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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2008.3
- 出版社: 翰林書房
- サイズ:22cm/681p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-87737-261-3
- 国内送料無料
紙の本
往復書簡宮本百合子と湯浅芳子
著者 宮本 百合子 (著),湯浅 芳子 (著),黒澤 亜里子 (編著)
宮本百合子と湯浅芳子のあいだで交わされた、出会いから共同生活にいたる書簡計247通を日時にそって配列。未公開の芳子書簡112通、二人の決裂の経緯を記した芳子の手記1篇など...
往復書簡宮本百合子と湯浅芳子
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商品説明
宮本百合子と湯浅芳子のあいだで交わされた、出会いから共同生活にいたる書簡計247通を日時にそって配列。未公開の芳子書簡112通、二人の決裂の経緯を記した芳子の手記1篇なども収録。評伝「Y・Yカンパニー論」併録。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
宮本 百合子
- 略歴
- 〈宮本百合子〉1899〜1951年。東京生まれ。作家。
〈湯浅芳子〉1896〜1990年。京都生まれ。ロシア文学翻訳家。
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紙の本
まるで、恋愛映画のように切ない書簡集
2008/06/20 10:17
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うみひこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
待ちに待った往復書簡がでた。飛びつくように読み進んでいったのだが、途中で何度も中断してしまった。胸が切なくなって…。
この書簡の一方の書き手、湯浅芳子について知る人は少ないかもしれない。チェーホフ、ゴーゴリの翻訳者としてロシア文学を長年にわたり紹介し続けた人というより、マルシャーク著の『森は生きている』の翻訳者だといった方が、懐かしく思い出す人が多いに違いない。だが、なにより、宮本百合子の小説『伸子』『二つの庭』『道標』の素子のモデルといえば、もっと分かりやすいだろう。さらに、沢部ひとみ著の『百合子、ダスヴィダーニャ』、瀬戸内寂聴著の『孤高の人』において、その人生と個性が生き生きと語られている女性だ。また、彼女宛の書簡は他にも『田村俊子全集』に収められている。
これだけ多くの人々に語られ、描かれた女性の若き日の生の声を聞く機会を与えてくれた本書は、実に読みやすく、そして、胸が切なくなる仕組みになっている。
本書には、百合子と芳子の出会いの頃から始まり、百合子の『伸子』執筆のための開成山滞在の時期を経て、百合子の離婚、二人の同居、そして、ソ連への留学後の破局に至るまでの往復書簡が掲載されている。そして、それぞれの時期を年代順に編纂し、その章の冒頭に二人の日記から抜粋したものを載せている。百合子の日記だけではなく、未発表の芳子の日記を読むことによって、その時々の二人の状況がよりいっそう理解しやすくなっている。
だが、何よりこの構成の優れた点は、小説のように、或いは映画のように、この書簡集を読者に手渡したことにある。冒頭に置かれた二人の日記の中の言葉が、まるで映画のセリフのように、それぞれの心の中を独白で語ってみせる。読者は、その言葉を胸に秘めながら、二人の手紙を読んでいくことになる。時間が錯綜し、終わりを知りながらも、主人公と同化した読者は、もう一度始めから恋を語り始める…。
これまでの湯浅芳子編の『百合子の手紙』や宮本百合子の全集で読んでいた手紙とは違い、一方通行ではない手紙のやりとりに、二人の心の揺らぎや恋の機微を読むことができ、更にこの関係において二人がいかに誠実に人生を共に生きようとしていたのかを知ることができる。
まだ、翻訳家ではなく一編集者だった若い日の芳子。離婚という人生の一大事の直前にいながら、奇妙に曖昧で無自覚な『伸子』以前の百合子。若い二人が、人生の危うい時期にデカダンスの罠にはまらずに、二人の愛を礎に本当の仕事と未来を獲得しようとしていく。その姿に、二人の若さに、どうしても胸が切なくなってしまうのだ。
この手紙の中で、二人は実に多くのことを語り合っている。人生の苦しみ、愛、性、男女観、文学や映画、音楽への批評。この時代の若い女性としては、希有の存在だった二人が出会ったのだ、ということを感じずにはいられない。
最後に編者の論究「Y.Y.カンパニー論」が掲載され、現代において二人の間柄をどう読み解くべきかの思考を読者に促している。
新発見の百合子の手紙と芳子の手記も含まれる本書は、実に資料的価値も高い。だが、それだけではなく、ひとつの愛の物語としても読み込める、実に見事に構成された魅力的な作品である。