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商品説明
望まない妊娠の果てに“売られていく”子どもたち—。海外養子斡旋の驚くべき実態と、産みの親との再会をつづった、感涙のドキュメント。【「BOOK」データベースの商品解説】
望まない妊娠の果てに「売られていく」子どもたち。海外養子斡旋の驚くべき実態と、産みの親との再会をつづったドキュメント。『読売新聞』連載「赤ちゃんあっせん」をもとに、エピソードやインタビューを大幅に加筆。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
高倉 正樹
- 略歴
- 〈高倉正樹〉1973年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。読売新聞入社。盛岡支局を経て、東京本社地方部記者。
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紙の本
黒いうわさと、子育て環境の脆弱性
2007/03/08 11:09
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:いずみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「養子縁組の黒いうわさは、海外では公然の秘密です。南米ではボロい商売で、弁護士が大儲けして御殿を建てたりしている」
「かつて『養子輸出大国』と呼ばれていたフィリピンや韓国では、国の恥という認識が広がり、汚名を返上しようと改善を図っている。一方、日本では個人レベルの斡旋事業者が多いが、実態調査はまったく行われていない。法整備もかなり遅れている」
「解決の第一歩は、養子縁組に関するハーグ条約を批准すること。しかし、国は『批准すると仕事が増えてコストがかかる』『養子縁組は個人の問題だから関与しない』と主張し、批准に向けて動き出そうとしていない。国際養子縁組の監視を強めつつある世界の潮流とは完全に逆行しているのです」
(本文より)
望まない妊娠から生まれた赤ちゃんを中心に、養子斡旋という名の人身売買が横行しているという。
親がそうとは望まないまでも、「育てられないのだから」と手放さざるを得ないのを連れ去り、あとで探そうとしても行方を探せない、そんなケースが多々ある、と、この本では示されている。また、人身売買ととられても仕方ない斡旋費用(受け入れ側が負担)の相場の高さが、この状況に拍車をかける。
証拠はない。だが、もし子供たちが臓器移植や児童ポルノの犠牲になっていたとしても、把握のしようがないのが現実だという。
これに対し国家は無力だ。
上記のとおり、とくに国境を越える養子縁組に関しては、ハーグ条約という国際基準が存在する。しかし、日本はこれに批准しない。なぜだかは不明だが、「批准せよ」という国連の勧告も無視している。
斡旋業者も、届出制であり許可制ではない。つまりはだれでも、斡旋業者になれてしまうのだ。
有効な法律の整備を、と、本書は呼びかける。
望まない妊娠を少しでも減らすべく、性教育の充実を、と述べる人もいる。
しかしそれ以前に、子供を育てる基盤そのものが、この日本という国ではあまりに脆弱でありはしないか。
子供を手放す親が本書ではクローズアップされているが、ほかにも妊娠中絶、児童虐待、母親の孤立と、少子化対策を叫ぶ国で起こっているとは到底思えない実情がある。
つい先日も、若い母親が2歳の子供を留守番させて出かけた間に火事が起こり、子供が焼死するという事件があった。母親の行き先がスノーボードだったということでネグレクトと見られがちだが、現実は少し違う。「一日ぐらい骨休みしたかった」と語った母親はシングルマザーだったが、公的な子育て支援は何一つ受けずに子育てと勤めをひとりでこなしていた。
子育てしているはずの年齢層が子供を持たないのには様々な要因がある。なかには、「今時の若い者は自分が大事だから、子供を持ちたがらない」という、辛口の批判もある。
だが、何より重要なのは、子供を持つことへのリスクが大きすぎることだろう。
本書にも、三十代の女性が、不倫の末に授かった子供を手放す経緯が示されていた。彼女は分別もシングルマザーになる覚悟もあった大人の女性だが、周囲、とくに母親の説得に負け、息子を養子に出す。貧しい生活では子供を不幸にするといわれて反論できなかった。
これが日本か、と思う。
健康で文化的な最低限度の生活を憲法で保障する日本の、これが現実だ。
若くて向こう見ずなら、ひとりで何もかも背負い込んで疲弊してしまうし、分別があれば、トライする前に諦める。ギャンブルでも冒険でもない、子育てでの話である。
養子斡旋が横行するのは、結果論に過ぎないとも言える。