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商品説明
コールセンターで働く温子は、女子アナになりきって、ブログを書いている。誰かに見られたい。この退屈で平凡で普通な毎日から、金魚のようにすくいだされたい。でも、本当は知っている、ネットで何を書いても、誰にも受け入れられないことを。そんなある日、正社員の岡村が出演しているライブに行った温子は、プロミュージシャンを目指す彼の誘いに心震える。この人と結婚するのだ、彼の習癖は見ないことにして。そう決心した温子の前に、高校時代の友人、倫子が現れた。温子と倫子には、グラビアアイドルの友人・美保がいた。超人気プロデューサーと愛人関係にある美保の過去についてコメントをしてから、温子のブログのアクセス数は急上昇し始める。次第にエスカレートする露悪願望、あらわになってゆく過去、それは破綻の始まりだった—。【「BOOK」データベースの商品解説】
コールセンターで働く温子は、女子アナになりきって、ブログを書いている。次第にエスカレートする露悪願望、あらわになってゆく過去、それは破綻の始まりだった…。暴走する噓と欲望、夢と破滅の壮絶な物語。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
南 綾子
- 略歴
- 〈南綾子〉1981年愛知県生まれ。「夏がおわる」で第4回「女による女のためのR−18文学賞」大賞受賞。
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紙の本
人間の終った後に
2010/09/26 00:56
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:わたなべ - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者は新潮社の女のための官能小説R-18新人賞でデビューした人で、デビュー作も面白かったが、処女長篇となるこの本はさらにシビアな傑作だった。
いわゆる「女子アナ」に憧れて上京したが夢果たせず派遣社員になっている二十代後半のヒロインが、日常の不満を芸能人に成り済ました偽ブログを書くことで紛らわしていたのだが、新たな恋人(バンドをやっていて食べ吐きする癖あり)、昔の友人(結婚前の妊婦)などと出会い、再会し、状況を変えこれからはまっとうに、と思ったのも束の間、何が、とこれと言ってはっきりした契機もなくおもむろに少しづつ歯車が狂っていって、というダークな物語が曖昧に展開する。
とりあえずヒロインを筆頭に登場する人物たちがみんな多面的な存在感のある「いやなやつら」で、リアルとカリカチュア/テンプレートの隙間を微妙に揺らいで記述されていく物語は、曖昧さの中からしだいに速度を増していき中盤からあれよあれよという感じで底が抜けたような印象を与え、そのたたみかけるような展開はほとんどアンチ・クライマックスと思わせる終盤では下痢のようにどこへ行くのかまったくわからなくなって、読者があっけにとられて宙づりにされる強烈なラストへと至る。この物語的カタルシスは村上龍を思わせるほどのテンションの高い素晴らしいもので、ところどころ小説を書き慣れていないような文章の硬さが見られるけれど、それはもう帳消しにしていいくらいものごっつく面白かった。もちろん物語としては徹底的に嫌な話なんだが、なんだろうね、半端ない確信のあるすっごく芯の強い小説だと思った。そして比較しといてなんだが村上龍と違って説教臭くないのもいい。一人称なので語り手のバカさが加減と締念が凄いし、ある意味でこれは一つの青春小説なのだが、これくらい成長や教養を拒絶した作品はちょっとないだろう。よく批評なんかで、現代文明は基本的に人間を成熟させないシステムになっている、と知ったようなことを言う人がいるが、それが本当ならシニックな余裕をかましてる場合じゃなくてともかくこの作品みたいな地平からはじめるよりしかたがないだろう。