなく、一杯のコップ酒を心の慰めに、その日暮らしの港湾労働で生計を立てている十九歳の貫太。或る日彼の生活に変化が訪れたが…。こんな生活とも云えぬような生活は、一体いつまで続くのであろうか—。昭和の終わりの青春に渦巻く孤独と窮乏、労働と因業を渾身の筆で描き尽くす表題作と「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」を収録。第144回芥川賞受賞。【「BOOK」データベースの商品解説】

【芥川賞(144(2010下半期))】友もなく、女もなく、1杯のコップ酒を心の慰めに、その日暮らしの港湾労働で生計を立てている19歳の貫多。或る日、彼の生活に変化が訪れたが…。表題作ほか全2作品を収録。『新潮』掲載をまとめて書籍化。【「TRC MARC」の商品解説】

収録作品一覧

苦役列車 5−108
落ちぶれて袖に涙のふりかかる 109−147

著者紹介

西村 賢太

略歴
〈西村賢太〉1967年東京都生まれ。「暗渠の宿」で野間文芸新人賞、「苦役列車」で芥川賞を受賞。ほかの著書に「どうで死ぬ身の一踊り」など。

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書店員レビュー

ジュンク堂書店ロフト名古屋店

自分の身の置き場が見...

ジュンク堂書店ロフト名古屋店さん

自分の身の置き場が見出せず、出口の見えない暗いトンネルの中をトボトボ歩いていた20代前半。そんな私の過去を、この小説は思い出させてくれる。
水が流れて行くように、居心地の良い場所を求めて流れて行くが、気がつくとそこは自分の求めていた場所ではない。ずっとひとりが気楽で良いと思うが、ふと淋しくなる。この主人公には、誰もが持っているであろう、人間の弱さがにじみ出ている。しかし、何とも愛しく思えてしょうがない。私は自分の弱さをひた隠しながら日々生きているが、この小説のように自分の弱さを曝け出されると、暗い暗い話なのに眩しくすら思えてくる。そう、彼には不思議な魅力があるのだろう。
文芸 清水

みんなのレビュー356件

みんなの評価3.5

評価内訳

紙の本

苦役列車を読んだ。頭を真っ白にして読んで欲しい。

2018/11/06 00:12

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る

文藝春秋の芥川賞全文掲載を楽しみにしていた。
受賞者インタビューや選評が載るからだ。しかも今回は二作品。
こんなにお買い得な号はめったにない。
加えて、大物の呼び声の高い朝吹真理子さんのきことわと、
既に怪臭を放つ西村賢太さんの苦役列車とあれば迷うまでもない。

全部読んでみて、私の選択は苦役列車だ。
オーソドックスな私小説だ。

読書量が多い方は、きことわの方が面白いのかもしれない。
選者がこぞって褒めているし、丸谷才一さんも新聞に
書評を寄せていた。感覚面でかなり優れた作品とのことだが、
私のレベルでは掴みきれなかった。
多分、修行不足なのだが何かの参考になれば。

さて苦役列車の前評判だが、全く大変なものだ。
フリーターの星だとか、久しぶりの破滅型作家の登場だとか
散々な褒め言葉だ。本人も受賞の電話が遅いから
風俗に行くところだっただの、傾注する破滅型作家の
全集発行に芥川賞の賞金を全額突っ込むだの、
とんでもない臭いをまき散らしている。

事前の紹介だけでは、嫌悪感と高揚感に分かれると思う。
これに反して、作品は至ってまともだ。残忍な暴力や
クスリは出てこず、日雇い労働者の生き様を描く物語だ。

主人公は貫多。
ねたみ、そねみに翻弄される自分の狭量を罵りながら、
どぶ汁をすするように生きる。そんな貫多に、日雇い現場で
日下部という同年代の男が声をかけてくる。
日下部の爽やかさは貫多の目を通してまばゆく映る。
二人の友情を通して、貫多は自分自身を深く認識していく。

底辺を生きる人の生活の怖いもの見たさかと思ったが、
まるで違う。貫多は、貫多のものさしで生きている。
幸せかどうかは自分で決めることだ。
そのことを再認識した。

日下部によって勇気づけられた心を、貫多がどのように
つないでいくのか。子供っぽい逡巡を繰り返すが、
そんな貫多の生き様から目が離せなくなってしまう。

「どうで死ぬ身の一踊り」「小銭をかぞえる」に続く作品だそうだ。
タイトルの付け方が抜群にうまい。

すげえや。この一言だけでいいのかもしれない。

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紙の本

ひさしぶりに「おもしろい小説」を読んだという充実感が残った。

2011/02/23 15:00

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:CAM - この投稿者のレビュー一覧を見る

「月刊文藝春秋」3月号で読んだ。芥川賞2作品が読めて860円はたしかに安い。ただし、私が読んだのはこの作品だけ。朝吹真理子氏の作品は選評を読んだだけ。週刊文春で阿川佐和子さんとの対談も読んだが、作品は最初の1頁ぐらいを読んだだけで直ちに残りを読もうという気は起きなかった。

 それに反して、西村賢太氏のこの作品は、最初の3行目当たりから引き込まれた。あまり小説、特に純文学系のものを読まない私としては、ひさしぶりに「おもしろい小説」を読んだという充実感が残った。不思議な魅力を持つ文体であり、作品だと思う。

 最初の3行目あたりとは以下のような書きっぷりである。
>しかし、パンパンに朝勃ちした硬い竿に指で無理矢理角度をつけ、腰を引いて便器に大量の尿を放ったのちには、そのまま傍らの流し台で思いきりよく顔でも洗ってしまえばよいものを、彼はそこを素通りにして自室に戻ると、敷布団代わりのタオルケットの上に再び身を倒して腹這いになる。

 たしか、石原慎太郎氏は「太陽の季節」で、ナニで障子を破る話を書いていたと思うが、それを思い出した。1955年に発表され1956年に芥川賞を獲得したこの作品は、Wikipediaの解説を見ると「裕福な家庭に育った若者の無軌道な生き様を通して、感情を物質化する新世代を描く。当時としては、発表されるや文壇のみならず一般社会にも賞賛と非難を巻き起こした作品で、そのストーリーが倫理性に欠けることや誤字があることで、芥川受賞の際にはある選考委員がそれらの問題を口にした。」としている。 本作品は「裕福な家庭」とは対極的な舞台で展開されるのだが、「感情を物質化する新世代」という点に関しては共通性を見出せるだろうか。

 文藝春秋誌掲載の各氏の「選評」が読ませるのだが、その石原慎太郎氏は「この作者の『どうせ俺は――』といった開き直りは、手先の器用さを超えた人間のあるジェニュインなるものを感じさせてくれる」と評している。 石原氏は昨年も西村氏の前候補作「小銭を数えて」を評価したものの孤軍奮闘に終わったそうであるが、三島由紀夫氏が野坂昭如氏を評価したことを連想した。

 林真理子氏は友人に「貴女は小説がうまくなければ単なるデブ」と言われたそうであるが、本作の著者も「小説が書けなければ、単なる中卒のろくでなし」とも言われたであろうから、人間の「能力」とは不思議なものだと思う。多くの人間はたとえ秘められた能力を持っていたとしても「天の時、地の利」に恵まれないまま人生を終えるのだろうが。
 

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紙の本

時代が芥川賞をつくるのか、芥川賞が時代をつくるのか

2011/08/17 09:32

6人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 第144回芥川賞受賞作。ですが、私にはこの小説の何が面白いのかよくわかりませんでした。
 作者の西村賢太さんは私小説作家にくくられるそうです。ですから、受賞作となった『苦役列車』も自身の青春期の苦労話とでもいえばいいのでしょうか、袋小路のようなみっともない生活がくだくだと描かれています。
 こういう作品を読むと、いったい小説とは何だろうかと考えこんでしまいます。この物語で誰が救われるのでしょうか。

 選考委員のひとり高樹のぶ子さんはこの作品についてこう書いています。「人間の卑しさ浅ましさをとことん自虐的に、私小説風に描き、読者を辟易させることに成功している」と。
 どうして「読者を辟易させる」ことが必要なのかわかりません。さらにいえば、ここに描かれているのは「人間の卑しさ浅ましさ」ではなく、貫多という「馬鹿のくせして、プライドだけは高くできてる」19歳の青年の持つ「卑しさ浅ましさ」にすぎません。そして、けっして貫太は現代の代表的な青春像でもないのです。
 高樹委員はさらにつづけて「卑しさと浅ましさがひたすら連続するだけで、物足りなかった」と書いていますが、他の委員にいたっては西村さんの術中にはまった感がないでもありません。それこそ西村賢太さんの文学の魅力でもあるのですが。

 たとえば、この作品が東日本大震災のあとの芥川賞の選考対象であったら、果たしてこのような青年の描いた作品が選ばれたでしょうか。いかほどに文章が達者であったとしても受賞には至らなかったように思えます。
 芥川賞が時代を作ることはないとはいえないですが、時代が芥川賞をつくりだすということは確かにあります。それが不幸かどうかは、今後の作品を西村さんがどう創りだしていくかにかかっているのではないでしょうか。

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紙の本

突き抜けた卑俗

2011/09/10 01:32

10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yjisan - この投稿者のレビュー一覧を見る

芥川賞受賞の瞬間の様子を取材で聞かれて「自宅で待機していたが、連絡が来ないので、そろそろ風俗に行こうかなと思っていた」と平然と語る反骨精神。「震災、原発という大きな問題は、西村さんのような私小説家にも影響を与えますか」と尋ねられて「全くないです。被災地に足を運んでる作家も、言葉は悪いけど、ネタ取りにいっていると思うんですよ。しょせん、東京から出版社のカネ貰って行ってるんですから。ネタ取りと、ポーズと自己満足のために被災地に行っているとしか僕には見えないですね」と答えるふてぶてしさ。
そんな西村賢太自身、無頼派のポーズをしている偽悪者なのだが、これだけキャラが立っている私小説家は久々で、それが作品の魅力にもつながっている。


父親が性犯罪者、中卒、家出、人足で日銭を稼ぐ、常に空腹で孤独で、夢も希望もない。その日暮らしだった作者自身の陰鬱で自堕落な青春時代に材を取った表題作のほか「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」を収録。

退屈で悲惨な毎日を反復するだけだった北町貫太の生活は、日雇い先で出会った日下部正二という専門学生との交流によって好転していく。だが卑屈さの裏返しとしての攻撃性と、愛されてこなかったがゆえの甘えによって、せっかくの友情を自らぶち壊してしまう。殻を破って他者と親しくなったことで、相手を傷つけ自分をも傷つけ、かえって一層、寂しくなってしまうという展開は、自業自得とはいえ痛々しい。


劣等感、怠惰、嫉妬、憎悪・・・自身の醜さをさらけ出すのは私小説の基本であるが、芥川賞受賞の表題作はそれだけの作品ではない。日本の私小説はどこか露悪趣味なところがあって、それが鼻につくのだが、作者は貫太の愚行と自滅をユーモラスに描くことで、この問題を巧みに回避している。要するに貫太を戯画化することで自己を相対化している。
貫太は周囲の人間全てに迷惑をかける問題児であるが、彼には少しも悪意がない。単に身勝手なだけであり、その幼稚さが読者から見ると一種の愛嬌となっている。いわば「憎めないダメ人間」であり、作者は若き日の自分をそのまま描いたのではなく、人物造形に工夫を凝らしたものと思われる(そして世渡り上手の日下部との対照によって、貫太の不器用さが殊更に際立つ仕掛けになっている)。この辺りの匙加減が絶妙である。

また、実体験を基にしている有利を差し引いても、「下流」な生活描写が非常にリアルで唸らされる。特に性欲と食欲に関する記述が異様に詳細で、何とも下品な文章なのだが、卑俗に徹しているからこそ笑えるのである。この作家の文章力は侮れない。


無教養な少年が主人公の作品なのに、妙に小難しい言葉が多用されているのもポイントだろう。そこに語り手である西村賢太(40代の作家)と作中人物である貫太(10代の少年)との分裂が明確に示されているわけだが、教養をひけらかすことじたいが中卒である作者のコンプレックスの表明に他ならない。もちろん作者は意識的にそうしているはずで、なかなか食えない作家だと思う。

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紙の本

芥川と対抗して都落ちしていた頃の菊池寛のようだ

2011/03/30 08:56

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:あまでうす - この投稿者のレビュー一覧を見る



このように己が中卒であり、人生の敗残者であり、あまつさえ父親が性犯罪者であることを小説の中で暴露したり、卑下しているようで自慢したりする文学者はとても面白いと思うけれども、友人としては絶対に付き合いたくない。

芥川賞を受賞した表題作は、4帖半一間1万5千円のその日暮らしの若者が日当5500円の肉体労働にいやいや従事してやさぐれ、世間の成功者を妬み嫉み、そして鬱屈し、自涜し、たまに糞袋に精を遣りにいって身も世も呪いつつ自滅していく話で、底なしの自虐がいっそ心地よい60年代にはよくあった青春をコピーした私小説でどうということもないが、冒頭に「嚢時」なる旧弊の漢字をあえて使用したところに、著者の傲岸不遜さとあえかな矜持があらわれていると読んだは当方の僻目か。

そのようにいくぶん恰好をつけて書かれた「苦役列車」に比べると、同じ書物の後半にグリコのおまけのように収められた「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」では、著者のやけくその捨て身の私小説家魂が赤裸々に叩きつけられていて、妙に胸をつかれる箇所がある。

「彼は文名を上げたかった。(中略)名声を得たなら、彼を裏切り別の男に去っていった女のことも、たっぷりと後悔さしてやれる。自分の方がはるかに価値ある男だと云う事実を思い知らしてやるのだ」

「後悔させて」ではなく、「後悔さして」であり、「知らせてやる」ではなく「知らししてやる」と書いてしまうところに、この人の本質がある。さうしてインテリげんちゃんならそう思っても絶対に書かないほんとうの本音を、この人はまるで芥川と対抗して都落ちしていた頃の菊池寛のように、マジで書いてしまうのだ。

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紙の本

モラトリアムな寛多

2021/05/16 00:02

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る

ひねくれまくった主人公・北町寛多にも、時おり親近感を抱いてしまいます。港の倉庫や場末の酒場の、鬱屈とした雰囲気も味わい深いです。

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電子書籍

テレビでみてから

2014/05/06 16:12

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:天上大風 - この投稿者のレビュー一覧を見る

作者の西村さんをテレビで見てから、興味をもち買いました。テレビでみた、空気感が作品にもでていました。下品ながらも面白いですが、私小説なのでネタ出し尽くしてしまってからどうなるんだろう。

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電子書籍

いいですね

2012/07/21 20:51

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Dat - この投稿者のレビュー一覧を見る

生きる手段の一つでもあるとおもいます

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紙の本

女性からのシンパシーは得がたい

2011/02/02 18:23

12人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ろこのすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 芥川賞受賞直後のインタビュー風景が強烈な印象を残した。片や良家のご令嬢風の朝吹さん。片や異形な風貌の西村賢太氏。そつなく出版関係の人に感謝を述べる朝吹さんはどこまでもお嬢様。家柄からしてすごい。父は詩人で仏文学者の朝吹亮二さん、大叔母はサガンの翻訳で知られる朝吹登水子(とみこ)さんという“文学一家”に生まれたという生え抜きのお嬢様である。
 一方、西村賢太氏といえば、「ちょうど風俗に行こうと思っていたところへ受賞の知らせがあった。出かけなくて良かった」と苦笑させる。

 読了後の印象は強烈なインパクトがのこる私小説だと思った。著者によれば九割は自分のことだと述懐する。
 中卒の主人公北町貫多は物流倉庫で働く日雇い。父は性犯罪者という過去を持つ。母は父と離婚し、貫太は中卒のまま日雇い労務者となる。怠惰な性格と性犯罪者の子供と言う生涯付きまとうレッテルを憎悪しながら投げやりな人生が連綿と続く。恋人もなく、日々の酒代と性風俗通いの金のためにだけ働く貫太は、人並みはずれた劣等感から生じる、ねたみや、そねみに自我を侵食され、己の人生がずっと続くかと思うとこの世がひどく息苦しく感じる。それは一個の苦役にも等しく感じる。

 古臭い、もう聞くこともないような言葉、「結句」がやたらと出てくる。「黽勉(びんべん)たる」とか、「孜々(しし)」の心がけ」などの古風な語句を使いながら独自の文体をかもし出しているのが面白かった。
 春の野菜はえぐみが強いものがあるが、そのえぐみが味わいにもなる。それと似て本書のえぐみは強烈であり、特異な個性を放っている。女性からのシンパシーは得がたいように思った。
 泥臭くどこまでもえぐるように地べたを這う者の生活を描いて見せた作品。
 無頼派の登場を思わせる作家の生い立ちと生活自体が小説といってよい。 材料にことかかないほどの生い立ちと生活ぶりは強烈な武器である。
 えぐい読後感。
 心酔している藤澤 清造の全集を受賞で得た賞金すべてを注ぎ込んで出版するという。

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紙の本

私小説であることをどう考えるべきか

2011/03/04 12:12

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 今年の芥川賞は、あまりにもタイプの違う二人が同時受賞ということで話題になった。こちらは赤裸々な我が身の事実を小説にした、いわゆる私小説。
 こういう作品を評価するのは難しい。つまるところ私小説というものをどう捉えるか、という問題だろうか。
 インタビューなどからして作者は相当荒れた生活を送ってきた人らしい。大元には、父親の性犯罪による家庭崩壊がある。そこからの転落人生の途中で私小説に出会って救われ、自分でも作家の道に入った、ということらしい。そしてこの小説は、その事実のままの主人公が、中卒後、主に荷役の仕事をしながら過ごした数年の話。孤独な中で友人もできかかるが、持ち前の偏屈と僻み根性でこれを失う様子が描かれている。
 普通なら、作家と作品は別というのが現代批評の立場だろう。○○と書いてあってもそれが作者の考えというのは誤り、というわけだ。だが最初から、これは実際の自分の人生です、として自分を曝け出した小説をどう捉えればいいのか。それは開き直りのようでもあり、同時に、逃げ場のない者の唯一の救いでもあるようなのだが。
 仮にこれが事実とは無縁の単なる小説としたらどうなのか。逆に言えば、事実を書いているからどうなのか。その辺はあまり考えなくていいことなのかどうか。しかし我々は既に、これが私小説であり、ストーリーが事実であることを知らされている。すると、この小説に面白さを感じるとして、それはまず起こった事実の面白さかもしれない。手記やルポルタージュに対する興味と同じである。だがそれなら小説にする意味は何か。
 ほとんど実体験を書いているらしいとはいえ、けっこう凝った古風な文体で、自分でもある主人公を突き放し、こき下ろす。たしか新聞の評などでも言っていたと思うが、そのギャップによる距離感が、ユーモラスな味を生み出してもいて、その点はいいと思う。
 しかし読み進めると、いささか辟易もする。けっこう生々しいし、主人公の貫多には、このままなら付き合うのはちょっと、というものはたしかにある。いわゆる成長小説のようなものではないから、一般的には感情移入はしにくいと思うが、読者は自分の中にある弱さと響き合うものを見出して共感するだろうか。作家のインタビューを読むと、そういう読者があれば嬉しいというようにも言っている。
 だがそれがこの類の私小説の唯一の読み方なのか。とすれば誰もが読める小説ではないと思う。いっそ笑いや風刺で徹底して突き放す手もあるだろうが、そういうところへは行ってはいないし、かといって同情や共感を誘うことを目指しているとも思えない。そう思うと中途半端な気もする。しかし、むしろそれがありのままを描く私小説の本来の姿だとでも言われれば、そうかもしれないからまたややこしい。
 とりあえず読者が満足するかどうかは、最後は感覚的になじむかどうか、あるいはもっと単純に言えば好みの問題だけになってしまうような気もする。

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紙の本

生き続ける為に書き続ける。

2011/06/26 17:39

6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:kumataro - この投稿者のレビュー一覧を見る

苦役列車 西村賢太 新潮社

 「苦役列車」の意味は最後までわからずじまいでした。列車イコール主人公貫太の人生なのだろうか。のう時北町(のうはとてもむずかしい字です)というのは苗字(みょうじ)なのだろうかと首をかしげながらの読み始めでした。以降は貫太という名前でひとり語りが続きます。父親が犯罪者らしく、いじめに遭う孤独な少年時代を送っています。それゆえなのか、高校へは進学せず、中学卒業後は、1日5500円の日銭を稼ぐ港湾労働者となっています。身長177cm19歳となっていますが、読み続けていると27歳ぐらいの男性に思えます。母親や3歳年上の姉とは離れ離れになり、貫太は家賃滞納による家主からの退去要求を繰り返しながらのその日暮らしです。狭い和室で寝て、起きて、早朝に日雇い人夫が乗るバスで東京湾に着いて働いて、ときには買春をして、体の健康を維持するための食物よりも毒となるたばこやアルコールの摂取を優先する性質です。彼にからむというよりもからまれるのが、九州出身の専門学校生日下部正二(くさかべ)と彼の彼女です。昭和61年頃の時代設定です。
 親が犯罪者だとこういう人生になると読むのか。子どもにも親同様に現実的な懲役刑がくだるのか。同情すればいいのか、自堕落な生活を批判すればいいのか迷います。自分を客観的に第三者の立場で見る記述です。特徴的なことは、ユーモラスであることです。暗い内容なのに明るいのです。書き方に独特なものがあります。多用される言い回しは「結句」です。結局の意味です。わたしは始めてその単語を見ました。
 貫太は、他人に迷惑をかけても気にしない人間です。ことにお金の支払いや貸し借りには怠惰です。借りたお金を返済する意識はないし、貸してくれた人に対する感謝の気持もありません。とんでもない奴です。
 中卒という学歴について強いひがみがあります。彼は自分がこういう生活を送らねばならなくなったことを「理不尽」と他者の責任にしますが、はたからみていると彼が何を叫ぼうと「みじめ」としか映りません。
 読みやすい小説です。されど、不潔感があります。作者の声が聞こえてくるのです。「ぼくでいいんですか」起・承・転まではわかるのですが、結となる部分があるのかは、はっきりしません。作者は、創作を心の支えとしながらこれからも書き続けていくのでしょう。その点は強く伝わってきました。

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紙の本

「苦役列車」私は私の事しか書けないのです

2011/05/20 10:23

4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:soramove - この投稿者のレビュー一覧を見る

第144回芥川賞受賞作品の表題作と、
短編「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」を収める。


「性犯罪者の父親を持ち
中卒で以降、定職に就くこともなく
日雇い仕事で日銭を稼ぎ、
2,3日暮らし、金が無くなるとまた
日雇い仕事を繰り返す毎日、
誰かと繋がりたいと願いながら
それさえ自分から壊していくような日々」


衝撃的だとか
圧倒的だとか、
魂を揺さぶられる
とまで書評で書かれている本作。


それ程でもないなというのが素直な感想、
風貌からか中上 健次 の「十九歳の地図」の
主人公の小汚い部屋を想い浮かべた、
殺伐とした生活、
秩序とかとは程遠い、
どちらも自らそのようにしてはいるが
今の時代、過去を振り返って
20年ほど前にこんなだったと言われても
それと「無頼」なんてものとは
そう簡単に結びつかない。

ただの言い訳がましい
情けない男のひとりごとだ。

でも作者は「これしか書けない」といい
「これを読んで少しでも元気になってくれたら・・」という
インタビューを読むと、
それでも人間は自分自身でしかありえないんだなと
強く思った。



何かになりたいなんて
強く願わなくても
それでも自分自身をやっていくしかなく
つらつらと振り返り
時に暖かい未来を夢想し
それでも侘しい現実と向きあうしかない。

励まされもしないし
ここに魂を揺さぶられるような
「文学」的な何かは見つけられなかったが
でも、それでも書かずにはいられないという
作者の「熱」は充分に感じた、
自分達読者は巧みな文章や
あり得ないものよりも
熱い心意気のようなものに
やはり惹かれるのだろうな。


作品としては汚らしいので好きじゃないが
最後まで読ませる「力」は感じた。
次作は書店で冒頭を立ち読みしてから
買うか考える。


★100点満点で65点★


soramove

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2011/01/28 00:05

投稿元:ブクログ

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2011/01/27 10:23

投稿元:ブクログ

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2011/04/04 15:42

投稿元:ブクログ

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