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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2005.1
- 出版社: 日本評論社
- サイズ:20cm/394p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-535-55435-8
紙の本
取り逃がした未来 世界初のパソコン発明をふいにしたゼロックスの物語
著者 ダグラス・K.スミス (著),ロバート・C.アレキサンダー (著),山崎 賢治 (訳)
ゼロックスといえばコピー。しかし、世界初のパソコンを発明したのは、そのゼロックスだった。なぜゼロックスは発明を事業として成功させることができなかったのか。「技術をマネジメ...
取り逃がした未来 世界初のパソコン発明をふいにしたゼロックスの物語
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商品説明
ゼロックスといえばコピー。しかし、世界初のパソコンを発明したのは、そのゼロックスだった。なぜゼロックスは発明を事業として成功させることができなかったのか。「技術をマネジメントする」組織と人間のあり方を問う。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ダグラス・K.スミス
- 略歴
- 〈スミス〉ハーバード大学ロースクール卒業。弁護士、教師などとしての経験を有する。
〈アレキサンダー〉ハーバードビジネススクール卒業。アレキサンダー・アンド・アソシエイツ創業者兼代表。
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紙の本
あらゆるコンピュータ・ユーザにとっての必読古典
2005/01/15 16:34
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:sheep - この投稿者のレビュー一覧を見る
パソコンを立ち上げ、マウスでアイコンをクリックし、フォルダー中のファイルを開き、必要部分をコピーしてメール本文に貼り付け、メールを送信し、時にはLAN上のレーザープリンタで印刷もする。
日々何気なく行っているこの作業を実現する技術、すべて実は一企業の研究所で開発されたものなのだ。素晴らしい新技術開発には成功したが、事業化に成功しそこねた人々の数奇な物語を描いたものが本書である。
本書冒頭クイズが三問ある。
1. 最も長い期間放映されたパソコンのコマーシャルは?
2. 最もクリエイティブなパソコンのコマーシャルは?
3. 最初の「パソコンのコマーシャル」は?
アメリカでの刊行時(明記はないが1988年の筈)では1,2は自明だったろう。しかし今の時点で3に答えられるアメリカ人は、まして日本人はまずいるまい。(解答は本書を参照されたい。)
青色ダイオード訴訟和解の記事等を流し読みしていると、素晴らしい技術は発明しさえすれば、たちまち羽が生えたように売れ、お金が湯水のように流れ込んでくるように思えそうだ。
さにあらず。世界最初のパソコン、ワープロ・ソフト、描画ソフト、レーザープリンタ、LAN等という画期的システムを開発した企業は、そうした総合技術を成功裏に市場にだすことに失敗した。そして同社は今でも「複写機」の世界的企業のままだ。
「成功の復讐」という言葉がある。困難な物事を長年の苦労によって見事に事業として開花させると、その成功体験が、他の全く新しい事業展開の障害になることを指している。本書は、世界的一流企業が、まさに「成功体験によって復讐された」例だ。
いくら新技術が素晴らしくとも、過去の成功体験に固執する「企業文化」の中では、帳簿数字しか読まない幹部の指揮下では、その技術の市場導入には成功できない。先見の明、豪胆さ、燃えるような意欲は、簿記知識や地位・経歴等からは決して生まれない。
全米の一流科学者を集めて西海岸に作られた自由奔放な研究開発組織は、ダークスーツを身につけた東海岸の古典的企業幹部達とは水と油の関係だった。
世界から幹部が集まる1977年の国際会議でのデモにこぎつける。ここで幹部らの反応が面白い。残念な事に幹部でなく、夫人連が技術展示の魅力を瞬時に理解したのだ。物事にとらわれず、秘書として働いた経験から見れば、展示技術が夢のような機械であることは自明だったろう。立て続けに開発する製品の価値を認めず、本気で売ろうとしない企業幹部が、研究所のその独自な雰囲気を生み出した人物を追放するに至ると、研究者達は他企業へ移り、あるいは新会社をおこして去って行く。
安全確実主義の行儀良い企業幹部と、行儀よりも何よりも、目覚ましい研究開発を優先する研究所運営を計る人々との摩擦葛藤。技術というより技術者魂の息も詰まるドラマは今読んでも十分劇的だ。
新技術を育てる上で幹部の判断は極めて重い。新製品市場投入の成否を決めたのは幹部を含めた企業文化だ。敷衍すれば「一国の未来を決めるのはその国の文化だ」と言えようか。
素晴らしい開発を素晴らしいものと認識できず、夢遊病者の駄作として白眼視した本社の雰囲気、日本の大企業・官庁と全く無縁と言い切れるだろうか。企業・国家は、他社・他国の成功をまねようとするより、自らの体質からおこる深刻な失敗を避ける事が先決だろう。日本中で、冷戦後の経済成長という疑似成功体験から抜け出られずにいるのではなかろうか。
「逆プロジェクトX」とも言えるこの物語、低迷する日本企業の「組織と人間」のあり方について、反面教師として効能は高まっていよう。経済産業省Webの採用欄にさえ「成功の復讐」という言葉が見える今、「技術開発の管理」に関わる、企業・官庁の管理職・幹部必読の古典だろう。いや、むしろ広くパソコンを享受している人々の常識となって欲しいものである。
紙の本
それは結局人間の問題なのだ
2007/03/26 09:33
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SnakeHole - この投稿者のレビュー一覧を見る
……長ったらしい副題がそのまんま梗概になってるのでこれに付け足す解説はあまりないのだが,不案内な人のためにヘビの足をちょっと書くと:
現在主流であるコンピュータのGUI(グラフィカル・ユーザ・インタフェース……画面上のボタンだのメニューだのをマウスでもって押したり選んだりしてコンピュータを操作するやり方)を最初に発明したのはアップルでもマイクロソフトでもIBMでももちろんニンテンドーでもなくて,ゼロックスのパロアルト研究所(PARC)だった。そんだけぢゃない,マルチタスク,イーサネットなども元をただせばこの研究所の開発した技術である。しかしゼロックスはその世界最先端の発明を商品化して利益に結びつけることができなかった。それは何故か? そこにはどういう経緯があったのか? というのを丹念な(おそらく当事者には嫌がられただろうに)取材によって解き明かしたのが本書である。
読み終えた結論として,それは結局人間の問題なのだ。PARCの研究者達が全部正しくゼロックスの上層部が残らずボンクラだったわけではない。「適材適所」という言葉があるが,これに「適時」というもう一次元を加えることがいかに重要かという話である。組織ってのは往々にして,リスクを取るべき時に安全志向のニンゲンを持ち上げ,耐え忍ぶべき時にイケイケドンドン野郎を採用する。営業で成功したニンゲンは技術を学ぶことを軽んじるし,技術に没頭するヤツはコストを甘く見る。本来車の両輪であるべき人々が,お互いに相手さえいなければ,と思う。オレもずいぶん観てきたが,このゼロックスの失敗の小型版は今現在もそこかしこで繰り返されているんだよね。
終章,1979年,ゼロックスによるアップルの買収交渉(結局これは頓挫する)に絡んでアップルのスティーブ・ジョブスがPARCを見学したくだりがある。ジョブスは「ゼロックスの経営陣が5年かかっても理解できなかったことを一瞬にして把握」し即座にこう言ったそうだ。「どうしてゼロックスはこれを売り出さないんだい? これを売り出せば,競合全員を吹き飛ばして大儲けできるぞ!」。こんな話も楽しいよね。あ,ただ一個だけ,翻訳者は知的財産コンサルタントだそうだが,131ページにある訳者注はとんでもない大間違いなので信じないように。アルトのマルチタスクが最大16個のプロセスを実行できたことと(本当にそれが16だったかどうかオレは知らないが)16ビットCPUとは全く関係ありません。
紙の本
日経コンピュータ書評
2005/02/16 17:32
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:日経コンピュータ - この投稿者のレビュー一覧を見る
その時代にはありえないはずの高度な技術や知識が使われている遺跡・遺物を、オーパーツ(ooparts:Out of Place artifacts)と呼ぶそうである。80年代初頭、パソコンの黎明期に情報工学を志した者にとって、論文や雑誌で見る「Alto」は、まさにオーパーツだった。70年代半ばに米ゼロックスが開発したAltoは、マルチウインドウ、GUI、マウス、LANを装備。当時のパソコンを超越した存在だった。Altoの製品版「Star」に初めて触れた時の興奮は忘れられない。
本書はAltoのみならず、レーザー・プリンタやイーサネット、Smalltalkを生んだ、ゼロックス・パロアルト研究所(PARC)に焦点を当てながら、「夢の研究所を持ちながら、大儲けできなかった企業」の歴史をひもとく。過去の成功、思考停止、個人の反目や派閥争い、営業や開発現場の無視と失望。企業経営の失敗が多くの証言から明らかにされる。IT技術者から最大級のリスペクト(尊敬)を受けていたPARCが、迷走し離散していく結末は切ない。