紙の本
1665年から、コロナ禍へのメッセージ
2020/06/13 15:41
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投稿者:カセ - この投稿者のレビュー一覧を見る
1665年のロンドンは、猛烈なペスト流行で人々が、次々に感染、亡くなっていきました。ペストとコロナ禍。病原体は違えど、感染するプロセスは、驚くほど似通っています。つまり、1665年のロンドンの経験は、2020年の我々にも十分、通用するということです。筆者デフォーが執念を持って書き記したペスト。購入して熟読して、先人の経験を学び、コロナ禍に、どう対応、適応していくべきか。私を含めて一人一人考えるべきだと、感じさせてくれる傑作です。
紙の本
あまりにも現在とリンクしている
2022/08/27 04:23
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投稿者:藤和 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本を読んでいる間、ずっとドキュメンタリーだと思っていたのだけれども、あとがきに冬至筆者は現地にいなかったとあって、データを元にここまでリアルな人間の反応を描けるのはすごいなと思った。
疫病の段階ごとの民衆の動きがあまりにの現在の人々と同じすぎて、ヒューマン進歩しないなと思った。
紙の本
悲惨だったペストがよくわかります
2020/05/31 14:58
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投稿者:ねったいぎょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
約350年前に起きたロンドンでのペスト騒ぎを冷静な筆致で書き綴った作品です。
この頃の対策は自粛戦略しかなかったようで、かなり悲惨だと思いました。家に感染者が出ると、その家ごと封鎖するという恐ろしいことをしていたようです。当然、家族は全員ペストにかかり、死んでしまいました。
現在、コロナ騒ぎが起こっていますが、自粛戦略を取ったのはこの時と同じ。あまり発達していないなという印象。
この本がコロナに役立つこともあるかなと思って読みましたが、現在に役立つ知識はなさそうです。ただ、こういうご時世ですから、この機会に読んでみてもいい本だと思います。
紙の本
驚くほど現代のコロナ禍の状況と酷似した出来事に溢れている
2023/05/26 06:18
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投稿者:マーブル - この投稿者のレビュー一覧を見る
ペストが引き起こす出来事がまとまりなく羅列される。迷走する話題。人々の恥ずべき行為を挙げる一方で、善行の紹介も忘れない。この作品は、多くの場面で語られるように驚くほど現代のコロナ禍の状況と酷似した出来事に溢れている。それを知るだけでも意味がある、と言っていいのかもしれない。それを見て人間はいつの世も、そして国が違っても同じように行動する、と感じるか。あるいはそうではいけないと何か行動を起こすのか。読書とは、そこに書かれていることを理解するだけでなく、読後何を考え、何をするかが重要なのだろう。
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17世紀、ロンドンを襲ったペスト禍の物語風ルポルタージュ。著者は、あのダニエル・デフォー。彼自身は実際の災厄のときには幼児だったけれど、長じて取材、調査に基づいてこの書を著したのだとか。『大聖堂 — 果てしなき世界』を読んだので、参考までにと手を伸ばしてみた。
部分的には矛盾して見える記述もあるが、「わたし」が語る街の有様には鬼気迫るものがある。これが近世のとば口、大都会ロンドンの有様だとすると、疫病だけでなく戦乱や飢饉にもさらされていた中世の村や町にペストがやってきたら…。パンデミックによって世界が滅びる物語をつくるSF小説家たちは、皆このルポを参考にするにちがいない。
デフォーの記述は街の人々のありさまにとどまらず、数字による検証や人々の証言をおりまぜ、産業への影響、終息後の変化にまで及んでいる。まあ、「神」や「信仰」が強調されているのはいかにもデフォーらしいというべきか。
ところで、日本には疫病によるこれほどの災厄はなかったように思うがどうだろう。日本人の「大量死」の原因は、なんといっても地震や洪水などのような自然現象。火事というのもあるけれど、とにかくいったん起こると防ぎようがなく、かつ貧富にかかわらず平等に被害を及ぼすもの。ただし、その事象そのものは一過性で、疫病のように何ヶ月、何年と続くものではない…。
そんな歴史が「日本人」をつくってきたのかも、などと思いながら読んでいたおかげで、いつになく読了に時間がかかってしまいました。
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『ロビンソン・クルーソー』の著者、ダニエル・デフォーの小説。
ペスト菌が発見される200年以上も前の時代、致死率の高い疫病がどこからやってくるのかもわからない状況で、人々がパンデミックに対してどのような行動に出たか・・・1665年ロンドンのペストの年がリアルに描かれている。
フィクションとは言いつつも、貴重な記録ともいえるこの小説は非常に興味深い内容ではあるものの、いわゆる終息期にペストの毒性が弱くなり自然治癒すること以外に救われることのない状況というのが、読み手に重く圧し掛かりすっきりしない、ということから評価は★3つとしました。
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17世紀と21世紀で社会はそれほど変わっていないが、過去に学べる点で少しは進歩できていると感じる。デマに惑わされない、健康であるからといって保菌者であるかもしれないのでうつす危険性を考えずに行動してはいけない、貧困者は寄付をしてでも助けなければならない、地方に移動した人を差別しない、といったことは大事なことだ。カミュのペストも読んで比較していきたい。
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いやいやこれはなかなか凄かった。パンデミックの事態における人間や社会の様子が、17世紀と21世紀と大して変わらない事にまず驚かされます。
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コロナの流行が始まった頃に読み始め、だらだらと拾い読みしながらようやく読了。そしてあとがき見て、初めてこれが作者デフォーの実体験ではなく、おじが残した記録による創作であると知る。当時の人の常として篤い信仰心をよりどころとしてこの災禍を乗り越える訳だが
、人々のふるまいのなんと現代と似ていることかと思う。
猛威を振るった疫病が自然に弱毒化して、以前ほどの被害を出さなくなったという点もまたしかり。
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17世紀、350年前のペスト・パンデミックのドキュメンタリー風の小説。しかもあの『ロビンソン・クルーソーの冒険』を書いたディフォーという作家の作品ですよ。ディフォーが生まれたのがその頃、新親や親戚の話を聞いたり、調べたりして、書いたはそれから50年後(初版発行は18世紀初め)と。それにしても古い、なにしろペスト菌の発見も1894年まで待たなければならない(北里柴三郎さん!)時代、果たして現代に通じるものがあるのか?と思って読みましたが、、、。
時は1664年9月初め、場所はロンドン。ペストという悪疫はそれまでに時々発生しては恐れられていたのだが、オランダでまた流行りだしたという噂を耳にしたロンドン市民、H・Fさんが物語の語り手。そうこうしているうちにロンドンのある街に1~2の感染者が出てくる。そして翌年の1665年(日本では寛文5年)を大変な年にしたのでした。
田舎に逃げた人も多かったけれど、商売が心配でロンドンに残って、生き延びて長生きしたH・Fさんが、見聞きした真実の記録を残そうとしたわけは、当時の当局も秘密主義であったし、口から口のセンセーショナルなデマ的伝承はあったけど、印刷物もなかったからいつの間にか忘れれ去られていく、そのことを憂えてでした。
まあね、17世紀ですから、迷妄な盲信の行動、健康者も感染者も一緒に家屋ごと閉鎖してしまう施策だとか、大穴を掘ってたくさんの犠牲者の酸鼻な埋葬風景や、おどろおどろしいところがいっぱいあります。
でも、細菌もウイルスも科学的にわかっていないにもかかわらず、この現代になんと似ていることか。「死亡週報」なる感染死者数の発表に一喜一憂する人々、狂乱のような行動をする人がでる、社会的弱者の不利益というか一番被害を受ける、当局の施策の不備、経済を回さなくては困ること、などまったく、今を読み解いているようです。
ひとつ面白かったのは、3人組の庶民がだんだんひどくなる状況に怖じ気てロンドンから脱出するサバイバルのところ。周りの村だっておいそれと感染しているかもしれない市民を受け入れませんから、人里離れた森に野営するのがロビンソン・クルーソーの生活創意工夫を彷彿させて、筆運びの勢いありましたね。
カミュの『ペスト』とはまた違った感ずるところがあります。人間は繰り返してきたのだなあと。
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フィクションなんだけれど、ドキュメンタリータッチ。カミュのペストがペストそのものというよりペストを巡る人間の思索や行動を昇華させたものとすれば、こちらはペストを巡る庶民の行動や世の中の変化そのものを克明に刻む。今読むとどちらも迫ってくる。
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(01)
筆者は,感染と蔓延とその結果としてもたらされる市民の死を克明に(*02)綴っていく.デフォーは幼児にこの1665年のロンドンでのペストの流行と惨事を経験しているが,彼が本書を上梓したのは1722年頃とされ,半世紀以上前の出来事を叔父の遺した記録を通じて生々しく再現しており,その文筆家としての手腕には驚くべきものがある.
(02)
政治的な情況としては,ロンドン市の救恤策も示されるものの,感染者が確認された家屋に,感染の有無にかかわらず家族や同居する使用人などの接触者をまるごと閉鎖する対策が凄まじい.筆者はこの施策を批判しているが,監視人のもとで閉鎖状態が管理されるものの,その家屋を脱出しようと試みる市民たちの描写まで行き届き,また,その閉鎖家屋から街路に漏れ出る死の咆哮までが伝えられる.経済的には,貧困層と富裕層との感染対策の格差をレポートしており,疎開する上層と市内に留まらざるを得ない下層(*03)をそれぞれに報告している.風俗面でも,治療や防疫として行われていたこと,あるいは予言や薬効などの民間のデマのような俗信(*04)から怪しいビジネスの流行まで,都市的なすったもんだにも事欠かない.
(03)
愉快な挿話として後半には市内の職人たちの郊外への避難が戯曲のような文体で報告されている.そのキャンプや機転には,ロビンソン・クルーソーのサバイバルに通じる実用性を持つハウツーの要素も混ざっているようで,一編の書物が綴られ,後世に伝世されることの意味を考えさせられる.tテムズ川での船上生活によって感染から自らを逆に隔離しようという行動があったことも痛快に感じられる.
(04)
新旧の宗派の対立がペスト蔓延の混乱の中で一時的に調停された様子も面白い.また,この渦中にあって神や信仰の問題を取沙汰する筆者の態度には,中世的な時代錯誤よりも,普遍的な神の存在が示されているように感じられる.
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冒頭の一文のおかげでロンドンにペストが入ってきたのは1665年だったことを忘れることはないだろう。章立てがなく改行もほとんどないのは今でいえばツイッターで日々の出来事をアップしているTLをまとめて読んでいるような印象。コロナ禍だから同じ世界にいる感覚で読み続けられたこともあるだろう。原題に"Journal ..."とあるように、架空の人物を設定し通も内容は詳細なルポルタージュ。日に日に増加する死亡週報の数字が昨年から毎日報道で見る患者数のよう。原因などが解明されずワクチンもない中、日々恐怖に怯える人々がどのように行動するか、さまざまな姿が見てとれる。イカサマ香具師等、ロンドンから逃げ出す人々、死を前に我を失う人々。当時は街のロックダウンでなく家を閉鎖していた。その閉鎖された家を監視する監視人の仕事ぶり。死体運搬の様子。概ねロンドン当局の仕事には好意的。文章から宗教観、理性への敬意が感じられる。あちこちの感想を見ると現代の人々には訳が不評なようだけど、1973年の訳としては現代的でこなれていると思うし、ロンドンの地名の表記が今と違っていて初め戸惑ったことを除けば私には読み応えのある訳だった。
それにしてもロンドンはこの後大火に見舞われ、散々な年月だったのね。
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感染者地域からやってきた人への差別。
感染地域における隔離とロックダウン。
日々の死者数を数字で追う人。
感染地域を脱出する金持ち。
デマ。
科学的根拠のない療法で一儲けする人たち。
17世紀も21世紀も何も変わらないとは。
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”コロナ禍”で注目された本書。意外と読みづらいところが多く、思いのほか時間がかかってしまった。17世紀末のイギリスで実際にあったペストのパンデミックを描いたノンフィクション小説。著者は18世紀に活躍した「ロビンソン・クルーソー」で有名な小説家。本書で最も印象的なのはこの時代のヨーロッパでも”ロックダウンは無意味”と認識されていたこと。今から三百年前に無意味と断定された政策を現代でもやってしまったのは、まさに”歴史は繰り返す”という皮肉を感じた。