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天使の牙から (創元推理文庫)
「死にかけてるのってどんなものかって?もう生きてないんだ。バランス取ってるだけ」男は癌で余命幾許もないかつてのTVの人気者。「人生でほしいと思うものには必ず牙があるのよ」...
天使の牙から (創元推理文庫)
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商品説明
「死にかけてるのってどんなものかって?もう生きてないんだ。バランス取ってるだけ」男は癌で余命幾許もないかつてのTVの人気者。「人生でほしいと思うものには必ず牙があるのよ」女は若くしてハリウッドを去り隠遁生活を送る元女優。男は死神から不思議な力を授かり、女は報道写真家と恋に落ちた…やがて二人は戦慄に満ちた邂逅をとげる。愛と死の錬金術師が紡ぐ傑作。【「BOOK」データベースの商品解説】
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愉しんでる奴には敵わない
2007/06/17 08:17
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Leon - この投稿者のレビュー一覧を見る
二人の主人公がいる。
一人目のワイアットは、子供向けのテレビ番組の司会として一世を風靡したこともあるのだが、今は癌に侵されて余命幾許も無い。
死を待つのみの虚脱した日々の中に飛び込んできたのは親友のソフィーからの電話。
強っての頼みで、失踪したソフィーの兄を探すためにアメリカから遥々オーストリアへ向かうことになったワイアットは死神と出会う。
死神はワイアットのことが気に入っているらしく、どうやら直ぐに命を獲るつもりはないようなのだが・・・
二人目のアーレンはハリウッドの女優なのだが、人気絶頂の時に引退してウィーンで気侭な一人暮らしを送っている。
アーレンは偶然知り合った報道写真家ジーヴィッチと恋に落ちるのだが、その頃から彼女の周囲では不幸なことが起こり始める。
愛犬が死に、最愛の母の日記から実は自分が忌み嫌われていたことを知らされ、親友のローズは暴行されて重症に。
更に恋人のジーヴィッチからは彼がエイズだと聞かされ・・・
二人の主人公はアメリカのショー・ビジネス界という繋がりから知人ではあるのだが、交互に現れるそれぞれを主役とした各章は九割ほど読み進めるまでは殆ど絡まない。
ワイアットの章は、夢に現れた死神の言葉を理解しないと身体に傷を付けられ、やがては死に至ってしまうという謎が主軸になっていて、ホラーとミステリーが融合したような雰囲気があるのだが、アーレンの章は隠遁生活を送っているハリウッド女優とタフな報道カメラマンのロマンスとなっており、まるで二つの小説を併読しているような感覚にさせられる。
最後の最後になって漸く二人の物語が絡む部分からの急転直下ぶりこそはキャロル一流の技巧で、目を凝らしているのに見破れない華麗なマジック・ショーが展開されたような印象を受け、「またやられた」という快感。
本作で扱われる死神のキャラクターが堕天使と関連付けられているので、聖書に馴染みがないとピンと来ない部分もあるかも知ないが、信仰を持たない人こそは「愉しんでる奴には敵わない」という確信を必要としているのかも知れない。